十五歳の伯爵夫人第四話『制服』
『とてもお綺麗ですわ、伯爵夫人様』
『うむ、うむ、本当に似合っておるぞ、我が最愛の妻よ』
私が通う事になった帝都の学院は、制服の着用が義務付けられているそうなので、伯爵邸に伯爵家御用達の仕立て屋を呼んで、私の制服の採寸と、今度帝都の皇宮で開かれる、晩餐会用の夜会服の着付けを行いました。
『皇宮に参内するのは初めてですが、伯爵閣下、おかしな所はありませんか?』
伯爵閣下は椅子から立ち上がれると、私の回りを一周されて。
『大丈夫だ、我が最愛の妻よ、心から誇りに思うぞ、其方のように美しい妻を持てた事を』
伯爵閣下の御嫡男を妊娠している間は、身体の線が崩れるのではと心配でしたが、幸い初産の後、私の身体の線は元に戻ったようです。
『勿体無い御言葉です、伯爵閣下』
伯爵閣下は、頭を下げた私の髪の毛を触られて。
『其方の美しい髪の毛に似合う、髪飾りも必要だな』
伯爵閣下はそう言われてから、仕立て屋の女性の方を見られて。
『今帝都では、どのような髪飾りが流行っているか分かるか?』
仕立て屋の女性は、伯爵閣下に対して深々と頭を下げてから。
『はい、伯爵閣下、やはり皇室御用達の、クリムゾン宝飾店の品が人気を集めています』
伯爵閣下は、仕立て屋の女性の言葉に頷かれて。
『当然と言えば当然だな、しかしクリムゾン宝飾店か…、かの店は確かに皇室御用達の名に恥じぬ品を造るが、皇室御用達の名にかけて、我等貴族が館に呼んでも来ぬからな』
私の実家は侯爵家でしたが、服も装飾品も香水も、全て店の人間を呼び寄せて購入していました。
『我が最愛の妻には、最高の物を身に付けさせる必要があるからな、よし、我等からクリムゾン宝飾店に出向くとしよう』
私は伯爵閣下に対して頭を下げて。
『はい、伯爵閣下、伯爵閣下のお供をさせて頂きます』
伯爵閣下は、慈愛に満ちた眼差しで私の事を見られながら、頷かれました。