海をこえる
多少ペースは遅いですが初心者故にお許しください。また、誤植等ありました コメントお願いします。文章等も多少おかしな部分もあるとは思うので、そのあたりはご理解頂きたいです。
爽やかな朝日、そして降り積もる雪。目の前には二人の男女が立つ。逆光で表情は見えないが、それは見知った友人であった。
「…あ…どこへ…」
何も言わずに、歩き去っていく。それを追いかけようとするが、足も手も動かない。
「…待って…」
そして、彼らは視界から消え去っていった。
…気付くと、視界には自宅の屋根が見えた。もちろん、夏であるので地面には雪など微塵もなく、あるのは緑色の草だけ。ケラフティ共和国、オカーの町は今日も平和だ。
「…朝…ふぅ、夢か…」
そう、今日は出発の日なのだ。今日から旅が始まる。そう聞くと聞こえの良いものではあるか、有るかどうかわからない物のためにわざわざウラッツィア大陸を横断してジェルッツラントまで行くのだ。
「…」
リビングに行くと、保存庫から取り出したフェンティス風ドーナツを何個か食べ、黒パンをすべて取り出した。パンのみを鞄に入れ、ドーナツは机の上に置きっぱなしだ。大した量ではないので、そんなに大きな荷物にはなっていない。
「マリーナ、いるか?」
すると、玄関の方から声が聞こえた。
「…」
マリーナが扉の方を少し意識すると、扉の鍵が開いた。その人物は特に気にした様子もなく入ってきて、手頃な椅子に座った。
「…早いね…」
「お前も随分と準備が良いな。それ、一個良いか?」
そう言うと、先ほどのドーナツを一つ食べた。
「うまいなこれ、どこに売ってた?」
「それは私が作ったのよ!」
いつの間にかクラリスが現れた。
「そっか…で、どうする?三人そろったし。」
軽く流されてクラリスは不満げな表情を見せるが、そんな事はお構いなくと言った様子でマリーナは話を始めた。
「…学園で話をつけてくる。」
そう、これから三人は旅にでようとしているのだ。しばらく学園に行かなくなる。
…そして、学校につくなり先生はこう言った。
「だめに決まってますよ、あなた達の今後に関わるんですから。特にフォートレルさんは少し成績が良くありませんし。」
少しどころではないのだが、やはり先生である。柔らかな言い方だ。更に、マリーナ達の担任であるヨーリイ・クティノフは続けた。
「クラスの皆さんも心配しますし、何より私達教職員が心配します。」
なんとも真っ当な言い方だが、そこへ横槍を刺す人物がいた。イェシカ・メランデルである。
「でもー、クティノフ先生ー?生徒の意見を尊重するのもー、我々教職員の務めでもありますよねー。だからー、送り出してあげても良いんじゃ無いですかー?」
「で、ですが!それではこの子達の…」
「そんな事、分かってますってー。先生もー、寂しいんですよねー。でも、生徒にも意思や考えもありますよー。今はそれでも良いんじゃないかしらー?」
これには、クティノフでさえもたじろぐ。
「っ!…それは…」
「…よろしいですか…?」
「しかし、そんな無謀な…」
と、クティノフが言いかけたがマリーナは強く、
「…無謀ではありません!…」
いつもの静かな感じからは想像できないような調子でこう言い切った。
「そうねー…クティノフ先生ー?ここは一つ、この子達を送り出してあげましょー?」
「で、ですが…!もし許可を出すとしてどうすれば?」
クティノフの言うとおり、理由が無いのだ。表立った理由…ではあるのだが。すると、メランデルはこう言い始めた。
「私の卒業した学園はねー、外部からの留学生や研修生を積極的に受け入れていたのー。」
「確か、シビーリヤ共和国のトゥクヤク大学院でしたよね。しかし、それが何か関係が…?」
「そこの学院長は私の父親の大親友でねー、私もその人の計らいもあってこうして先生をやってる訳なのよー。」
「で、どうしようと言うのですか?」
「よーするにー、そこへの編入を偽装する…て事よー。」
「偽装!?そんな…可能なのですか?」
クティノフが驚きの声をあげるが、メランデルはさらに続ける。
「ま、理由は適当に作れば大丈夫よー。」
「そ、そんな事!偽装とか適当な理由とか教師の言うことでは…」
だが毅然とした態度…とはいえこんな見た目や話し方ではそうは見えないが…で、メランデルは続けた。
「教師はねー?生徒に授業をするのは当然だけどー、生徒を助けたり、やりたいことをやらせてあげるのも仕事じゃないかと思うのよー。当然、悪さは許さないけどねー。」
「だから…あなたは生徒から好かれ、教師から疎まれる。確かに、本来教師は生徒との間に壁があって当然、生徒が壁を越えようとするとたたき落としてきた。」
「そうねー、確かに私のやり方は一般的な見方では"異常"…普通じゃないと言うことになるわねー。でもねー…」
少しの間。これに意味があるかどうかは分からないが、確かに場の雰囲気が締まったのは言うまでもないだろう。
「普通じゃない…て事はー、"発展すること"と一緒なのよー。」
「どうゆう事ですか…?」
「…」
「???」
「…?」
クティノフも、疑問が残るようだ。もちろん、マリーナ、クラリス、サムもよく分かっていない。クラリスの場合は違うようだが…。
「つまりっ!新しい物は普通を越えていかないと無いとゆうことなのーっ!」
「た、確かに…魔法系技術の発展も、今まで無かった事をする事で発展している物が多数ありますし…」
「とにかくー、普通でいたら普通のまま終わるのよー。それなら別の世界を開拓しなきゃー。」
「それで、我々は許可を得られますか?」
それた話をサムは無理矢理戻した。そうでなくては終わりそうな雰囲気が無かったのである。
「あー、そうねー。」
しばらく黙り込んで考え込んだ後、こう言った。
「行っちゃえばー?あとは私がなんとかしてあげるからー。」
「先生…本当に考えましたか?」
サムは不審感いっぱいの眼差しを送る。
「…ありがとうございます先生。」
「おいマリーナ、勝手に話を…」
「気をつけてねー。後これ、フォートレルさんに渡すわー。肌身はなさず持ち歩いてー。」
そう言うと、自身の着けていたブレスレットのようなものを手渡した。二×四エスメル程の大きさの金属製の模様の入ったプレートに、チェーンが通ったものだ
「先生、ありがとうございます!でも…」
「いいのよー、何かあったらそれが守ってくれるわー。」
「ちょっと待ってください、勝手に話を…」
クティノフはそこでメランデルに口を塞がれた。どうやら、かなり強力な魔術らしく、クティノフでも解除できないらしい。
「”あれ”が関わってるのよねー?チャンスは一度よ、行きなさい。」
いつになく凛々しく、そうメランデルは口にした。
「…あなたは…」
という質問はサムとクラリスによって遮られた。
「マリーナ、行こう。俺たちだって覚悟は決めてるんだ。」
「そうだよ、先生を信じよう!」
両手を二人に握られ、一呼吸。
「…わかった。先生、ありがとうございます。」
そう言うと、三人は学園を後にした。そしてマリーナ宅にて、出発の準備をしていた。
「よし、こんなもんか。しかし…」
「…知っていた…」
そう、やはりメランデルの言葉が気になっているようだ。
「思いこみかもしれないが…気になるよな。」
「まーいいじゃん、早くいこうよ。はっ!追っ手だ!なんてことになるかもよ!」
「なるか!ま、これ以上やることはないしな。」
「でも、サム 大丈夫なの?」
「何がだ?」
「親の許可だよ。」
「…気になるな…」
しばし沈黙が流れていく。
「大丈夫だ。必ず帰ってこいって言われたけどな。そうゆうお前こそどうなんだよ。」
「私は、こっちには親、いないから大丈夫よ。」
そういえばという表情で、サムは納得した様子だった。
「…行こう。」
「そうだな。船で行くんだっけ?」
「…ニコル=エスク行き。」
ケラフティ共和国は島国で、隣国に行くときも船に乗らないと移動が出来ない。とはいえ大陸のすぐとなりの為、大した移動ではない。
「船…」
「どうしたクラリス、船は苦手か?」
力無く頷き、荷物を背負った。しかし、行かなければならないのである。
「…行こう。これ、切符代。」
そう言うと現金を手渡し、荷物を背負い家を後にした。目指すのは、オカーの港だ。
「これって…」
「あぁ…マストがないな。」
一隻、不思議な船が港に停泊していた。その船には、船についているはずのマストや煙突が無く、側面には巨大な水車のようなものが取り付けられた異形の船だった。
「驚いたかね?」
「うわっ、誰?」
横から話しかけてきたのは、どこにでも居そうな白髪の老人だった。当然、三人の中に知っている者はいない。
「新型の魔法機関を搭載した船だよ。」
「…何者?」
「あ、あぁ、すまんすまん。わしはメンデレーエフ、ごらん通り魔術師じゃよ。」
「…」
だが、明らかに怪しい人物であることには変わりなく、ごらんも何もないのである。さすがにそれも分からないような人物でもないようで、こんなことを言い出した。
「わしの船だ、旧式の軍艦に載せたんだよ。」
「でも何でこんな所にそんな船が?」
確かに、このオカーの町は人は住んでいるが大した物もない、普通の町だ。普通に考えればここに停泊する理由が見当たらない。
「うーむ…色々と事情がなぁ…」
「事情?」
「まあ、それより船、使うんだろう?君達、早く行かないと乗り遅れるぞ。」
「まぁ…ニコル=エスクまでですけど。」
そう言うとメンデレーエフは嬉しそうに言った。
「それなら、乗ってみるかね?わしの船に。」
「…信頼できる?」
会ったばかりの人間である人物は、そう簡単には信用できない。当然の質問だ。
「ふむ…そう言われるとそうだなぁ…だが、わし一人だぞ?船員は。」
「何だって?まさか停泊している理由はそれなのか?」
すると非常に困ったような表情を見せた。一同も少し話を聞きたそうな雰囲気を見せると、メンデレーエフは話し始めた。
「実はのう、手伝いを探していたんだがなぁ…一人で操作できることにはできるのだ。しかし わしも年でのう…得体の知れないもんの手伝いなど誰も現れんのだ…」
「一人できたのか?そんな事できるのかよ、あんな巨大な船で。」
「…できる、理論上。」
それを聞いたサム逹は唖然とするばかりだ。
「おいマリーナ、理論と現実は違うって事位お前ならわかるだろ?こんな怪しい奴の言うことなんて放っといて、早く行こうぜ。」
「怪しい奴とな?まぁわしはお尋ね者だから間違いではないがな。」
「何だって?それじゃあますます乗るのはお断りさせてもらうよ。」
「いいから、サム。早く行こう。」
すると、メンデレーエフが怪しい笑い声を発し始めた。彼の体の周りには、熱気のようなものが立ちこめている。
「ふん…若造が。ここまで聞かれて逃げられると思うなよ。こう見えてもわしはクラス五の魔術師だ、たかが学生程度が勝てる相手ではないよ。大人しく来てもらおうか。」
「ちくしょう、いきなりこんな奴と出くわすなんてな…」
「サ、サム?どうしよう。」
「そんな事言ったって仕方ないだろ…このプレッシャーは素人でも…」
戦慄と恐怖でサムとクラリスの身体は固まって動けないようで、その場に立ち尽くしている。マリーナは特別、何かを感じている様子は見受けられない。
「…」
普段通り無表情のその顔には戦慄とか恐怖の色は微塵も感じられなく、何事もないようにそこに立っている…様には見えるがやはり表情のせいでサム達と同じように立ち尽くしているだけかもしれないのだが。
「ふふふ…せいぜい良くて四程度の学生では怖がるか死にに来るかしか出来ないだろう…?大人しくついてこっ…!?」
メンデレーエフが全力で後ろに飛び退いた瞬間、立っていた場所に巨大な氷の柱が出現した。丁度、人間と同じくらいの高さだ。
「どうやら…死にたい奴が一人、居るみたいだな。マリーナとかいったな、惜しかったがまだ足りないな。わしを倒すには。」
「…死ぬつもりはない。」
そう言うと手をメンデレーエフの方に向け、言った。
「…私もクラス五だ。」
「冗談もいい加減にしろ、ガキが!そんな奴大陸でも見たことないな。死ぬ前に良いものを見られること、喜べよ。」
「マリーナっ!」
その瞬間、メンデレーエフの目の前から土を溶かしながら真っ白な火柱が出現しマリーナを襲った。爆発が起こり、煙のようなもので辺りが真っ白に包まれた。そして、その中からうめき声が聞こえる。一瞬の出来事に、サムとクラリス、周りで何事かといつの間にか集まった港の人間も呆然としていた。
「くっ…わしがこんなガキに…」
「マリーナ、大丈夫か!」
煙の様なものが晴れると、そこには氷で拘束されたメンデレーエフとびっしょりと濡れたマリーナがいた。
「大丈夫か?マリーナ。でも何でそんなびしょびしょに濡れてんだ?」
「水蒸気だ。」
そう言ったのは凍らされているメンデレーエフだった。もう敵意はないようで、ぐったりとしている様子である。
「不本意だが聞くしかないっぽいな。」
「ふん、あいつは水蒸気をうまく使ったんだよ。あろうことかわしの〔溶解する爆焔〕を防いでな。あれを防ぐなんて、驚いたよ。」
「つまりどうゆう事なの?」
少し笑うとメンデレーエフは続けた。
「氷で防いで、発生した水蒸気を煙幕代わりに使ったんだよ。そして、その水蒸気でわしを拘束したってわけだよ。敵ながら見事だ、どうとでもしろ。」
そう言うときっぱりと黙った。
「…では船を使わせてもらえないか。」
「ほう…ニコル=エスクまでだったか。この船なら半日だ、嘘だと思うなら乗ってみればいい。わしもとっととここを離れたいしな。」
「でもさぁ…」
サムは少し疑問があるようで、メンデレーエフに問いかけ始めた。
「何でそんなに強引に俺達を引き入れようとしたんだ?やっぱり実験とか?」
「…人手が欲しかったのは事実だ。あの船、元々はロシエト海軍の軍艦でな、わしが盗み出したものだ。後は船の中で話す、足の拘束を解いてくれ。」
「…」
すると、メンデレーエフの足元まで覆っていた氷の一部が崩れ、体だけが氷で覆われる格好となった。すると、船の方に歩き出した。三人もそれについて行く。
「マリーナ、少しでも怪しいことしようとしたら頼むぞ。俺達は何もできないからな。」
「…分かった。」
そう言っているうちに、船の司令部らしき場所に到着した。そこは、まるで研究所のような様相で、怪しい瓶や分厚い書物で散らかっていた。
「すごいねー、難しそうな本ばっかり。」
「当たり前だ。わしは元々魔法兵器の技術者だからな。」
「ちゃんとニコル=エスクまで行くのか?」
懐疑的な目でメンデレーエフを見るが、不適な笑みを浮かべながら話し始めた。
「心配するなよ、他にどこに行くところがある?嫌なら他の船で金払って一日かけてうるさい客共と一緒に泥棒の心配でもしながら行くことだな。ま、お前たちに従うのは不本意だがこうなっては仕方あるまい。」
「ふん、嫌な奴だな、あんた。」
「わしはメンデレーエフだ。偉大な博士だ、公にはなってないがロシエトの戦艦の魔法防御シールドを開発したのは紛れもないこのわしだ。誰にも言うなよ?」
「知るか!嫌味な奴には変わりないだろ。」
「動かすぞ、座ってろ。」
すると、メンデレーエフが立っている前にある複雑な模様や文字が描かれた板から光が溢れてきた。どうやら制御装置のようなものらしい、少しずつ景色が変わり始めていた。
「うわ…ほんとに動いてる…」
「下に人でも居るんじゃないのか?」
「…いないと思う。」
「そうか。とにかく、変なことはしないでくれよ。」
少しずつ速度が上昇するにつれて、小刻みな振動が大きくなってゆく。経験したことのない感覚に、三人は驚いている。
「大丈夫なの?すっごいガタガタ言ってるけど。」
「仕方あるまい、今の技術じゃこの程度だ。これでもいい方だ、客船に使われてない理由、分かるだろ。しかもかなり巨大でな、この船の三分の二位が機関室なんだよ。」
「でも速いな、ちょっと見直したよ。でもさ、あれマリーナじゃなかったら死んでたよね?」
「まあな。だが死体は残らないぞ、蒸発して消えてなくなるからな。」
笑いながらそんな事を言うメンデレーエフに、気味悪がっているサムだが、その表情は初めよりも柔らかいものになっていた。クラリスは船酔いしているのか、横になっている。マリーナは黙ってそこに立っているだけだ。
「ところで、おまえ等はニコル=エスクでなにをするつもりなんだ?遊ぶのか?」
「どうせあんたも訳ありなんだろ?それなら言うけど、ジェルッツラントの方まで行くつもりなんだ。目的は言わないけどな。」
「ほう、目的があるとは良いことだ。わしなんぞはこんな船を造っておいて何をしたらいいのかさっぱりだ。まぁ、無いというわけでは無いがな、言えない。おまえ達が危険にさらされる、と言ってもこれに乗っている時点でアウトだがな。」
やはり笑いながらそんな事を言っている。そんな話を続けているうちに、サムの方が恐らく疲れが溜まっているのか椅子に座って眠り始めていた。すっかり周りは真っ暗で、明かりと言えばランプの明かりと制御装置の発する光のみだ。
「お前…えーと、マリーナだったか、なぜわしを信用…と言うよりは利用と言った方が良いのか…したんだ?普通は逃げるだろ、あの二人も居るしな。」
「…本物だと感じたから。あなたの話が。」
「ふん、普通は嘘だと言うがな。大抵はそうだ、やりもせずわしの理論をそんな事出来るかとな。研究所でも似たようなもんだよ、大した奴も居ないしな。だからこうして自分で勝手にやっている。」
今までの不気味な笑いとは違う、自然な笑みをメンデレーエフが見せていた。優しそうな人間の笑いだ。
「不思議な奴だよ。普通はあの攻撃も防げるはずが無い…いや、普通の話はもうやめよう。普通じゃなにも生まれない、わしら技術者は挑戦する人間だからな。」
「…同じ…先生と。」
「ふっ…似たようなな奴はいくらでもいる。さて、そろそろ着くぞ。準備しろ。」
そう言うと、マリーナがサムとクラリスを起こし三人は前を見た。そこには町の灯りが見えていた。
「ほんとに半日で着いたのか…」
「早く…降りたい。」
「…」
すると、メンデレーエフが指を指し、こんなことを言った。
「港を降りたら、左に歩け。そしたら馬車がある。黒色の荷馬車だ、多分すぐ分かる。わしにはもう不要の代物だからな、おまえ達にやるよ。ジェルッツラントまで行くなら必要だ。」
「ほんとかよ。まあ、ありがとう。メンデレーエフ博士。」
「ありがとねー…うぐっ。」
「…ありがとう。」
そうこうしているうちに港に停泊していた。真っ暗な港に降りたった三人は、これからの旅路を実感していた。
「でもなぁ、こんなにかかるんだな。これからジェルッツラント方面だろ?俺達。」
「しょうがないよ、私達で決めたことだし。でも三人居れば、誰が来ても何があっても大丈夫よ!」
「マリーナ任せになりそうだけどな…」
「…行くしかない、それが使命だから。」
「じゃあな。死ぬなよ、おまえ等はそんなタマじゃないだろ。頑張れよ。」
メンデレーエフの挨拶を背に、三人は不安や期待、恐怖など様々な感情が入り混じった不思議な感覚を感じながら歩き始めていた。




