表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/395

十五歳の伯爵夫人第三話『入浴』

『最低でも(アト)十五年、出来(デキ)れば二十年は生きて、(ワシ)其方(ソナタ)の間の大切な息子(ムスコ)の成長を見届(ミトド)けてから死ぬつもりだが、人生(ジンセイ)一寸先(イッスンサキ)(ヤミ)だ、(ナニ)()こるか()からぬ』


伯爵閣下と私は、帝都(テイト)伯爵邸(ハクシャクテイ)大浴場(ダイヨクジョウ)で、夫婦(フウフ)二人で、伯爵邸(ハクシャクテイ)に引き込んである温泉(オンセン)()かりながら話しています。


(ワシ)は今年六十五歳、其方(ソナタ)は今年十五歳、どう考えても(ワシ)最愛(サイアイ)(ツマ)である其方(ソナタ)と、大切な息子を置いて先に死ぬ事になる』


伯爵閣下は、沈痛(チンツウ)表情(ヒョウジョウ)をされながら話されています。


(ワシ)の姉弟は其方(ソナタ)祖母(ソボ)である姉上(アネウエ)唯一人(タダヒトリ)無論(ムロン)其方(ソナタ)実家(ジッカ)である侯爵家は、其方(ソナタ)後援(コウエン)を行ってくれるではあろうが、それだけでは不安(フアン)でな』


ここで伯爵閣下が、私の事を手招(テマネ)きされたので、私は浴場(ヨクジョウ)の中で身体(カラダ)を伯爵閣下に御預(オアズ)けしました。


()最愛(サイアイ)(ツマ)よ、どうか(ワシ)我儘(ワガママ)を聞くつもりで、帝都(テイト)の学院に(カヨ)って()しい、同年代(ドウネンダイ)の友人や知人を作っておく事は、(ワシ)が死んだ後にも、其方(ソナタ)と息子の立場を守る(タメ)にも役立(ヤクダ)つし…、(ワシ)其方(ソナタ)から(ウバ)ってしまった時間の()()わせをさせてもらえると(ウレ)しい』


私は…、私の髪の毛を優しく()でられている、私の夫である伯爵閣下に対して。


『伯爵閣下、私は何一(ナニヒト)つ伯爵閣下に(ウバ)われたと思ってはいません』


伯爵閣下は、私の髪の毛を()でる手を止められて、私の身体(カラダ)を優しく()()められて。


『ああ…、(ワシ)(ナン)と幸せな男なのだろう、()最愛(サイアイ)(ツマ)よ、(ワシ)其方(ソナタ)出会(デア)(タメ)だけに、この()(セイ)()けたのだな』


『伯爵閣下、私も伯爵閣下の(ツマ)となる(タメ)だけに、この()(セイ)()けました』


伯爵閣下と私は、浴場(ヨクジョウ)の中で、優しくも激しく口づけを交わしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ