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第八十三話・トライピースのユウキ 中編

 ただいま、ちょっとお悩みモード中です。

 しばらくの間、不定期更新になりそうです。

 大森林の中でレベルアップを行うこと数日、俺たち3人は着実に強くなっていた。最初の頃に戦っていた"吊るしますツリー"は期間限定のモンスターらしく、年末には出現しなくなった。

 その代わりに現れたのは、赤き顔と緑の体毛を持つモンスターだった。その名前は"シシマイン"という、外見からして怪しい存在だ。


 ああ、これだけだと誤解を招きそうだから、少し詳しく説明すると『リアルワールドには、四季と年末年始』がきちんとある。それだけではなく、ハロウィンやクリスマスも存在する。

 日本生まれのゲームとしての特色といえるだろう。


 ──実際の季節は、【夏】なんだが……。


 シシマインと戦ったときの話をしたいと思う。


 ─────────────────


 俺たちが"トルンティウス大森林"で戦った難敵【吊るしますツリー】との戦いに慣れた頃、突如やつらの出現がなくなった!


「昨日から、吊るしますツリーの姿を見ないが、サキとリオはどう思う?」


「そうね、私の意見としては『期間限定モンスター』だったというものかな?」


「私もその意見に賛成ですね! 生息エリアの違いとして考えるには、この大森林の括りとしてはおかしいですから」


「よかった。2人の意見は、俺の考えと同じだったか」


 俺は幼馴染みゲーマーの仮説に安堵した。もし吊るしますツリー(アレ)がバージョンアップされて登場した場合、初見での戦闘では、死に戻りする可能性が高かったからだ。


 別段、変な話ではない。


 あの無限再生を彷彿させる『蔦を使った鞭攻撃』は、蔦を切れば消えてなくなるため、素材としての回収が出来ない!

 倒すのが大変面倒であるくせに、素材回収の面でみるとうま味が全く無いとプレーヤー泣かせのモンスターである。その分、スキル面では美味しい存在であるが……。


「期間限定のモンスターだったとしたら、もうすぐ年末になるわよね? だったら、出るんじゃないかしら?」


「そうだよね~。次は、どんなモンスターが出てくるかな?」


 サキの予想に、リオは暢気に答えるが、俺は逆に不安でしょうがなかった。期間限定モンスターの安直ネーム、無駄に高設定にされているモンスタースキル。

 俺は次にでる期間限定モンスターが、厄介きわまりない存在ではないかと予想している。根拠は無いんだけどね!


「まあ、その内に戦うことになるだろう。それよりも、1度街に戻って、武具の修復をしておいた方が良くないか?」


「──そうね。まだ大丈夫だとしても、油断して死に戻りするのは勘弁ね」


「じゃあ、街に────」


 その時だ! 俺たちの周囲に異変が起きたのは!!

 このリアルワールドに出現するレアモンスターには、出現前に幾つかの兆候を見せているらしい!

 俺とサキはβテスターでもトップクラスだったが、『物欲センサー』というものに邪魔をされ続け、レアモンスターの出現をこの目で見ることは叶わなかった。


 ちなみに『物欲センサー』だが、"欲しいものほど手に入らない"というものだ。望むほど、欲するほど避けられるという、ゲーマーの天敵である。


 俺たちの目の前で起こっている現象は、偶然で遭遇したプレイヤーの有志でアップされていた動画と似た状況である。

 目の前の空中には、振動によりヒビ割れが浮かんでいる。


「動画の撮影は?」


「発見したときから、録り続けているわ! マオに見せるのでしょ?」


「──出てこい! ──出てこい!!」


 リオが危ない娘になっている!?

 そんな風に豹変したリオを横目に、サキの隣で何時でも動けるようにスタンバイする。


 正面にある空間のヒビ割れが拡がってくる。そこから徐々に現れてくる、モンスターの姿が見えてくる!

 最初に見えてきたのは、赤い顔であった。何処かで見たことがあるような気がするのは何故だろうか?

 次に見えてきたのは、緑色の体毛だった。体の線自体は意外と細く、ひょろりとしている。パッと見た感じでは、"豹"をイメージしてしまうだろう。


 モンスターは体を曲げ、力を溜めているようだ。俺はサキの前に出て、モンスターの攻撃を受け止められるようにスタンバイする。

 盾の隙間から、モンスターの様子を見る。悠然と俺たちを見ているその姿は、余裕の現れなのだろうか?


「──せい!!」


 リオが突きを放った! 

 その攻撃は、モンスターが体を波打たせたことで体毛の上を滑り、無効化されてしまった!

 光の反射加減で分かりにくくなっているが、コイツの体毛はパーマのようにクルクル巻いている。よく絡まなかったと感心する。


「──b……#@『灼熱炎刃(フレイムブレイド)』!!」


 ──っちょ! 何度も話し合ったじゃない!?


 リオは又、炎系のスペルを使用していた。フレイムブレイド──〈火魔法〉の上位、〈炎魔法〉にある攻撃呪文の1つである。

 この森の中では、使い勝手の悪い魔法のトップだ。このトルンティウス大森林において、〈火属性〉は簡単に延焼してしまい、同士討ちならぬ『パーティ殺し』を行いやすい。

 この数日間で、何組ものパーティが燃え尽きる(・ ・ ・ ・ ・)のを見てきた。デスペナも厳しいので、使わないで欲しいのだが、〈光魔法〉には『物理的ダメージ』を与えるものが意外と少ない。


「わたしの"炎"が効かないなんて……」


「唖然とするのはいいけど、なるべく炎は使わないでくれ!

 俺たち3人が纏まって、死に戻りするぞ!」


「大丈夫よ。その辺りに抜かりはないわ!」


 サキが胸を張ると、ゴージャスとしか言えないある部分が強烈に自己主張した。無理矢理それから目を引き離した俺は、リオの方を向いた。

 リオは緑獣(仮)に猛攻を仕掛けている。レイピアによる鋭い突きは、剣山のように隙がない!!

 それでも攻撃判定がない。緑獣(仮)の体に突きが当たるのだが、体毛がその攻撃を「するり」と受け流しているように見える。このままでは千日手(勝負がつかないこと)になるのは目に見えている。


「火魔法が無効化されたのは痛いが、他の属性はどうかを確認してくれ。俺は、リオと協力して緑獣(仮)の注意を引き付ける! 頼んだぞ!!」


 そういって攻撃のために駆け出すのだが、どの属性が効くかは試さないことには分からない。俺は手にしているグレイブに、さらに力を込め握り締めた。

 駆け寄りながらとグレイブの攻撃圏内に緑獣(仮)の姿を捉えると同時に、真横に薙ぎ払った。実際に攻撃してみて分かったことだが、物理攻撃は"無効化"されているのは間違いない。

 例えるなら、『蛇口から流れている水を切り裂く』ようなものだ。水という液体を、物理的に斬ることは不可能だからな。


 その後も、『水』『風』『土』と属性魔法やアイテムを使って貰ったのだが、効果が確認できないままだった!

 八方塞がりの状況に俺たちは、焦りを溜めていくのだった。

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