第六十話 トラップ錬成
8月5日 誤字の修正をしました。
昨日行った〈オリジナルスキル〉獲得による興奮か、ただ単に『試したいだけ』なのかは分かりませんが、皆さんより早く目覚めてしまいました。
「──子供っぽさって、意外と無くなりませんね」
自分自身の行動に、呆れを感じています。まるで遠足前の小学生のように思えてしまいます。
たぶんそれだけ、自身の成果の結晶である"オリジナルスキル"に心を燃やされているのでしょう。
皆さんが目覚めるのを待って、町にくり出し買い物・情報収集を行い、荒野に旅立ちました。
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「さて、この荒野を真っ直ぐ来たに進むと、プレイヤーが狩り場の拠点があります。
その拠点を出て『東』に3日で"沼地"に、さらに2日歩くと『竜域』と思われる"岩石地帯"になります」
ボクは先頭を歩いています。理由ですか? モンスターを早期発見して〈オリジナルスキル〉を使いたいからです!
建前としては『スカウト的な能力はボクが一番高い』からです。(能力的なことは本当です!)
「マオが──子供みたいだ」
シアは呆れたように言っていますが、その顔は『お姉さん』っぽいです。
「まあ、外見でいけば私の次に、幼いけど……」
シアとミイがそんな話をしているとは露知らず、陽気にモンスターを探しています。
町から出て半日ほど歩くと、草木は少なくなってきました。普通の土より赤みの帯びた色に近付いてきます。道無き道をモンスターを探しながら歩くのですが──
「全然モンスターが出ないですね」
町を出てから、モンスターの姿を全く見ないことが残念で仕方ありません。もしかすると……。
「この状況は、他のプレイヤーたちが『レベル上げ』を行っているのが、原因ではないでしょうか?」
ハルの意見に賛成です。
たしかあの時にサキから聞いた情報には、「この町の周囲って、モンスターのポップが非常に少ないの──。普通なら、他の場所に行くのだけど、ここ周辺のモンスターは"スキルレベルが上がりやすい"のよ────」とのことでした。
恐らく効率的に言うなら、2~3倍近いのではないでしょうか?
ガックリと肩を落として、目標の拠点に向かいます。
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道中何もありませんでした。ええ、本当に異常なくらいモンスターと出会いませんでした!!
その間ボクがしていたのは、周囲の警戒と石拾いです。この石は、トラップ錬成に使うものなので、アイテムボックスの中に『石を10×99』『岩を9×99』『岩石を5×99』を準備しました。
トラップ錬成を使用することになるのは、拠点で休み東に歩いて2日目のことでした。
「ミイ! 目の前にいるモンスターは、何ですか?」
町を出てから初めての戦闘です。目の前にいるのは『二足歩行の茶色い体毛の猪』です。
彼は腰巻きだけのオークとは違い、布袋に穴を開けた服とは言えないものを着て、さらにその手には槍を持っています。
「マオ! コイツら、『デザートオーク』らしいよ?」
荒野対応型のモンスターなのでしょう。ミイの〈鷹の目〉をすり抜け、ボクにも気付かせないその周囲に溶け込む体毛の色は、流石と言えます!!
「数は1匹です! ここは、ボクが殺ります!」
シアとキキからの反論はなく、皆さんから離れたボクは、デザートオークと対峙します。
『ブモォォォォォ!!!!』
槍をボクに向けて構えると、全速力?で突貫してきます。
予想よりは速いのですが、マーダーベアと戦い続けたボクには、少しばかり遅いです。余裕をもって右に回避し、その足元の地面に手をつけキーワードを言います。
「──『トラップ錬成』!!」
ザクッ!!
デザートオークの左足は、地面から突き出した石の棘が何本も刺さっています。
足から血を出し地面に固定され、バランスを崩したデザートオークに、さらなる追い討ちを仕掛けます!
「──『トラップ錬成』、!!」
グサッ!!
ズブっズブっと太さ10cmの石の円錐が、その丸々としたお腹に吸い込まれていきます。数は、10本──。
オーバーキルなのは分かっていますが、初めてのエリアでの初戦闘です。安全性を優先した方が、良いとの判断です。あくまでは建前としては──ですが。
本音は「どれくらいの威力があるか、知りたかった」からです。
断末魔を上げ、事切れたその体に手を翳すと、徐々に頭の方から光の粒子になって消えていくデザートオーク。
ボクは「殺り過ぎました!!」と心の中で叫び、彼女たちは"ポカ~ン"っとしています。
ドロップアイテムは以下の通りです。
デザートオークの毛皮×1
デザートオークの槍×1
意外なことに、槍の方は素材アイテムでした。確認し終えたボクは、皆さんの方を向き話しかけます。
「──さて、モンスターを倒したので、先に進みましょうか!」
意識して明るく、皆さんに声をかけます。
「──えっと……今の何?」
キキは4人の中で一番早く立ち直り、ボクが行ったことを聞いてきます。
「──アレですか? 〈オリジナルスキル〉です。このスキルって使うと分かるのですが、"ハイリスク&ハイリターン"だと思います」
「そうなのですか?」
ハルの疑問に、ボクは答えます。
「はい。先程使った『トラップ錬成』ですが、利点は"高速発動"だと思います。実際に直ぐ発動しましたので──」
「それでは、"ハイリスク"は何なのですか?」
ボクは『デザートオークの槍』を鑑定したときのことを話します。
「欠点は"素材の消費量が多い"ことですね。即時発動が『可能になった』っと言っても、〈罠士〉に変わりはないので必要なんです!」
「どのくらい増えたのですか?」
ハルの言葉にマオは少し考えをます。
「だいたい──2倍くらいですかね? しかも、素材は使い捨てなのが問題です」
ボクはこのじゃじゃ馬なスキルと、どう付き合っていこうか考えています。
トラップ錬成の詳細は次回します。
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