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チートを貰ったが、異世界では……。  作者: 月詠 秋水
第1章 旅立ち、そして襲い来る困難
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第7話 盗賊への第1歩

遂に旅立ってしまった英雄3人、それを見送り1人中庭で寝転ぶ雪咲。


目を閉じると、昨晩の皓との出来事が鮮明に脳裏に浮かぶ。


そして気配を感じ見てみると、国王ツァイの娘……ユリアナがそこに立っていた。


ツァイが呼んでいると、雪咲を探しに来てくれていたらしい。


そして、王の間に連れて行かれるのであった。


そこで待ち受けていたのは、今後どうするのかというツァイの質問だった。


果たして、雪咲はどうするのか……!

「俺は……この街を出ます」


 


はっきりと告げられた言葉に、ツァイは目を剥く。それも仕方のないことなのだろう、ついこの前まで英雄達と共にするのが嫌だと言っていた癖して……と、誰もが内心ではそう思っていることだろう。隣に立っていたユリアナですら、驚きを隠せない様子だった。


 


「……では、街を出て何を……?」


 


「それは……」


 


ずっと考えていた、生きていくために……楽しく生きていくために、何をしたいか。この世界に来てから、黙々と考えていた考え……。


 


それは……


 


「盗賊……理想的には程遠いですが、俺は盗賊になりたいです」


 


盗賊と聞いた瞬間、兵士達が雪咲の周りを取り囲むように立ちはだかる。しかしツァイは、兵士達を止めた。


 


「盗賊とな……?」


 


「はい……と言っても、人から何かを巻き上げるのが目的ではありませんけど」


 


「ふむ……聞こう」


 


雪咲が盗賊になろうと思った理由は2つ、1つ目は金銭面的に稼ぐのが容易そうだからだ。普通なら冒険者ギルドに登録し、正式な依頼を受けて達成したらお金をもらうというシステムだ。しかし盗賊ならばルールに縛られずに魔物を倒し、倒した魔物は商人にでも売れば高くつくと調べてある。


 


次に、自由だ。傭兵や冒険者なんかは、色んなしがらみに縛られるのが多いと前に本で読んだことがある。雪咲はこっちの世界に来てまで、そんなしがらみには縛られたくはなかったからだ。


 


「だが、寝床はどうする?」


 


それを聞いてきたのは、ずっとツァイの隣に控えていたグレンだ。


 


「商人に物を売って、貰った金で宿を取ればいい」


 


さらっと言葉を返すと、グレンは言葉に詰まったかのように黙り込む。だが周りの兵士達やユリアナ、ツァイの表情は明らかに納得行かないという顔である。


 


「……国王、貴方の考えは分かっているつもりです。ですが先程説明した理由の中で、自由……と言うものがあります。それはただ単にしがらみに縛られたくない……というだけではありませんよ」


 


「む……?」


 


苦し紛れの言い訳にしか聞こえないと思うが、それでも一応言っておかなければならない事だ。


 


「盗賊は何処にも属さない、故に情報収集が少しは容易かと思うのです。自由ならば何処にでも行ける、即ち英雄達の動向も探ることが出来ましょう。勿論、彼等が窮地に陥っていたならば即座に助けます」


 


「……」


 


雪咲は面を上げ、ツァイと視線を合わせる。決して視線を逸らさず、自分が本気であることを伝えるために。こうして睨み合っている間、暫くの沈黙が訪れたという。


 


やがてツァイは折れ、雪咲が盗賊になることを承諾してくれた……条件付きで。


 


「条件を出そう……それは、決して間違っても人族を襲うなという事だ。もしそうなった場合、俺の持てる権力を全て使ってでも……」


 


「っ……承諾しました」


 


まるで押しつぶされそうな程の覇気に、雪咲は冷や汗をかきつつも息を呑んだ。


 


 


 


「さてと……」


 


スキルの一つである”異次元袋”(アイテム欄)にツァイから頂いた支度金を入れ、少し名残惜しくも城を後にする。


 


これから、俺の……自由な盗賊への道が……!


 


そう思うと、とてもうれしく思えてくる。期待に胸を弾ませ浮かれながら町中を歩いていると、妙に周りの人たちからの視線が刺さる。


 


「ん……?」


 


その視線は、自分の体に来ていると分かった雪咲。自分で見てみると、元の世界から来てきた制服のままだった。


 


「あ……」


 


この世界では珍しい服装をしているため、どうしても周りから浮いてしまうことは否めない。少し恥ずかしく思えた雪咲は、急いで洋服屋に駆け込んだ。


 


その洋服屋は、外見は普通の民家に見える。しかし一度中に入ると、ただの服屋とは思えないほどの品揃えの良さ。アルザース帝国の服だけではなく、他の町や村の服まで揃っていた。


 


「すげぇ……」


 


目を輝かせながら店内を見て回ると、店員らしき女性が声をかけてきた。


 


「いらっしゃい、どんな服をお求めかな?」


 


「んー……」


 


様々なデザインの服……僧侶が着ていそうな修道服や、グレンが着ていたような戦士服。長い時間悩んでいたが……


 


「すいません、これください」


 


そう言って指差したのは、全身を覆い隠すことの出来る魔法のローブみたいな物だ。ステータスウィンドゥで効果を見てみると


 


スキル補正 


 


隠密+3 


 


偵察+2 


 


暗殺+2 


 


ステータス補正


 


魔法力アップ+30 


 


魔法防御+21


 


という効果がついていた。正直この世界では強いのか分からなかったが、姿を隠せればなんでも良いやと思っていた。そしてインナーやその他諸々買い揃えていたら、あっという間にツァイから貰った支度金が半分になってしまった。


 


「さてと……」


 


身支度も整った所で、遂に町の外に出た。来た時とは違い、今度はかなり遠くの方に小さく村が見える。


 


「……」


 


ちょっと試してみるか……。


 


そう思い足に力を込め、村に向かい駆け出そうとした瞬間……かなり遠くにあったはずの村の入口が、一瞬ですぐそこまで来ていた。そう思えるほどに、瞬間的な速度で走った事になる。


 


「ほぇ~……」


 


ちらっと振り返り自分が走っただろう道のりを見てみると、まるでジェット機が低空飛行した時のように猛烈な風が遅れて吹き付けてくる。


 


嵐のような風も止み、村に入ろうとした瞬間……女性の悲鳴がすぐ近くから聞こえてきた。


 


「……!」


 


何事かとその悲鳴の主の所まで小走りで駆けつけてみると、そこには……盗賊団がその村を襲っていたところだったようだ。その状況を察するが、特に隠れたりする素振りを見せずに平然と素通りしようと歩きだす。すると、案の定体格の良い男に呼び止められる。


 


「おい、そこのお前!!」


 


その声に少し驚き男の方に視線を向けると、大きな斧を振りかざしながらこちらに向かってきた。


 


「……」


 


この後の自体が予想できた雪咲は、ただじっとその場で構えていた。


 


「おぅ?やる気か……?」


 


男はニタァを笑みを浮かべながら、勢い良く斧を振り下ろす。だがその刃は、雪咲に一切届くことは無かった。何故ならば、届く前に粉微塵に破壊されたのだから。


 


「……は?」


 


先程の威勢の良さとは思えぬほどの間抜けな声を上げた瞬間、雪咲は一瞬の隙を見逃しはしなかった。腕をぐいっと引っ張り態勢を崩させ、すかさず腹部に膝蹴りを食らわせた。力加減をしたつもりだったのだが、男は血反吐を吐きながら倒れる。その様子を見ていた周りの盗賊団員達は、寄ってたかって雪咲に攻撃を仕掛ける。だが相手になるはずもなく、あっという間に片付いてしまった。


 


「この程度か……」


 


ため息を突きながら、最初に倒した男の近くに歩み寄る。すると、近くに”何か”の気配を感じる。


 


「……!」


 


あたりを見渡してみると、盗賊団が盗んだのであろう馬車の中から足の生えた袋が飛び出してきて……着地した瞬間転げた。


 


「……」


 


暫く観察していると、最初はジタバタしていた足が藻掻くのを止める。どうやら完全に諦めてしまったみたいで、ほぼ投げ出している状態と言ってもいいほどだ。そのままなのは可哀想だと思った雪咲は、袋の口を緩め手足の拘束と口を塞いでいた布を外した。


 


「げほっ……」


 


咳き込みながら力無く地面にへたり込む少女、姿から察するに種族は魔人の子供と言ったところか。魔族独特の角が頭から生えており、爪も長く瞳も血のように紅かった。髪は少し長めで色は黒、肌の色は至って健康的な肌色だった。


 


「大丈夫か……?」


 


優しく声をかけてあげるが、少女は警戒し雪咲から遠ざかる。


 


「やれやれ……」


 


小さくため息を付き、目を閉じ少女を縛り付けていた紐などを右手で握りしめた。その仕草に、少女は首を傾げる。


 


「……”物質変化:材質を布から編み込んだ布へ”」


 


呟くように唱えると、布切れが薄い光りに包まれる。そしてゆっくりと宙に浮き上がったかと思えば、白い光に包まれ見えなくなる。


 


少しすると、光は消えそこにはしっかりと編み込まれた布……布ロープが出来上がっていた。


 


「初めてにしては上出来か」


 


満足気に微笑み、気絶させた男達を全員縛り上げていく。そして一箇所に男達を転がして行くと、少女がトコトコと歩み寄ってくる。


 


「……ん?」


 


少女の方に視線を向けると、ペコリと頭を下げてきた。


 


「さっきは助けてくれたのに、あんな態度してごめんなさい。そして、助けてくれてありがとう!」


 


お礼を言い少女が顔を上げる、そして無邪気にニコッと微笑む。


 


「別に、通りかかっただけだよ」


 


雪咲もつられて、思わずクスッと笑ってしまう。


 


「私はユリナ、魔族なんだけど……奴隷商人に掴まっちゃって……」


 


ユリナがちらっと近くに転がっている男の死体を見る、雪咲も見てみると目の端に男の詳細が乗っていた。


 


ガイル


 


種族:人間


 


状態:死亡


 


職:奴隷商人


 


 


これ以上は、目を通してはいない。


 


「そうか……自己紹介が遅れたな、俺は風間 雪咲。通りすがりの盗賊さ」


 


自己紹介をすると、ユリナはきょとんとした顔で雪咲を見つめる。


 


「お姉ちゃん、女の人なのに”俺”なの……?」


 


そっち……?!


 


内心突っ込んでしまったが、ごほんっと咳払いをして優しく微笑みかける。


 


「俺は男だよ、何処からどう見てもね」


 


「でも……」


 


ユリナがそう言って手を雪咲の前に出すと、今の雪咲の姿がまるで鏡のように映り込む。その写り込んだ自分の姿に、一瞬思考停止する。


 


「……はぁ?!?!」


 


雪咲の間抜けな叫び声が、静かな村に木霊する。



次の話は、明日の夜に投稿いたします!


男達とユリア、どっちと絡もうと悩んだ結果……ユリアになりました(苦笑)


明日のお話では、どうなるやら……。


皆様、読んでいただき本当に感謝の念が絶えません!


ありがとうございます!!

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