特別話 あの日に至るまで……。
今回はPV数1万突破記念といたしまして、特別話をここに上げます。
主な内容としては、雪咲くんと皓くんがメインの話となっております。
これからもこの作品をよろしくお願い致します!!
これはまだ英雄召喚される前、雪咲達が中学に上がった後のお話。
「雪咲~、入るぜ」
そう言って皓は、雪咲の家に上がる。そこまで大きくもなく狭くもなく、ごく普通の平凡な家だった。ただ一つ違ったことは、俺らが中学に上る前には既に両親が居なくなっていた事だった。それでも頼れる親戚が近くに一人も居なくて、雪咲はバイトをしながら妹を食わせていた。
「おーう」
いつもどおりな返事で返してくれるが、前にあった時より痩せていたと言うよりは窶れていた。頬もげっそりしていて、最近ろくに何も食べていない事が伺える。皓はそんな雪咲を引っ張り、ファミレスに直行する。
「ちょっ、俺お金が……?!」
「安心しろ、出世したら返してもらうからよ!」
それから皓は、何かある度に家に来ては何かを食わせてくれた。恐らくは同情か何かだと思っていたのだが、ある日聞いてみたら
「同情じゃねえよ、ただ単に一緒に飯を食いたくなっただけさ」
それ以外何も言おうとはしなかったし、問おうともしてなかった。だがそんなある日、妹は雪咲のバイト先に押しかけてきた。その頃丁度暇な時間帯で、皓と雪咲は話しながら仕事をしていた。皓も同じ所でバイトをしていた、バイトと言っても郵送会社みたいなものだった。荷物をトラックに乗せる仕事で、もらえるお金は少なかったがそれでも必死にやってきていた。だが突如妹が登場し、雪咲にバイトを辞めるように説得していた。何でも遠い父方の親戚らしく、雪咲と妹の2人を預かると言っていたそうだ。だが雪咲はそれを不審に思ったのか、”俺は行かない”を繰り返していた。そのうち妹も諦め
「じゃあ勝手にすればいい、後で後悔しても遅いんだからね!!」
と捨て台詞を残して逃げるように去っていった。その日の夜、結局妹は帰ってこなかったそうだ。
それから数年の月日が立ち、雪咲や皓も立派な高校生になった。バイトでは給料が少し上がり、それなりに充実した日々を送っていた。どうやら雪咲は妹が居なくなったことにより開放されたのか、今まで住んでいた所を引き払ってバイト先のおじさん夫婦の所でお世話になると言っていた。ただその分残業もするし、お金のことならこの先一生働いてでも返すからと言う条件で頼んだらしい。だがおじさん夫婦はその条件を突っぱね、雪咲が幸せになることを条件に受け入れてくれたそうな。
高校生活も板についてきて一段落した頃、突然雪咲の妹が帰ってきたらしい。既に妹は中学に入っており、ここらでは見ない中学の制服を着た女性が居ると連絡を受ける。どうやら今まで住んでいた所が引き払われ済みだという事も知らずに入ったら、鍵がかかっていて呼び出したら知らない人が住んでいたそうだ。それで雪咲のバイト先に現れ、雪咲とすぐ近くに居た皓は
「帰ってきてたの?」
とそっけない反応しか出来なかった。唯一の肉親である雪咲からそんな反応が来たら薄情とか思うかも知れないが、家の手伝いをするわけでもなくただ養って貰っていただけの妹が勝手なことをして家を出て、雪咲は珍しく内心怒っていた。
「……あのさ、勝手なことをして家出した挙げ句”私の家”?いい加減にしろよ」
「うるさい!!馬鹿兄さえ居なければお父さんもお母さんも死なずに済んだのに……!!」
「っ……お前……!!」
雪咲が完全にカチンと来て手を出そうとしたが、それよりも早く皓の平手打ちが妹の頬を直撃していた。パァンと響き渡るような音を立て、妹は驚いてか知らないが尻もちをつく。そして叩かれた頬にそっと触れ、涙目で皓を睨みつける。だが皓は既に沸点通り過ぎていたのか、完全に激怒していた。
「てめぇ、雪咲が今までどんな思いで働いてんのか知ってるんか!!ただ養ってもらってそれが当たり前ですとか思ってる奴が、ゴタゴタ抜かしてんじゃねぇよ!!」
「なっ……人の家の事情に口を突っ込まないでよ、馬鹿!!」
完全に妹は何も考えられず、声も涙で震えていた。
「馬鹿で結構、後先考えず身勝手な行動で迷惑しかかけず……雪咲がお前を食わすためにどれだけ苦労したか知らねえだろ!」
「……」
言うのを忘れていたが、雪咲の両親は妹を産んでしばらくした後に交通事故で亡くなった。その時葬儀とかどうしたのか聞いたが、答えず曖昧にされてその話は終わりとなった。だが皓は言われずとも知っている……だが、それを掘り起こす気もしなかった。
「……馬鹿兄!お前なんか死んじゃえ!!」
最後にそう吐き捨てて、妹は逃げるようにその場を後にする。そして、もう二度と帰ってくることは無かった。その年のほぼ暮れ付近、異世界に飛ばされるハプニングが起こる。密かに雪咲は心の隅で、罵られたあの日のことを思い返していた。そして……謝ることが出来なかったと心の中で悔いている。それを一日たりとて、忘れたことはない。
……
「……っ」
優しい風に起こされ辺りを見てみると、そこはどうやらお城の一室の部屋のようだった。豪華な装飾に柔らかいベット、更には豪華な照明まで。あまりの普段との環境の差に、内心戸惑いを隠しきれなかった。
次話からはまた通常路線へと戻ります!




