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チートを貰ったが、異世界では……。  作者: 月詠 秋水
第3章 ハルカス編
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第23話 想いと思考の葛藤

少女の墓の前で泣き、結界を解くとそこにはアーシュとグランが居た。


どうやら宿屋からでてからかなり時間が経っていたらしく、心配して探し回っていたらしい。


雪咲はアーシュに大目玉を食らい、雪咲を引き連れて宿屋へと戻る。皓達も付いていき、チェックインを済ませた後寝ている盗賊団員を除き全員雪咲の部屋へと集合することに。


そこでプチ会議が行われ、そこで話し合いをすることに。


果たして、一体何を話し合っていたのか……!?

「じゃあ、俺等はこれで」


そう言って、皓と眞弓と冬望は各自の部屋へと戻っていった。雪咲はげんなりして、ベッドにダイブする。深いため息を吐いた後、暫く黙り込みながら天井を眺める。そしてぼんやりと、先程の話し合いの内容を思い出す。


「……」


話し合いで決められたのは、いくつかの事。


・一つ 無闇矢鱈に魔法を使用しない(これは主に雪咲の想像魔法が強力すぎるため)


・二つ 今後、あまり接触をしない(眞弓と冬望の要望により、雪咲へベタベタとくっつくこと)


そして、もう一つは……必ず皆生きて元の世界に戻ること。これは皓達との約束であり、破ったらもう口を利いてくれないとのこと。


……果たせない約束しちまったな……


心の中で自己嫌悪しつつ、どうしようか必死に考えていた。あの時皓には何も言葉を返すことは出来なかった、それにアーシュや皓は薄々と感じ取っていたのではないかと思った。もう既に、雪咲がもう本来だったらこの場に居ないこと……それを幾度も言おうとはしたのだが、この関係が崩れ去ってしまうことが何より怖くて結局は口には出来なかった。


こんな秘密を隠しながらリーダーなんて務まるのかなと思ったり、不信からの仲間割れなんか起きたりしないかなと冷や冷やしていた。そんなこんなでもやもやと一人考え込んでいると、それを見透かしたかのようにアーシュは雪咲を連れて外に出る。買い物に付き合って欲しいとのことだが、明らかに買い物をするような場所ではない所に連れ込まれた。


「ここは……」


人っ子一人居ない路地裏、決して誰も通ろうとは思わぬ狭い場所。そこに着くなり、アーシュは雪咲と向き合う形で立ち止まる。


「……?」


「……何か隠し事してるでしょ」


顔に出ていたのか、それとも心を読んだのか……ずっと考えていたことが露見したと思い、手に汗握る。だがアーシュが口にしたのは”何か”であって、まだ確証は無いらしい。打ち明けようかどうしようかと悩んでいると、一歩ずつ歩み寄ってくる。また打たれると思ったのか目をぎゅっと瞑る雪咲、だが次の瞬間汗ばみ震えていた手をそっと握りしめてきた。


「悩みがあるなら……聞いてあげる、他言はしないから……ね?」


まるで子供をあやすかのような話し方で、雪咲に声をかけてくる。少しそれに甘えたくなったりもするが、幾ら嘆いた所でこの真実だけは変えることは出来ない。それに雪咲は薄々と、考えていたことがある。


それは、元の世界に戻らなくてもいいんじゃないかという事。確かにもう他界してしまったがたった一人の家族が居る、まだ中学に入りたての妹だ。雪咲は幼くして、妹は生まれた直後に母親を亡くし、その数年後に父親も亡くなってしまう。それからは血の繋がりなんて一切ない祖父母の家に引き取られたが、妹との扱いの差を前にいつの間にか妹に対して壁を作っていた。高熱を出して倒れ心配させた時もあったが、そこから更に距離を置くようになっていた。


決して可愛がられていた妹が羨ましいわけではない、ただどう接すればよいのか分からなかっただけだった。雪咲が高校に上がると同時に、祖父母は亡くなった。現在は妹は父方の実家で、雪咲は寮がある高校に上がり一人暮らしをしていた。そこで皓と再開したのだが、それはまた別の話……。


そんな世界に戻っても何も無い、だからずっとこっちの世界で生きていたほうが……と事ある毎に考えるようにもなってしまっていた。


「……」


「……」


お互いの無言の時間が暫く過ぎ、やがてアーシュは優しく雪咲を抱きしめ頭を優しく撫でる。


「……!」


思わず離れようとしたが、何故か離れることが出来ない。それどころか藻掻けば藻掻くほど、どんどん抱きしめる力が強くなってきている気がする。


「アーシュ……?」


訪ねながら顔を覗き込んでみると、そこにはさっきまでの凛とした表情は陰っていた。今にも泣き出すんじゃないかと思うほどに瞳に涙を浮かべ、抱きしめる腕は震えていた。決して恐怖や笑いを堪えているという訳ではなく、泣き出しそうなのを必死に堪え隠そうとしている証拠だ。


訪ねてから暫く、アーシュは震えた声で言葉を発する。


「……私達……会ったばかりだけど……そんなに信用ない……?」


思いもよらぬ問に、一瞬だけ固まる。


「……信用はしてる、だけどそういう問題じゃないんだ。なんというか……俺自身の問題だし、どう足掻いても変わらない事だし……でも……心配させたね、ごめん……」


「仲間なんだから……心配するのは当たり前……!」


「当たり前……かぁ」


遂には泣き出してしまうアーシュ、それを見て雪咲は今まで考えていたことを話そうと思った。現実世界での暮らしから異世界に来るまでの話、そしてこっちの世界に来たばかりの時から今の今までの話を全て包み隠さずに。最初は信じられないような顔で聞いていたが、次第に”辛かったんだね”とまで言われてしまい思わず涙が溢れ出そうになる。それを必死に堪え、それでも尚淡々と話を続ける。


「俺は、既に向こうの世界では死んでいる扱いなんだ。だから今更向こうの世界に帰れるわけでもないし、未練だって一切ではないけど無い。だから、あんな約束をしてしまった軽率な自分に苛立ちを覚えているんだ……」


「でも、あれは皓達を安心させるためじゃ……?」


「安心というよりは、納得してもらう……かな、」


それを言うと、アーシュは完全に黙り込んでしまう。


「ごめんな……これを言うと関係が完全に壊れてしまう気がしたんだ、だから言いたくなかったし躊躇ったんだ……」


雪咲はアーシュと目を合わせることが出来なかった、何故ならこの話を聞いてどう思ったかなんて知りたくなかったからだ。軽蔑や畏怖や愚蔑の視線を向けていると思っていたから……だが、アーシュから発せられた言葉は意外なものだった。


「それを聞いて確信した……私はずっと雪咲に付いていく、何があっても……絶対に」


その言葉に驚きを隠せず、アーシュの方に視線を再度向ける。彼女は涙を必死に拭っていたが拭いきれず、涙をポロポロと溢れさせながらも優しく微笑もうとしてくれていた。そんなアーシュを見たせいだろうか、胸が締め付けられるように苦しくなる感覚に襲われる。苦しいほどに鼓動は早くなり、傍に居てくれるだけで何故かとても安心するような感覚。


「アーシュ……」


彼女の名を呼ぶ頃には、既に抱きしめていた。今までとは違う、甘えでも何でも無い。とても愛おしく愛らしく、仲間としても個人としてもずっと大切にしていきたいと思えるほどに。アーシュはこれ以上は何も喋らず、只ひたすら優しく雪咲の頭を撫でていた。



「……良かったな……大切にしてやれよ……」


いつからか物陰から二人を見守っていた皓、小さく呟くと物音を立てずにその場から去る。

今回は少しだけシリアスな話になってしまいましたが、次回からは路線変更を正常化し普通のルートへと戻って行きます。


皓質とも、この後分かれる予定ではあります。その時の話は、次話でやりたいなと思っています!

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