一四話 「……今日は手を繋ぐんじゃなくて……腕組んでもいい?」
「いつの間にか捻っちゃったみたい」
妙中さんはそう言って照れた笑いを浮かべた。
僕たちは日曜日一緒に図書館に行くために駅前で待ち合わせをしていた。
県立の大きな図書館は彼女の地元にあるため、僕が電車で駅に降り立ち、妙中さんが迎えに来てくれる約束だったが、現れた彼女の左手首には包帯が巻かれていたのだ。前日は僕に家庭の用事があったため会っていない。昨日の間に、怪我をしたらしい。
「大丈夫ですか」
「利き手じゃないしそんなに問題は無いかな。曲げたり、物を持ったりしなきゃ痛くないよ。でも……これじゃいつもみたいに手、繋げないね」
「そうですね」
鞄は肩から掛けるタイプのものなので、手で持たなくても済みそうだけれど――妙中さんは何か言いたげに僕の顔を見ている。何か期待されているのだろうか。
「お体に障るのでしたら今日は帰りますか」
「違ぁう!」
違った。
「ロクちゃん……、あのさ、左手痛いし……今日は手を繋ぐんじゃなくて……腕組んでもいい?」
「腕を?」
「そう」
僕は左右の腕を胸の前で組んだ。
「違う!」
違った。
「こう」
妙中さんは僕の右腕と体の間にそっと彼女の左手を通して添えた。そして預けるように少し体をくっつけた。歩きにくくないだろうか。
いやしかし、なるほど。妙中さんは今、怪我をしている。僕に体重を一部預けている。
つまり、歩行補助をして欲しいということだな。
「分かりました」
「分かればよろしい。じゃ、行こう」
県立図書館には閲覧室の他に学生用の自習室が設けられていて持ち込みでの自習が可能だが、早めにいかないとすぐに満席になってしまう。僕たちは二人で腕を組んで歩いて向かったが、やはり少し歩きにくさを感じた。僕が支える必要性を強く感じた。妙中さんには早急に元気で健康になって欲しいものだ。




