第七十五話 (素材採取中の)ガールズトーク その2
更新が遅くなり、申し訳ございません!
マオが絡まないと、規格外的行動が難しいことが判明しました(笑)
今回は、マオとキルステの2人が魔導紋の実験を行っている最中の話しになります。
4人の少女たちは、町の近くにある数少ない森林地帯にやって来ました。この森は、町の四方にのみ存在するのみで、荒野地帯ではなかなか採れない薬草系が群生しています。
「この森では、どのような薬草ではどのような薬が作れるのでしょうか?」
おっとりとした物言いに、男性が目を見張るプロポーション。しかし、その手に握られているのは『包丁』です。それが彼女の異様さを際立たせています。
まだ暴君竜帝の素材は使っていないですが、この岩と荒野の町までの間で入手した素材で出来ているので、攻撃力自体は高く、切れ味抜群です!
「ハルが調べてないって、珍しくないか?」
そう答えるのはシアで、彼女はマオ特製の双斧を一振りし、付くことの無い血を振り飛ばします。眼前に持ってきて、斧の状態を確認した後に、ホルスターにしまいます。
キキとシアの足元には、【リーフベア】というこの森にしか棲息しないモンスターです。このモンスターの毛皮はライトグリーン系の色で、草木に溶け込みやすい色合いになります。
そんな彼? の保護色である毛皮も、本能で生きていると言わんばかりのキキには勝てなかったようです。
「意外と、強かった──」
そう言ってはいますが、リーフベアの攻撃がその体に触れることはありませんでした。HPが減っているのは唯一ハルだけで、その原因も攻撃ではなく『巻き上げられた小石や破片』によるものです。
キキはベアハンドを着けたまま、シャドーボクシングを行っています。シュッ──シュッっと風切り音が周囲のメンバーのメンバーのメンバーの耳に届きます。
砂漠のオアシスならぬ、荒野のオアシスでは、荒野以上に生存競争が激しく、モンスターのレベルも相応に高いのですがティルグルスを倒した彼女たちには、少々物足りないようです。
「回復薬、解麻痺薬、解毒薬──それぞれで使う薬草が結構集まったよね! あとは、木の実や果物系を探したらいいかな?」
ミイは、アイテムウィンドウを開けて、採取した素材の確認をしています。回復薬に使う薬草系の採取はミイが中心に、魔物素材はシアが、料理に使う肉などはハルが、鉱石関係はキキがメインで集め管理しています。
「──ねぇ、金鉱石って何の役に立つの?」
キキも自分が管理している鉱石系を見ながら、確認作業をしている3人に話しかけます。
その話を聞いたミイは、マオから聞いた話を話します。
「以前、マオから聞いた話では、「装飾として使うくらいです」って言っていたよ?」
「──ゲームである以上、硬貨とかには使わないってことか?」
ミイの言葉を聞いたシアは、不思議に思いました。世界史の中でも金貨は出てきています。日本で言うなら、大判小判です。
そうやって色々と憶測が彼女たちの間で飛び交います。その話の流れを切り裂いたのは、単調な電子音でした。
──ピピピピピピピピ……
「運よく? マオからのコールが届いたよ?」
そう答えたのは、ミイでした。彼女にコールが届いたのは、戦闘中でも余り迷惑をかけないからでしょう。
「──もしもし、ミイだよ!」
『お話しがあるのですが、今は大丈夫ですか?』
ミイが3人を見回すと、キキは周囲の警戒を行っており、シアとハルが近くで耳を傾けています。2人に目で確認を取り、頷いたのを見たミイは返事をします。
「うん、大丈夫だよ! それでお話しって何?」
『それはですね……皆さんが【金鉱石】について話し合っているように感じたからです』
マオは当然のように言い切ります。そんなマオの言動に驚くどころか、感嘆の声を上げている少女がいました。それは当然のごとく──。
「流石、お姉様です」
ハルです。何やらグッと来たように、胸の前で手を合わせ、握り締めています。そう──それは、神に祈る信者のような姿でした。いえ、ある意味ではあるのかも知れません!
【魔王教】と呼ばれるものが!!
「あ~ハル? 少し落ち着こうな?」
昇天しているハルに危機感を感じたシアが、落ち着かせようと宥めています。
ヒュン──グシャ
生々しい音が時々周辺に響いています。その音の主はキキで、4人を襲おうとして近付いてきたのは、ちょっと突っ込みたい【手長モンキー】です。手長と言いながら、長いのは足で、長く見積もっても50~60cmくらいでしょうか?
何故そのような名前をつけたのかは、運営にでも確認してください。ただ、そんなモノがいると理解していただければ、問題なく生活は出来ます。
『まあ、半分は冗談ですが、金鉱石に関しての情報で重要なことがあったので、連絡を──と思ったのです』
「重要なこと? 装飾以外の使い道は『ない』って話だったよね?」
ミイの言うことは正しいですが、マオが連絡した時点では変わっています。それは、これから起こる”事件ならぬ事変”と言ったところでしょうか?
ミイは未だにトリップから帰ってこないハルを置いて、マオに確認しました。
『周囲には他のプレイヤーは、いませんか?』
マオの声は、これからする話の重要性を示唆しているようです。
その言葉を聞いたミイは、エルフとしての特性をフルに活用し、周辺に自分達以外以外いないことを確認しました。まあ、エルフの特性と言っても言っても、ただ耳が良いだけですが……。
「大丈夫だよ! 近くにいるのは、私たちだけだから」
『そうですか。それでは金鉱石にいてですが、以前は『装飾』としての使い方以外には、利用価値が無かったのです。
今回、キルステさんとの遊んでいたことにより判明したことなのですが、「魔力を流した際の抵抗が少なく、外部への洩れもほとんど無い」ことが分かりました』
「それって、どう言うこと?」
ミイに理解できたのは、『抵抗が少ない』と『洩れない』の2つで、それが何を指すのか分からない状況なのでそんな反応を返しました。マオはその事を怒るようなこともなく、分かりやすい説明を考えます。
『簡単に説明をしますと、コード──いえ、ホースに近いものだと思ってください。武具としては装飾・メッキくらいの利用法方がなかったのでが、試しに魔力を流してみたら流れがスムーズだったので、詳しく調べたのです』
世紀の発見と言われるのもは、得てしてそう言ったものなのでしょうか?
マオの話を一言にまとめると『金鉱石を集めてください』と言うものでした。なんでも【魔導紋】というものに使うようです。
早速周辺でモンスターを狩っていたキキを呼び、マオからのお願いを話して、現在ドロップ回収した金鉱石は転送します。
「──もっと、要るの?」
ちょこんと首を傾げ、ミイに確認します。頷いたミイは、近くでまだトリップしているハルを見て、「ハルが正気に戻ったら、狩りをしようか?」と言います。
そんなミイの言葉に対し「担いでいった方が、早くないか?」と極真っ当なことをシアが言いましたが、ここのモンスターは強く、狡猾になってきています。
「ハルが元に戻るまでは、ここを拠点にして戦おうか?」
ミイは代替案を出します。移動が大変なら、1ヶ所で防衛した方が回復薬の消耗が少なくすむからです。元々、誰かの案に従う気だったキキは即座に賛成しました。
「ここだと視界が遮られる気がするんだ。だからもう少し開けた場所を、拠点にして戦わないか?」
ミイの代替案に、さらに安全になるように意見を加えます。現状ではミイが中心になって動いていますが、本来ならこの4人は『ミイが中心で、ハルが補佐をする』形が出来上がっています。
しかし、現状のハルは「あぁ~ん! お姉様~~」と未だにトリップから戻ってきません。そうなれば、普段は警戒がメインのシアが行動の補佐を行います。
この4人は、マオに付き従っているように見えても、自身の考えで動けるくらいの経験は積んでいます。元々ハル以外は、ソロプレイヤーだったのも理由の1つです。
その場所から30分(ハルが正気なら、10分もかからないですが)、開けた場所に着きました。ミイが〈精霊魔法〉を使い、地面を平らに整えます。地精霊様々と言ったところでしょうか?
「じゃあ、拠点を出すね! キキは周囲の警戒を、シアはハルをお願いね!」
ミイはマオ禁製の【魔王印・ポーチ】から、拠点を出しました。大きさは縦10m、横20mの平屋です。
外観は丸太のログハウスです。
この拠点名は【魔王印・ボクの秘密基地 パート2】という安易なネームになりますが、性能は『魔王印』に相応しいです。
【魔王印・ボクの秘密基地パート2】
総面積200平方メートルの丸太のログハウス。5LDK、露天風呂(外からの覗き見防止機能)付き、リュオの寝室併設になります。この拠点……いえ屋敷には、〈破壊至難〉〈魔法攻撃激減〉〈物理攻撃激減〉〈待機時HP&MP回復・超〉〈対人・魔物結界〉等々色々なスキルが付いています。
──ちなみに、運営の用意した拠点系にも、〈破壊至難〉や〈HP&MP回復〉の効果は付いていますが、マオのモノほど高性能ではありません。
恐らく、パート1は? と思うのでしょうがそれは失敗作で、現在はミイが持っていたポーチに変わっています。
何を間違えたらログハウスがカバンになるのでしょうか? 不思議です。
「何度見ても、呆気にとられるな……」
しみじみとした口調で、シアは呟きます。こういった"移動型拠点"は結構な高級品で、最低価格が200万Gからになります。マオの作製した拠点に関しては、最低でも1000万Gはいくでしょう。
「──露天風呂、最高♪」
キキは喜色満面で、普段の能面のような表情には小さな笑みが浮かんでいます。実際キキは、この拠点の露天風呂が大好きです。暇さえあれば一晩中(VRの中で)入っています。移動型拠点でもこのレベルである以上、固定拠点を自作した場合どうなるのか想像できません。
ハルを自室に寝かせたあと3人は外に出て、モンスターを5時間ほど狩り続けました。ハルが正気に戻り、外に出て来たときには、顔だけでなく猫耳の先まで真っ赤に染まっていました。




