「夢騒がし」のあらすじ(ノベル大賞 選外)
2013年コバルト・ノベル大賞応募 選外
高校一年の佐上雪尋は、中学時代のある悪夢に悩まされていた。
秋津中の陸上部員だった雪尋は、中三の夏の全国大会で、長谷川のかわりにリレーのアンカーを走った。
しかしバトンパスに失敗して予選敗退という失態をおかしていた。
それ以後、陸上から距離を置いていたが、母親や、高校の陸上部員の鷺沼、元マネージャーの藤村は、雪尋を陸上に戻そうと関わりをもってくる。
ある日、いつもの悪夢の中にいた雪尋は、ハリという少年に声をかけられる。
ハリは連日の悪夢と走ることに嫌悪感を抱いている雪尋に対し、悪夢と〈走るための力〉をくれ、と誘いをかける。
走らないと心に決めながらも、陸上部の練習風景に心を揺さぶられたり、車からとっさに脚をかばったりと、自分の中の矛盾に悩む雪尋。
だが、悪夢の中に度々現れる黒い蝶は、走れなくなった長谷川の嫉妬心によるものだと聞かされ、走る力を手放す決心をする。
そんなとき、クラス対抗スポーツ大会のリレー選手に選ばれてしまう。
その日の悪夢の中で、雪尋は、走っていた目的と走らなくなった理由を明かす。離婚した父がいつも応援に来てくれたこと、その父が病気で亡くなったこと。
走る目的がわからなくなったと伝えると、ハリは、もう走らなくていい、と許してくれた。
ある日、陸上の記録会に呼ばれた雪尋は、鷺沼の目まぐるしい進歩を目にして心を震わせる。
そして、藤村からは、雪尋に再び走って欲しいという長谷川の想いを聞かされる。
スポーツ大会当日、運動が苦手なリレー仲間の三人が奮起。
それに応えるため走った雪尋は、鷺沼と競り合う中で、走り始めた理由を思い出す。
再び勝負の世界に戻ることを決意した雪尋に、ハリは自分の正体が父親のタカシであることを明かして黒い蝶とともに消える。
2013年コバルト・ノベル大賞応募 選外