「白雪姫(リゼル)の心臓」のあらすじ(ノベル大賞 選外)
2014年コバルト・ノベル大賞応募 選外
とある森に迷い込んだ少年は、野生のヒグマに襲われていたところを、リゼルという美女に助けられる。
自分に関する一切の記憶を持たず、空っぽの鳥かごだけを携えていた少年。
リゼルは街に帰るよう促すが、そこへ運悪く、森を所有する悪魔ジストが現れる。
少年を警戒心するジスト。リゼルは機転をきかせ、数日後の収穫祭の手伝いをさせると嘘をつき、少年をルチルと名づける。
自尊心を森の中の城に蒐集する一方、その象徴である猫に対し、アレルギー反応が出てしまうジスト。
そのため、めったに森には戻らないと聞き、リゼルに「淋しいのでは」と問いかけるルチル。
「客人がくる」と答えるリゼルだったが、彼女が心待ちにしている客人とは、リゼルを毒リンゴで殺害しようとする老女であった。
幼いころに街を離れ、老女の来訪だけを心待ちにしながらひとり淋しく過ごすリゼル。
彼女の願いは、「母に殺されること」だった。
翌日、リゼルの使いで森のはずれに住む女性を訪ねたルチル。その相手は、前日、毒リンゴを持参した老女だった。
鏡の悪魔と契約し、リゼルを殺害するために森に入った老女は、じつは、リゼルの母だった。
どうして母が子の命を狙うのか、母を探すルチルには理解できない。リゼルは毒に耐性をもつ自分のせいで、母を含め多くの人が不幸になったと明かす。
一方ジストは、リゼルの想いを利用する形で、彼女の自尊心を蒐集するため、森に留めていると告げる。
鏡の悪魔が入手した猛毒で、一度は死にかけたリゼルだったが、母のほんとうの想いを知り、笑顔を見せる。
しかし鏡の悪魔によって魂を奪われる。
追跡したルチルは、自分がリゼルの「淋しさ」から生まれた悪魔だと思い出し、魂を奪取する。
母の手で魂を返されるリゼル。
収穫祭は、母子が揃い、賑やかに始まろうとしていた。