第九十四話 周囲に拡がる"魔王軍"の被害
予定より遅くなりましたが、更新しました。
仕事が変わって初めての4月がこんなに忙しいとは!?(笑)
4月19日 脱字の修正をしました。
キキの成長が生んだ"エロティフーン"が周囲の空気をピンク色に染めた気がするマオです。
「──なぜだろう?」
カラダに痕は残ってはいないですが、胸の上に手を置いて縛られていた部分をちょっと頬を染めながら撫でています。
キキが言おうとした言葉の"先"は予想できますが、R18ではないので言わないで欲しいですね!!
ヤバい方面に覚醒し始めたキキに恐怖を抱きましたが、時間も迫っているのでハクガを呼んでその背に飛び乗りました。
ハクガは問題あるキキの状態を、気にする事もなく尻尾をブンブン振っています。
ピンクなキキを放置しながら、ハクガを撫でながら開始を待っているとアナウンスが入りました。
[大変お待たせ致しました。只今より、【討伐イベント】を開催致します]
放送を聞いたプレイヤーのボルテージは高まり、あっちこっちから雄叫びが上がり少々五月蝿いです。
ボクの様な狐タイプの獣人は【兎タイプ】の獣人には劣りますが聴力は高い方なのですが、ボクの場合はプレイヤースキルの関係もあり頭に響くレベルで耳が痛いです。
フードの中で耳を伏せ、少しでもダメージを減らそうとしていたボクの眼は、山の境界線付近に"黒い粒"が現れた事を捉えました。
「みなさん、戦闘準備を整えてください」
ボクの言葉にミイが弓を、シアが剣を、ハルが杖を、キキは拳を構えました。
キキが素手なのは(正確には、専用の籠手を装備していますが)ハンマーはスッぽ抜け、斧を持てば振り回され、大剣は攻撃を当てられない事が原因で、今では"素手"で戦う事になったからです。
──正直、不器用なのもいい加減にして欲しいレベルですね!!
手から離れた武器が『どこに飛んでいくか』は完全に運で、味方に被害を出しそうな場面も多く、もしもで造った銃があって良かったです。
作成当時は連射性能が低い、威力は弓の方が高い……と【銃】としては良いところのない外れ武器で、どこかのガンマニアが動画をアップしてくれなかったら完成まで時間がかかったでしょうね……
銃といっても動力が魔石であったり、弾が『装備者の魔力』だったりとファンタジー仕様なので火薬は一切使用しないとか……
以前にも似た武器を使っていましたが、アレの『進化系』を仕上げた──と考えていただければいい感じです。
──ただ、件のガンマニアがアップしていた動画の【魔銃】より高性能になっている気がしますが、そういう仕様だと思っています。
「マオ、そろそろ動くの?」
シアの言葉にハッと正気を取り戻したボクは、どう動くかを考えます。
「ミイとハルの先制攻撃後、右翼をキキが左翼をシアが対応してください」
「は~い」
「わかりました」
「了解」
「右翼??」
ボクの指示に首を傾げるキキに、ハルが『お箸を持つ方を走るのよ?』と説明していました。
ちょっと待ってください。
小学生と思わしきミイが理解しているのに──なぜ、中学生のキキが悩むのですか!?
キキの理解力の低さに引きました。
「ねぇ、マオ。おっきいのがいるよ?」
ボクの心境を無視して、戦況は動きます。
ミイの言葉通り、黒い粒には個体差があるようです。
大きい影を10円玉とすると、中くらいのが5円、小さいのが1円といった感じでしょう。
「──大きい影は2mを越えているみたいですね。
大きい影がオーガ、中くらいがオーク……といった感じでしょう」
「オーガとイエニ・カエッタだと、どっちが強いのかな??」
「お姉様から聞いた限りでは、イエニ・カエッタの方が強いと思いますね」
ミイの疑問に答えるハル。
オーガとは戦った記憶がないので、ユウキの話から判断するしかないのが問題ですね……
「──軍配は『イエニ・カエッタ』でしょう。
恐らくは"1:2"くらいの戦力差があるかもしれません……」
ボクの言葉にミイが頷き、宣言しました。
「私が、殺ってもいいかな??」
──と。
笑顔のミイとは対照的に、周囲のプレイヤーは顔色が青くなっている人のがチラホラいます。
そんなに強いモンスターとは思えない……という本音の裏で、ユウキの話から考えても『数段強い雑魚』としか思えません。
元気よく、ピコピコと上下に動く耳を見ていると、失礼ですが『GO』を待つ犬の幻覚が見えそうです。
「──念の為、ハルの魔法を挟んだ後の攻撃ですよ?」
「わぁ~~ぃぃ!!」
キラキラと瞳を輝かせるミイの耳は、ピコピコから『ピコココ……』といった風に変わりました。
その様子を見ていると『空を飛んだりしませんよね?』と聞きたくなります。
現状でプレイヤーが空を飛んだりは出来ません。
アバター作成では【天使族】【堕天族】【翼人族】などの『飛行能力』……【種族固有能力】を持った種族を選ぶことが出来ないからです。
これらの種族は"NPC専用"と現時点では言われています。
少し話が逸れましたが、そう思わせるくらい『ミイの耳の動きがイキイキしている』と言いたいわけです。
さて、色々と考えている間に距離は500mを切りました。
このゲームで作られる弓についてですが、長弓で100m、普通の弓(狩弓)で60m、短弓で30mと射程距離が決まっています。
歴史では200mや300mとか出てきますが、ゲームでは上記の射程で制限がかかっています。
とは言っても、それは『魔力の補助がない場合』の話で、ボクが作った魔導弓はその制限から離れます。
それでも最大で100mくらいしかないので、アドバンテージとしては"低い"と言えるでしょう。(誘導性はさておき)
「──&×@◯&×→□*=■^<^^>><××◯」
おっと、ボクが指示をする前に、ハルが詠唱を開始しました。
モンスターの距離は300mを切ったところなので、早いとも遅いとも言えない絶妙なタイミングです。
「────【超重力波】」
詠唱後放たれたのは超重力を波の様に放ち、周囲一帯に影響を及ぼす広範囲攻撃魔法の1つです。
普通、広範囲魔法といっても有効範囲は『校庭』くらいなのですが、ボクの作った武具やアクセサリーの効果が大きく働いているらしく、想定していた数倍──通常の10倍以上に拡がっているかもしれません。
ボクが作ったら装備の効果として考えても、ちょっと異常過ぎる気がします……
「────あっ!?」
異常を越えた原因を探していたボクは"あるアイテム"が光輝いているのに気付きました。
「ハル────何を考えて"それ"を使用したのですか?」
「はい?」
魔法が終わったのを確認したハルがボクと視線を合わせます。
「お姉様の作った【無限という名の絶望】の事ですか??」
ハルの耳元で輝いていたのは、サキに渡した試作品を完成させたアクセサリーでした。
サキに渡したのが『片方』だった事に対し、2対でセットになっています。
効果も試作品(片方だけ)の約2倍──
先ほど駆け寄ってきた雑魚レベルのモンスターには『オーバーキル』だった理由が分かりました。
「──何故、現時点で使用したのです??」
「必要な時に満足な効果を発揮できなくては意味がありませんから、イベント開始早々に"試し放ち"しました」
ハルがサラッと言っている中に混じっている『本音』が、顔に出ています──笑顔なので。
試し放ちはいいのですが、サキに渡した試作品と違い1回の使用で『壊れる』事はありませんが、次までの"クールタイム"が重く乗しかかってくるのですが……
──クールタイム『60分』
初めてのイベントの戦闘時間が短時間で終わった場合、陽の目をみる事がないと思いましょう。
それくらいリスクの大きいアクセサリーです。
「────【アローレイン】」
ハルに続くミイのスキル──いえ、ハルが使ったから使いたい気持ちは分かりますが、もう少し状況を見てから使って欲しい気持ちで一杯です。
「「「───ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」
哀れ……巻き込まれたのはモンスターだけではありません。
プレイヤーの方々も『矢の餌食』になりました。
所々で輝いている光を見て思うのは『"死に戻り"の光って意外に綺麗な輝きなんですね……』と、無慈悲な感想を抱いた事ですかね?
ことわざで『早起きは3文の得』とありますが、現状を見てそれが当たっているかというと……ことわざ的には外れです。
──いえ、矢が『中っている』事は事実ですが。
ボクは、何とも言えない気持ちで観ている事しか出来ませんでした。(傍観者)
しかし、巻き込まれたプレイヤーはどれくらい"先走って"いたのでしょうか?
ミイも巻き込まない様に注意していたでしょうし……
人は何かと影響されます。
マオとよく触れ合う彼女たちが染まっても不思議ではないかもしれませんね……
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