第八十話 幻想と踊る
更新が遅くなりました。
本日の12時より、本作を再構成させた『ありえない! 公式チートで魔王職!? ~魔王様、VR界を押し通る!!~』を公開します。
話の内容、物語など本作とはガラリと変わった作品になっております。よろしければ、御一読お願いします!
本作は、完結までこのまま進めますので、よろしくお願いします!
ボクがポーションを振りかけた狼は、綺麗な純白──光の反射加減では、白銀か白金のも見えそうです。
ボクの知っている範囲では、体毛が変色する状態異常は聞いたことも、掲示板で見たこともありません。それだけでレアな状況だと判断できます。
「もっふ、もっふ! だよ!!」
色々考えているうちに、ミイは白狼に飛び込んでいました!!
最近、アクティブになってきている気がします。顕著になってきたのは、レインさんのギルドにいた間の気がします。
警戒していたボクを尻目に、ミイは『もふもふ』を楽しんでいます。もっとも、警戒していたのは白狼ではなく、イベントの発生に関してなので、しばらくの間『もふもふ堪能会』を2人で行いました。
ボク命名『もふもふ堪能会』は、何事もないまま夜を迎えてしまいました!
「────全く、音沙汰がないですね?」
予想が外れた状況ですが、元々ユウキたちには遠く及ばないので、『下手な鉄砲でも、数打ちゃ当たる』的な感覚だったので気にしません。
それよりも問題なのは、ボクたちの現在の状況です。
「ねえ、街の門ってもう閉まっているよね?」
「間違いなく、閉まっているでしょうね……」
白狼のお腹に2人で寄りかかって、話し合っています。夜空にはまん丸い月が浮かび上がり、この広場を、森の中を幻想的に照らし出しています。
空中に浮かんでいる、光の塊──塊?? ボクが疑問に思っていると、ミイが答えを教えてくれました。
「これ全部、妖精だよ! 見たのって初めてだよ!」
このリアルワールドには『妖精がいる』とβの頃から言われているそうですが、妖精の姿を見たプレイヤーはいません。これには、諸説色々と噂されていますが、決定的なモノはありません。
理由は簡単で、【妖精の足跡】が森の中などで偶然発見されるくらいで、確実な報告が上げられていない為です。
しかし、その理由はこの光景を見れば、納得せざるを得ません! この幻想的(ゲームの時点でどうかと思いますが)な光の乱舞と言えるものを見ていると、誰にも話したくなくなります!!
「綺麗ですね……。見ていると、時間を忘れそうですね」
「緑・青・赤……6色? 何か見たことあるような──?」
──!!!!
ミイの言葉にハッとして、周囲に漂っている妖精の色を確認します! 色の種類はミイの言う通りで、目を凝らせば辛うじて判断できる感じです。
大きさは5~10cmくらいで、色による差は無い感じです。もしかすると、大きさは妖精の強さで決まるのかも知れません。
「おいで、おいで~」
ミイは指先に魔力を集中して、妖精と遊んでいます。情報自体が無いので、魔力を集中したのは本能的なモノなのかもしれません。
ミイの魔力に釣られて、妖精たちは左右にフラフラ空中を踊っています。この場合は"泳ぐ"というより、"踊る"の方がイメージに近いでしょう。
「きゃははははは♪」
ミイの妖精と戯れる姿は、正しく少女と言うより「幼女」と言った感じです。(人様のことを言えませんが……)
戯れるミイを白狼の体に寄りかかり、眺めます。年寄り臭いとは言わないでくださいね!
もたれ掛かっている白狼の息づかいを、上下するお腹から感じとります。ふわふわの毛、温かい生物の温もり。昔飼っていた犬を思い出します。
幻想のような時間は、妖精が飽きるまで続きました。1つ、また1つとミイのもとを離れていきます。その時に空中で1回転したりする妖精もいました。
もしかしたら彼ら? の内 、1人? でもミイのことを気に入ってくれたら"いいな"──と心の中で思いました。
べろん!
白狼に右側の頬っぺたを舐められました! ちょっとザラッとした舌が、こしょぐったいですね。
それにしてもこの白狼、大人しすぎる気がします。昔飼っていた犬も、似たような感じだった気が朧気ながら覚えています。
──犬系って結構、上下関係がハッキリとしていますから。
舐めてきた白狼を、毛を鋤くように撫でます。「ハッハッハッ……」と呼吸している様子は、犬と変わりないように感じます。
もっとも、犬は家畜化されたと言われてもいます。何ら変なことではないのですが、何処か引っ掛かります。
当の白狼は全く関心がないらしく、毛を撫でているボクの手を受け入れています。喜んでいることは、その大きな尻尾がパタパタではなく、ワサワサと動いていることから知ることができます。
「──みんな~、バイバイね~~」
最後の妖精が、ミイの頬っぺたに触れ、その姿を消したのは、日ノ出の30分前でした。どうやら妖精の活動時間は、夜のようです。
ボクは白狼から身体を起こし、立ち上がります。
そんなボクの背中に、鼻先を押し付けてくる白狼──ニオイを嗅いでいないですよね? そう思うも、狼である以上答えることはありません。
『キュルアァァァ!』
『グルルルル……』
2匹の不可解な行動を、ボクは再び目にしました。
リュオに後押しされたのでしょうか? 白狼は、ボクのお腹に鼻先を押し付けてきました。小さな声で「クルルルルルル」と鳴く白狼にボクは、だいたいの当りを付け確認しました。
「──え~っと、もしかして……名前ですか?」
そうボクが確認すると、嬉しそうに顔を上下に振ります。そう言ってくれるのは嬉しいのですが、問題があります。
──ボクって、ネーミングセンスが皆無です!!
リュオは、竜➡リュウ➡リュオとかなり安直なのです!
しかし、名付けないといけません! こうなったら、禁断の『安直ネーム』しかないです!!
冷や汗を流しながら、「これしかないですよね~」と半ばやけくそで名付けます。
「────っ! 白牙、『ハクガ』です!!」
暫し見つめあう、ボクと白狼……軍配は如何ほどに!?
『アオ~~~~~~~~~~ン!!』
遠吠えをする白狼、ただ見つめるしかないボクは無言になります。「ペロン」正面から顔を舐められました!
【テイムに成功しました! ハクガ が仲間に加わります】
──はい? "テイム"ですと??
突然のことに混乱するボクに、ミイの声が届いたのは偶然だったのかも知れません。
「──いいな~。大きいワンちゃんと、契約なんて……。
まあ、私も2~3体と契約したけど──」
心が落ち着くまで、固まったままのボクがそこにいました。




