表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/395

十五歳の伯爵夫人第九話『移動』

帝都(テイト)にある皇宮(コウキュウ)(ヒラ)かれる、晩餐会(バンサンカイ)に出席する(タメ)に、伯爵閣下と私は自動車で皇宮(コウキュウ)へと向かっています。


(ワシ)其方(ソナタ)と同じ(トシ)だった五十年前…、半世紀も前だな、当時は帝都(テイト)内で貴族が移動する際は馬車で移動したが、今では帝都(テイト)では、すっかり馬車を見かけなくなったものだ』


自動車の窓から、帝都(テイト)様子(ヨウス)(ナガ)めていられた伯爵閣下が、どこか昔を(ナツ)かしむ感じで言われました。


『伯爵閣下は、自動車がお(キラ)いなのですか?』


伯爵閣下は、私の言葉に苦笑を浮かべられると、窓から目を離して私の方を向かれて。


『いや、(ケッ)してそんな事はないぞ、()最愛(サイアイ)(ツマ)よ、(ワシ)は十八歳の時に帝国軍に入隊して、それから三十五年間、五十三歳の時に退役(タイエキ)して予備役(ヨビエキ)中将(チュウジョウ)となるまで、(ツネ)最先端(サイセンタン)技術(ギジュツ)導入(ドウニュウ)する帝国軍に(ゾク)しておったが、技術革新(ギジュツカクシン)により、多くの兵士の命が(スク)われたのは、(マギ)れもない事実だからな』


私は伯爵閣下のお話に頷いて。


『帝国軍に所属(ショゾク)している侯爵閣下も、伯爵閣下と同じ御意見なのでしょうか?』


伯爵閣下は、顎髭(アゴヒゲ)御自分(ゴジブン)の手で()でられながら、私の言葉を(シバ)し考えられて。


其方(ソナタ)の実の兄である義兄(アニウエ)は、(ワシ)が帝国軍を退役(タイエキ)した後に、帝国軍で必要とされる物を可能な限りお教えした人物だからな、帝国東方(テイコクトウホウ)紛争地帯(フンソウチタイ)でも、義兄(アニウエ)勇名(ユウメイ)()せているらしい、(ワシ)のかつての部下達からの手紙でも、【流石(サスガ)は伯爵閣下の薫陶(クントウ)を受けられた御方です、(キワ)めて広い視野(シヤ)を持ちつつ、現実的(ゲンジツテキ)な手を着実(チャクジツ)に打たれる、沈着冷静(チンチャクレイセイ)名将(メイショウ)だと、感服(カンプク)(イタ)しました】と、(ウレ)しい内容(ナイヨウ)の手紙を送って来ておる』


私は伯爵閣下に対して頷いて。


『母は侯爵閣下が、最前線(サイゼンセン)での任務(ニンム)志願(シガン)したと聞いた際は、大変心配(タイヘンシンパイ)をしていました』


伯爵閣下は、私の言葉に深く頷かれて。


『母が息子の事を心配するのは当然の事だな、だが帝国男子たるもの、帝国軍に所属(ショゾク)したからには、皇帝陛下と帝国の(タメ)()(ササ)げる覚悟(カクゴ)が必用だ』


『…はい、伯爵閣下』


伯爵閣下は、(ウツム)いてしまった私の手を優しく取って下されて。


(アン)ずるな、()最愛(サイアイ)(ツマ)よ、義兄(アニウエ)東方(トウホウ)から帝都(テイト)帰還(キカン)されたと言う事は、東方(トウホウ)も落ち着いたと言う事だ、それに(ワシ)は今では退役(タイエキ)して予備役(ヨビエキ)中将(チュウジョウ)だ、余程(ヨホド)の事がない限りは、其方(ソナタ)と息子の(ソバ)(ハナ)れぬと約束しよう』


『ありがとうございます、伯爵閣下』


私は笑顔を浮かべて、伯爵閣下に対して御礼(オレイ)を言いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ