表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/395

十五歳の伯爵夫人第一話『初産』

十五歳の伯爵夫人が。生まれて初めて帝国の帝都の学院に通います。

『ふうっ』


私は激しい痛みとの格闘(カクトウ)の後の、気怠(ケダル)さに()(マカ)せていました。


『子供を()むのは大変だと、御母様(オカアサマ)御祖母様(オバアサマ)から聞いてはいましたが…、こればかりは実際(ジッサイ)体験(タイケン)しないと分かりませんね』


私はつい先程(サキホド)初産(ウイザン)経験(ケイケン)しましたが、正直(ショウジキ)に言って二度と同じ体験(タイケン)はしたくないと思いました。


私は横を向いて、ベッドの横に(ヒカ)えている産婆(サンバ)の一人に対して。


『伯爵閣下はどうなされていますか?』


産婆(サンバ)は私に対して。(ウヤウヤ)しく頭を下げて。


『はい、伯爵夫人様、伯爵閣下は、御嫡男(ゴチャクナン)誕生(タンジョウ)を事のほかお(ヨロコ)びになられまして、大広間(オオヒロマ)祝宴(シュクエン)(モヨオ)されています』


私は産婆(サンバ)に対して頷いて。


『それは()い事ですね、伯爵閣下にとっては家門(カモン)と、自らの血筋(チスジ)(ツタ)える男子(ダンシ)誕生(タンジョウ)なのですから、お(ヨロコ)びになられるのは当然…』


『バンッ』『()最愛(サイアイ)(ツマ)よでかしたぞ』


ややお酒が入られている、伯爵閣下が御出(オイデ)になられたので、私はベッドの上で上体(ジョウタイ)を起こそうとしましたが。


『そのまま、そのままで()い、()嫡男(チャクナン)()むという大役(タイヤク)()たしてくれたのだから、(ミズカ)らの身体(カラダ)(イタワ)るように』


私は伯爵閣下の御言葉(オコトバ)に甘えて、(フタタ)びベッドに()(アズ)けました。


『ありがとうございます、伯爵閣下』


伯爵閣下は、私が横になっているベッドの横に来られると。


()が妻よ、其方(ソナタ)()んだ()嫡男(チャクナン)は、五体満足(ゴタイマンゾク)健康(ケンコウ)男子(ダンシ)だ、本当に、本当によく()んでくれた』


お酒が入られている伯爵閣下は、涙を流しながら、優しく私の手を取られて下さいました。


『ありがとうございます、伯爵閣下』


伯爵閣下は、私の言葉に(ハゲ)しく頷かれて。


先妻(センサイ)と、先妻(センサイ)()んだ(スベ)ての子供に先立(サキダ)たれた時は、()家門(カモン)もこれまでかと一度は(アキラ)めかけたが、姉上(アネウエ)(ゲン)(シタガ)い、姉上(アネウエ)孫娘(マゴムスメ)である其方(ソナタ)を、後妻(ゴサイ)として(ツマ)にして本当に()かった』


私の御祖母様(オバアサマ)の弟であられる、私よりも五十歳年上(ゴジュッサイトシウエ)(オット)の伯爵閣下は、子供のように涙を流され続けています。


『伯爵閣下の御嫡男(ゴチャクナン)が、健康(ケンコウ)(ソダ)たれる事を、私も願っています』


伯爵閣下は、御自分(ゴジブン)の涙を(ヌグ)われると。


『うむ、それなのだがな()最愛(サイアイ)(ツマ)よ、其方(ソナタ)産後(サンゴ)体調(タイチョウ)回復(カイフク)しだい、帝都(テイト)(ウツ)ろうかと考えている』


私は伯爵閣下に対して頷いて。


『分かりました、伯爵閣下、一日も早く体調(タイチョウ)回復(カイフク)するように(ツト)めます』


伯爵閣下は微笑(ホホエ)まれると、優しく私の髪の毛を撫でて下されて。


()最愛(サイアイ)(ツマ)よ、其方(ソナタ)はいつも不満(フマン)一つ言わずに(ワシ)(シタガ)ってくれるな、(ワシ)其方(ソナタ)()嫡男(チャクナン)を連れて帝都(テイト)に行くのは、帝都(テイト)ならば()嫡男(チャクナン)(ヤマイ)(オカ)されても、()ぐに対応出来るからだが、楽しみにしているがいい、帝都(テイト)では其方(ソナタ)にも“(オク)(モノ)”を用意しておくからな』


伯爵閣下はそう言われると、部屋から出て行かれました。


(オク)(モノ)ですか?、伯爵閣下のご領地(リョウチ)帝都(テイト)北方(ホッポウ)位置(イチ)していますから、帝国発祥の地である帝国の南方(ナンポウ)産物(サンブツ)かも知れませんね。


私は伯爵閣下に御約束(オヤクソク)したように、産後(サンゴ)体調(タイチョウ)回復(カイフク)(ツト)める(タメ)に、ベッドの中で目を閉じました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ