第九十七話 マオ、特殊な何かを感知する
レイン編で聞こえていた"音"の正体が判明します。
ランキングを見てみたら、月間が83位で四半期が100位でした!
読んでいただき、ありがとうございます!
5月11日 誤字の修正をしました。
オーガの将:サイキさん(半裸の変態)を物理的に地獄送りにした後、ボクたち5人はさらに奥地を目指して進みました。
出てくるのはゴブリン、オーク、オーガといった夜の悪人のオールスターがメインです。
出てくるモンスターより問題なのは"ボクの現状"でしょう。
「引っ張れ、引っ張れ、オレは動力……」
この言葉で理解できるでしょうが、キキが引く荷台の上に乗せられています。
こうなると荷物のように感じてしまいますね。
「──こんな時、ペットがいると絵になるのでしょうね……」
「キュァァァァァァ!」
「ふふ。ペットと家族は違いますよ?」
膝の上で『自分はペットじゃないのか?』と鳴くリュオの頭を撫で、ペットではないと説明します。
ボクにとってペットは『ただ"いるだけ"のムダ飯喰らい』という感覚なので、戦いでも役立っているリュオには当てはまらない存在です。
──もちろんハクガも家族です!
ガラガラと人力車──という名の"荷車"でドナドナされているボクは、ベルトコンベアで運ばれている感覚です。
荷台の上に載せている専用イスに座っていますが、地面から来る衝撃はサスペンションが吸収しているので快適で、歩きたくなくなるのがネックです。
──このまま"堕落してしまえ"という声が聞こえた気がします。
ただ、普段からハクガに乗っているので、現状を"堕落"と言ったところで『どこも変わらない』という感覚があったりします。
それよりも、先ほどのサイキさんとの戦いでキキのスキルレベルが上がったようで、引く力が強くなっているように感じます。
ガタゴトと荷台で揺られながら30分、突然前から"何か"が飛んできました。
「てぇぇぇぃ!」
パシュン! っと空気を貫いた音と共に発生した風が、物体Aに衝突し『のぷらぁぁぁぁ!?』と声が上がりました。
「────プレイヤーですよね??」
「うん♪ ここままだと"ぶつかって"危険だし、まだまだ飛んで来るみたいだよ??」
ミイの言葉に空を見上げると、たしかに飛んで来ます。
どこかの大佐のように『人がゴミのようだ!!』と叫ぶべきでしょうか?
いやいや、問題はそこではありません!
「この先で、イベントがあったのでしょうか?」
そう、この一言です。
声の主であるハルを見ると──いけません! 料理人の目になっています!!
ユウキの話では『大型イベントでは"強敵"が確実にいて、獲られる報酬が比較的高レアなアイテムになる』らしいと話してあります。
ジャングルエリアのレアモンスター『イエニ・カエッタ』のドロップからも、稀少性の高いアイテムが出ましたし……
──それに『強敵』と呼ばれるレベルのモンスターは美味しいのです。(食糧的な意味でも……)
そうだからでしょう。
ハルの目が"料理人の目な"のは──
そのハルを横目にボクは、いるであろうレアモンスターを想像していました。
「(どんなモンスターがいるのでしょうね?)」
その答えとはすぐに出会う事になるのですが、未知との遭遇にワクワクが治まりません。
えちこらとキキに運ばれた先で見えたのは、大きな体躯をした3つの影でした。
出てきたモンスターから考えれば当然のラインナップと言えました。
「────【ゴブリンロード】【オークロード】【オーガロード】でしょうか??」
ボクの言葉に真っ先に反応したのはハルで『オークロードはどんな味がするのでしょうか?』と輝く目で見ていました。
屠殺対象じゃないボクが"ゾクッ"と感じるレベルでヤバいオーラを放つハルから逃げるように、件のオークロードは一歩下がりました。
──うんうん。恐いですよね(笑)
そう思いながらも、オークロードの味に対する興味が尽きる事はありませんが……
むしろ『早く、喰わせろ!!』と言わんばかりの"腹の虫"が前方から聞こえてきます。
「に────く──ぅぅぅぅぅ────!!!!」
うん。キキよ、スキルや状態異常にない『野性化』を発症しないでください。
これは指示するまでもなく、キキとハルがオークロードと戦いますね。
「────ゴブリンロードは女の敵よ!」
「汚物は"殺菌・消毒"って事だね?」
隣では意外な事にゴブリンロードに対して敵意剥き出しのシアとミイがいました。
まあ公式の説明でも『ゴブリンとオークは村から女性を拐い、種としての数を増やす』とありますが、オークも同じ事をしているのですがゴブリンに対する憎悪の方が大きいですね……
余り者であるオーガロードを見ると、明らかに引いていました。
顔には『ち、ちょっと何なの、この女たち!?』と書いてあります。
諦めが肝心ですよ──サンロード。否、3匹のロードたち。
ちょっと遠い目でオーガロードを見ながら、ハクガとリュオに指示を出します。
「さて──ハクガ、リュオ、蹂躙を開始しなさい」
ボクの言葉に解き放たれた2匹は雄叫びを上げます。
『アオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!』
『キュルゥアァァァァァァァァァァァァァァ!!』
白い毛が白銀に輝くハクガと、光と共に巨体になるリュオ。
「ほぇ~? リュオ……大きくなりませんでしたか?」
記憶にあるリュオの大きさと、現在の大きさに1.5倍近い差がありました。
「成長期──と、片付けてしまいますか……」
色々と考える事が面倒になってきたので、スパッと問題点を切り捨てました。
──ハル・キキVSオークロード
──シア・ミイVSゴブリンロード
──ハクガ・リュオVSオーガロード
──傍観者のボク
のVSロード戦の幕が上がりました。
戦いと言うか『屠殺』と『滅殺』に『蹂躙』なので、普通の"戦闘"といっていいのかは疑問です。
ハルたちの方を見ると包丁を片手に駆け出すハルと、速攻で殴りかかるキキの姿が……
魔法使いの要素より"料理人"の印象が強いハルですが、倍近い体格差がある敵に突貫するのは危険です……普通は。
すべてのバフを自身にかけるハルと、素のステータス上昇系スキルで砲撃クラスの一撃を見舞うキキの姿からは『危険』という言葉が裸足で逃げ出している気がします。
その元凶はボクなのですが、いや~恐ろしいレベルで戦闘力が上がっている気がします。
────動力源が『未知の食材』と『食欲』である事に目を瞑れば……ですが。
ガキィィィィィン!!
ハルの包丁とオークロードの"鉈"が激しく火花を散らせます。
体格的にみれば吹き飛ばされるハルですが、鉈を大きく振り上げた状態で仰け反るオークロードの姿が……
ハルのスキル構成からいくと『魔法使いタイプ(殴り)』に近いとはいえ、上からの攻撃をカチ上げられるとは思えません。
ズドドドドドドドドドドドド──!!
重く鈍い音が連続で聞こえてきました。
オークロードの開けた横っ腹にキキがラッシュをかけていました。
キキの攻撃力はパーティー内で1番高いですが、分厚い"脂肪"という防具を着込んだオークロードに効果が少ないようです。
それでも"ズドドドドドドドドドドドド……"と続く高速ラッシュに分厚い脂肪が年輪のような輪を描き、徐々に内臓に近付いています。
ハルの指示でしょうね……たぶん。
ズドド……から"バシィンバシィン……"に音が変わり、それと共にオークロードの顔に"苦痛"が浮かびました。
ブタ顔の割に感情表現がハッキリと出ていますね。
──そして、一瞬のスキを見逃さずに"肘"を打ち込むキキ。
たしか拳法の技の1つだった気がします。
教えたのはいいのですが、技名を覚えていないのがネックですね~。
打ち込まれた場所が急所だったらしく、オークロードの顔に脂汗が浮かんでいます。
場所からして"肝臓"を打ち抜いた可能性が高いでしょう。
手を当てる為に前傾姿勢になった上体に、膝を踏み台にしたキキが"飛びアッパー"を喰らわせます。
赤いポリゴンと共に空を舞う"白い"物体は『歯』でしょう。
口から血がダクダク出ているように見えるのは、きっと舌を噛んでしまったか"喰い千切って"しまったかのどちらかですね。
脂肪に包まれているとはいえ、上体が逸れてしまった状態ではお腹の脂肪は役割を果たす事はなく、サクッとハルの包丁が刺さりました。
「──おぅ……刃が上を向いていますね……」
刺された痛みで"前屈み"になるオークロードのお腹は、さらに裂傷を深める結果に繋がりました。
そこに頭に決まったのは、キキの"踵落とし"です。
結果として、背中側に突き出した包丁の先端が見えます。
「────あれは、ハルに言われて作製した『マグロ包丁』でしょうか?」
リアルワールドにいるかは分からないですが、マグロがいた場合に備えてお願いされた"1m"の刃渡りを持つ巨大包丁です。
前に倒れてくるオークロードの首筋に走る一閃の輝き……
「お腹と首から"血抜き"をするのですね……」
ブタ型とはいえ、二足歩行のモンスターに行う"食材加工"の流れる手際からは戸惑いはなさそうです。
ジャングルに遊びに行った事が『プラス』に働いているのでしょう。(自給自足が基盤だったので)
ハルの戦いから、ハクガとリュオの確認に戻りました。
体格と戦闘経験の"差"から優位に立てないようですが、不利というレベルには至っていないようです。
それよりも問題なのは、オーガロードが呼んだであろう"取り巻き"たちの数です。
「────ふむ、実験にはいい機会です」
ボクは腰に提げた袋の中身を地面にバラ蒔きました。
「────『発芽せよ! 【マシンガン・フラワー】!!』」
百合の花を思わせる蕾を付けた150cmくらいの植物が、地面からニョキニョキ……っと生え、急成長します。
種を時速150km程度で撃ち出す、カスタムフラワーです。
鳳仙花っぽい花と食虫植物を掛け合わせた融合植物で、今回が初の使用になります。
パララララララララララ……
軽く乾いた音が続き、取り巻きたちを撃ち続けます。
ダメージは『キキの打撃の半分程度』と低めですが、数の暴力で襲いかかるので問題はありません。
唯一、弾切れと共に消え去るのが改善点になります。
────改善案を考え始めた時に、レインさんがプレゼントした武器を取り出した気がしました。
「そういえば、注意点を話し忘れていました!!」
慌てて、レインさんに電話を入れ、注意点を話しました。
魔王様パねえ……じゃなく、四天王『どこまでいくの!?』っていう状況です。
次はミイとシアの戦闘ですかね……
見た目が可愛く、中身は凶悪なのが彼女たちのクオリティーと言っても良いのでしょうか?




