第九十五話 オークは"ブタ"そのもの、ではオーガは??
更新しました。
本日は雨模様です。
4月25日 切れ味➡️斬れ味に、【あなたに死を】➡️【食材に捌きを】に変更しました。(捌きは誤字ではありません)
4月27日 オーク料理に【豚の角煮】をマオが望む文を追加しました。
ミイの【アローレイン】で幾人かのプレイヤーが死に戻りした光景を見た周囲のプレイヤーたちは、左右に分かれるように駆け出しました。
──いえ、正確には"逃げ出した"ですね……
「────流石、お姉様です。
私たちへの指示で、周囲のプレイヤーに自発的に協力させるとは……」
ハルが深く感心している様に頷くのですが、ボクは"そんな事"を指示に込めた覚えはないです!!
ただ、魔王軍を中心にするようにプレイヤーたちが広がっているので【鶴翼の陣】であるかのようです。
──間違ってなければ……ですが。
ボクは全速力で駆けて行くプレイヤーを尻目に、先ほどミイの放ったアーツが生んだ光景を思い出しました。
リアルワールドでの【プレイヤーキル】は仕様上において"出来ない"とあります。
では、この大前提と先ほどミイが放った【アローレイン】が引き起こした結果について考えましょう。
Q.ミイの攻撃は"プレイヤー"に対してのモノですか?
A.いいえ、モンスターに対しての攻撃です。
Q.使用した技の効果は?
A.【アローレイン】で、効果は『有効範囲内にランダムで落ちる』というモノです。
Q.範囲内にいたらしいプレイヤーは何故、死に戻りしたのか?
A.死因は恐らく『モンスターの攻撃』であり、それの引き金はアクセサリーの効果によって引き起こされた『強化された衝撃に足元を掬われた可能性』が非常に高いです。
Q.モンスターに止めを刺させた状況だが、これは【モンスタープレイヤーキル】に当たるのではないのか?
A.そもそも仕様として『PK・MPKは出来ない』とルールに書かれているので、する事自体が不可能になっていますので、偶然と判断してもいいでしょう。
Q.──で、結論は?
A.間抜けにも、アーツの有効範囲に進入したプレイヤーが悪い訳であり、アーツを使ったミイに責任は"ない"と判断します。
──以上、数秒で理論武装を終えたボクは、目を開いた時に見えた物体に驚きました!
遠くから駆け出してくるモンスターの顔はみんなのお馴染み? の"ブタ顔"のエロ担当──即ち、オークです!!
でも"オーク"というより、"ピッグ"というべき顔。
ブタがそのまま二足歩行している……という手抜き感の強い姿です。
でも、ミイの攻撃を"耐えきった"と考えると身体能力は"高い"と判断するべきでしょうし、ユウキの話や小説での立ち位置からしても体力はバカみたいに多い事でしょう。
「──ブタさんが歩いているよ??」
ミイの言葉にほっこりする部分もあれば反面、ハルから洩れ出しているオーラに冷や汗が止まりません!!
恐らくユウキなら『ゴブリンもオークも同じようなモノだろ!?』と騒ぎそうですが、洩れ出ているオーラの本質は全く違います。
「──ブタって事は『美味しい』訳ですよね??」
マンガ風にいうなら『影の落ちて暗くなった顔に、爛々と輝く瞳と三日月のように大きく弧を描く口』と語るべきでしょうか?
女性的観点よりも"料理人"として判断するのは、パーティーメンバーの食い意地が問題かもしれません。(恥ずかしながら、ボクもその中に含まれます)
「トンカツ、カツ丼、しょうが焼き──」
「トンテキ、豚丼、豚まん────」
「────豚しゃぶを忘れちゃダメだよ?」
「────これは、狩りですね?」
キキ、シア、ミイ──食欲に引きずられるように『ぐ~』っとお腹が鳴っています。
「みなさ「「「「ブタ狩りじゃー(です)!!!!」」」」」
何て事でしょう!?
全員の眼が"狩人"のそれになっています!!
それよりも、ハルが手にしている包丁は色々とヤバイです!!
料理セットに入っている包丁だと満足できないらしく、レインさんに鍛えていただいた包丁は、ボクがその時に発見した技術を組み込んで仕上げました。
新技術開発(という名の実験)は失敗と不発の連続で、完成したのは"運"の要素が強かったと思います。
甲斐甲斐しくもコカ君が強制的に装備実験に参加させました。
彼の尊い犠牲で作業が捗りました。
【魚から竜まで捌き包丁】
与えるダメージは『0』で固定だが、相手が持つ"すべての耐性"を無効化できる。
ダメージは0だが、急所に当たった際は"必殺効果"が出て特殊スキル【食材に捌きを】が発動する。
この特殊スキルを回避する術はない。
特殊装備に当たるので、装備する際には【料理】スキルがセット内に入っている必要がある。
スキルレベルにより斬れ味が上昇し、斬れ味が鈍る事はない。
え? コカ君が何の役にたったかですか??
それはもちろん『包丁の効果がどのレベルか?』を調べるのにですよ!
結果だけを言えば、PS次第で"確定キル"も可能だと分かりました。
PKした訳ではありませんよ?
ただ"包丁を持ってベアに突撃"してもらっただけです。
──野生を相手にした"殺るか、殺られるか"のブートキャンプ(強制)を体験していただきました。
コカ君が『ヒャワァ~~ッス』と奇声を上げながらも、ベアに対して渡り合っていたのはレインさんの教育の賜物だと思います。
勝率に関しては50~60%が良いところですね。
生産系スキルメインのコカ君の勝率としては高いでしょう。
──レインさんですか? 規格外な存在なので一概には言えません。(ボクもですが……)
この包丁は『ハルの包丁』の名前通り、ハルの使用時には『気合いで斬撃を飛ばす』効果が付いていました。
発動率は"スキルレベル/10%"なので最大でも10%くらいしかありません。
まあ、出たところで急所に当たらない限りは『ダメージは0』なので便利とは言いづらいですが。
さて、ボクがのんびりしている間に4人のオーク狩りは、最高潮のボルテージに達していました。
「行っくよ~!!」
ズバァァァン!!
どう考えても矢を放った音とは思えませんが、あれは間違いなく弓矢の一撃なのです。
「セェェェェェェイ!!」
脳天から幹竹割りのように振り下ろされたロングソードがオークを真っ二つにしています。
斬れ味と頑丈さをメインに作ったので外見は無骨ですが、威力は相応に高く"大剣並み"の攻撃力があります。
反対の腕に固定している盾も普通の"鋼鉄の盾"に見えますが、レインさんがボクの産み出した鉱石から仕上げ、軽さと頑丈さに加え"ノックバック耐性"があったりと『カーボン? それともジェラルミン??』と聞きたくなる性能に至りました。
「にぃぃぃぃぃぃくぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
あまりにも漢らしい雄叫びを上げ、オークを数m吹き飛ばすキキの少女度は下がる一方かもしれません。
アーツは使わず、ワンツーで闘うキキを他のプレイヤーが見れば『何故、アーツを使わない?』と聞くでしょう。
バグなのか、キキはアーツを覚えられません。
インフォメーションに問い合わせても、返事が『問題なくアーツの習得は行われています』と来ました。
ある意味で"不思議ちゃん"かもしれないです。
「────さあ! 糧となりなさい!!」
発動率数%の飛刃(今、命名)を連続で放つハルの姿が……
放たれた飛刃はオークの頸動脈を正確に切り裂き、ワンショットキルで沈めています。
自分の事を棚に上げた言葉ですが、『確率という言葉が、裸足で逃げ出している』と言いたくなります。
周囲にいたオークは少なくとも二桁後半、多ければ100を越えるあろう数がいましたが、逃げる事ができた個体はいないようです。アーメン。
──十字をきった時、頭に『豚の角煮』が浮かんだのは秘密ですが、作って貰いましょう。
惨状から目を逸らせた先には、3m近い巨体を誇るモンスターがいましたが、外見から名前を知るのは困難ですね……
筋骨隆々で健康的な小麦色の肌をした、大工──もしくは船乗りを想像させる体躯をしています。
ただ、服装が行けません。
黄色と黒の虎皮の腰ミノだけというフリーダムな、ファッションとは言えない姿です。
日本の妖怪に照らし合わせると"鬼"が近い気がします。
──えっと、もしかして"オーガ"ですか??
オークのイメージは女神◯生のブタさんを参考に想像してください。
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