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少女と刑事さん  作者: 悪死姫
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逮捕と復讐心

この世界は間違っている。

お兄ちゃんは人を殺してなんかいない。

なのに、どうして警察に連れて行かれたの?

私が、アイツに復讐してやるんだから。

強い復讐心を持った少女と少女を気遣う刑事の物語。


ある日の朝、家に警察が押しかけて来た。


『連続女性殺害事件の犯人として逮捕する』


警察官がお兄ちゃんを捕まえに来たの?

だって、逮捕状お兄ちゃんの名前だし。

今日は休日で家族4人で過ごしていたのに。

お兄ちゃんには手錠がかけられた。

その瞬間、私は思い切って手前に居た警察官の袖を握って叫んだ。


「馬鹿野郎!お兄ちゃんを殺人鬼呼ばわりするなよ!馬鹿ぁ」


私の絞り出す声は震えている。

お兄ちゃんは私の顔を見て言った。


『俺は無罪だ』


泣きそうな瞳を見てられなくて警察官を睨んだ。

お母さんは号泣。

お父さんは唖然としている。

幸せな家庭は壊れてしまったの?


「いつまで人の袖を握っている。業務執行妨害にするぞ」


怖くて袖を離した瞬間、警察官は家を出た。


両親は警察署に向かうと言っていたから私もついて行く事に。

玄関のドアを開けると近所の人が集まっていた。


『うわっ。マジかよ』


近所の人の影口。

私の糸はプツンっと切れた。


「黙って。お兄ちゃんは無罪だ」


怒りに満ちた表情で言うと近所の人が家に入って行く。

そのまま車に乗って警察署までいった。

私は車を降りて両親が受付をするのを眺めている。

異様な空気。

両親は案内されて何処かへ行ってしまう。

涙が溢れてスカートを濡らす。


「お兄ちゃんっ…なんでっ…ぐすっ」


待合室のソファーに座り泣いている自分は情けないと感じる。

白い物が目の前に差し出された。

驚いて目線を上げるとあの人が。


「ティッシュ。そんなに兄貴が大事か?」


私の横に腰掛けて言う。

ティッシュを受け取り目を拭って聞く。


「お兄ちゃん…は殺して…ない…アリバイがあればいいんでしょ!?」


「さぁな。一応、見せてやるか」


警察手帳が目の前にある。

凄い。

リアルだ。


望月大地もちづきだいち?刑事さんなんだ…。嫌い」


「あぁ!?」


「貴方が嫌いな訳じゃない。警察自体が嫌い。復讐してやりたい」


「お前も危険じゃねぇかよ。って、名前なんだ?容疑者が立花だから苗字は分かるが」


この刑事さんなんで此処にいるの?

仕事中じゃないの?


「立花は新しい名前。海月って言うの。旧姓、大橋海月おおはしみづき


私には名前が二つある。

旧姓は大橋。

お母さんの再婚がきっかけで立花たちばなになった。


「立花海月か。漢字は?」


「海に月で海月」


「可愛い名前じゃん」


気づけば涙が溢れでている。

するとそこにお母さんが待合室に来た。


『帰るから』


お母さんは笑ってはない。


「私、残る。先に帰って」


お母さんは私を睨んで待合室から出た。


「なんで残るんだよ」


「質問」


私は質問したい事が沢山ある。


「あ?なんだよ海月さん」


刑事なんだよね?

口悪すぎ。


「刑事なんだよね?望月大地さんは。なんで、口悪いの?刑事って口が悪くていいの?あと、一つ。仕事はどうしたの?サボり?」


質問攻めかよ。って顔してる。

イライラするんだもん。


「事件がないのは平和だな。俺はいつもこんな感じだが不快にさせたらわりぃな」


「事件がないと平和…。待合室は2階。どうして分かったの?」


「質問攻め好きだなぁ。2階に上がって行く親子を偶然見たんだよ。そしたら、さっきの海月さんが居たので両親が待合室を出るまで様子を見てた。話したかったし」


「少し中歩きたいな。いい?」


「チッ…分かったよ」


待合室を出て廊下を歩く。

刑事ドラマで見る雰囲気と同じ。

2階って大した事ないのかな。


『ん?海月ちゃん!』


「春兄ちゃんっ!?」


『真守君、逮捕されたんだって?大変だったな。取り調べ中さぁ無言で殴られてた』


「殴るなんて最低でしょ…。なんでっ…お兄ちゃんは無罪なの。犯人は他にっ」


「春輝先輩、海月さん知っているんですか?」


『従兄だからな。あのさ、海月ちゃんを連れまわしてどうするのさ。真守が捕まってんだぞ。おまけに、此奴は金持ちだから報道陣が集まれば…』


前髪をかきあげて悩んでいる春兄ちゃん。

いい年してるのに。

でも、家族思い出し週末は家に来てくれるほどの楽しい従兄でもある。

誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントも毎年くれるから大好き。

初めて会った時は、笑顔で接してくれたから嬉しかった。


「春兄ちゃんいいよ…。お兄ちゃんは絶対に無実だから。私は許さないけど…警察なんて大嫌いだけど春兄ちゃんは大好きだよ。家族だもん。お願いがあるの…お兄ちゃんを殴った警察官を教えて?私、殴りたいから…。家族が傷つけられるのは一番嫌いだから」


『俺から話を通しておくな。海月ちゃん。望月、家まで送り届けてな』


「了解です」


それから私は望月さんの車に乗って家に帰された。

車に乗って1時間ぐらいで家に帰れる。

道のりはあるけどしょうがないや。


「報道陣が多いな。俺もついて行く」


「うん」


家の前には沢山の報道陣がいた。

家を囲むようにしてカメラを向けている。

撮影中だと思うな。

車から降りて家の前に行くと、報道陣が私を見て声をかけ始めてしまう。

すると、カメラが集まる。


『この家の人ですね。どう思いますか?』


『事件の真相を話してください』


『一言お願いします』


うるさい。

なんで、追い詰めるのそこまで。

望月さんは警察手帳を報道陣に少しだけ見せて声を上げた。


「人権侵害で逮捕する事もできる。逮捕されたくないなら報道を中止しろ」


私の顔を隠しながら叫んでくれている姿に見惚れてしまった。

警察ってこんな事もしてくれるんだなぁ。

報道陣がカメラを片付けて帰って行く姿が目に入る。

お母さんは怒るかな。


「ただいま」


家の中に入っても返事がしない。

いつもならお母さんの明るい声がするのに。

なんで静かなの?

お父さんの靴がない。

待って!?

まさか…。

リビングに行くとソファーに座りボーとしているお母さんの姿。


「お母さん?」


『お前も嫌いよ!産まなきゃよかった!』


お母さんはやつれて行くばかり。

お父さんが家出をして1週間。

それでも私は警察署に通い詰めた。

お兄ちゃんに会いたいと言うと受付の人は笑顔で誰かと連絡を取ってくれる。

お母さんは気力を無くしたのか家の家事を一切しなくなり、ソファーに座り眠る時間が増えて行くばかり。

楽しい家庭はお兄ちゃんの逮捕と同時に消え失せてしまった。

まるで、そんな家庭がないかのように。


『此処でお待ちください。刑事の方が来ますので』


「あ、はい」


受け付けの傍で待って居ると春兄ちゃんが来た。

眠たそうな顔をしながら。

私は唇を噛み締める。


『親父さん帰って来た?あと、お母さんは大丈夫なのかい?』


「お父さんは1週間も家に戻らない…お母さんは何もしなくなったの…人形みたいに。私、学校で虐められてるの…消えたいけど我慢しないと…でも、苦しいの。嫌なのっ!もう…人生を狂わせた警察が…」


私の悲痛な叫びを聞きながら春兄ちゃんは背中をさすってくれた。

春兄ちゃんは仕事終わりに家に来てくれるようになったけど、冷めきった家庭を見て何を考えているの?

涙が溢れて止まらない。


『真守君…いや、お兄ちゃんに話な』


面会室。

生々しい。

お兄ちゃんは私を見ると叫んだ。


『おい、海月!俺は無罪だよな!』


「当たり前じゃん…なんでっ…」


『最近…親父が家にいないんだろ?母さんはどうなんだよ』


「お母さんは何もしてないよ…お兄ちゃんは無罪…私が犯人を探すんだから。今日は帰るね」


警察署から出て家に向かってた途中だった。

背後から近づいた何者かに私は誘拐をされたらしい。

頭を強く何かで殴られたんだろうな。


「うっ…なんで…私…が…」


あまりの痛さに意識を失いその後の事は覚えてはいなかった。

ワタシが誘拐されるって馬鹿みたい。



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