「月と皮」のあらすじ(B-PRINCE大賞 選外)
2011年B-PRINCE文庫新人大賞応募 選外
十九歳の夏、月島 朔は、大学の夏期休暇を利用して故郷の野上に帰省する。
途中、野上のバス停で出会った少年は、六年前に他界した従兄弟の満と同じ顔をしていた。
驚きつつも他人だと感じた朔は、そのまま実家に帰る。すると、少年は朔の部屋に居座っていた。しかも、自らを満だと名乗る。
少年との諍いのなか、熱中症で倒れた朔は、満には六歳違いの弟、望がいたことを思い出す。目覚めた朔に対し、少年、望は悪ふざけが過ぎたことを詫びたうえで、好物のアイスを差し出す。
望は兄が分けてくれなかったものをもらいにきた、と云い、兄と朔の関係をほのめかす。
翌日、朔は望を捜して、満の骨が見つかった川を訪れる。望はそこで、卵を産みつける妖怪について話をする。
満の不可解な死について何かを知っている様子の望は、満になりたいと云って、朔との交わりを求めてくる。だが朔は、望の体に刻まれた傷跡に触れ、望が満になることはできないと諭す。
朔に拒まれた望は、部屋に閉じこもる。
翌日、朔のもとに家を出た望から電話がかかってくる。
満は、朔との永遠の時間を手に入れるため、人間の皮を収集する妖怪、天狐カイに自分の皮を譲ること条件に卵を受け入れ、それが孵化したため、死亡したのだという。
そして、朔に好かれたかった望は、カイと契約して兄の皮をかぶり、その顔で朔に接していたのだった。
契約の代償として、カイの卵を受け入れることになった望。その場には、人間ではなくなった兄の姿があった。
望を助けに入った朔は、満の存在に気づきつつも、望だけを救い出す。
数日後、朔と望は、再び会う約束をして別れる。