第六話 森の中での調合
6月16日 誤字の修正をしました。
6月22日 誤字・脱字の修正をしました。
7月20日 誤字の修正をしました。
8月3日 本文の改稿を行いました。
8月31日 修正をしました。
H30年 5月6日 誤字の修正、本文の改稿・改行を行いました。
3人と別れたボクは採取に向かおうと思い、門に向かって歩き出しました。
昨日の採取で思うところがあったので、街を出る前に道具屋により『スコップ』を購入しました。
「これで準備はバッチリですね!」
スコップをアイテムボックスに入れてたボクは「ふんす!」と気合いを入れ南門から出ます。
今日の探索では、前回試せなかった『採取方法』による違いの検証を行う予定です。
掲示板にもある程度は載っていますが、ボクは自身の目で見て確かめないと気がすみません。
「現状のボクには戦う力がありませんから、移動するとき気をつけなくてはいけませんね……」
周囲をしっかりと確認しながら、近くにある森に向かいました。
道中では他のプレイヤーが数人でチームを組んでモンスターを狩っています。
そんな彼らを見たボクは「──動きがギクシャクしているように見えますね……」と、そんな感想を持ちました。
その事をユウキに確認すると「それは『システム補正』で、本来の動きを補正されているからだ」との解答をもらいました。
「(現状、戦闘系アーツもないですし……試してみますか?)」
早速、ユウキから教わった手順でシステム補正を弱めます。途端に体が重く、動きずらく感じました。
「(──なるほど!『ほとんどの人が使わない』訳が、この倦怠感的な感じが原因でしょうか?)」
ボクはそう言って納得しましたが、システム補正は『弱』だからで、まだ『中』ならもう少しマシでしょうけど……。
重くなった身体を、どう動かせばいいか試行錯誤しながら草原を歩きます。
街から30分で着くはずの森にやって来たのは、出発から1時間後でした。
森の中は枝葉で日光が遮られて、昼前なのに少し薄暗いです。
「ユウキの話では"薬草"は『日が当たりやすく、適度に湿っている場所が生えやすい』でしたっけ──?」
周囲を見回すと、入ってすぐの草むらが『日当たりが良さそう』なので近づきます。
雑草を退けると、そこには薬草が3本ありました。
「試しに、そのまま抜いてみましょう」
そのまま素手で抜きます。
ズボッ!と音を立て薬草が根ごと抜けました。
抜ける瞬間「ブチブチ」と小さな音が聞こえました。
そんなところまでしっかりと創り込まれた世界に感心します。
数秒して目的を思い出し、慌てて鑑定します。
【薬草】 無理やり抜いたので傷んでしまっている。 HP+1 ランクEー レア☆
「これは、使えませんね」
予想通りだったので、それほどのショックはありませんでした。
しかし、予想以上に悪い評価ですね……。
アイテムボックスから購入してきたスコップを取り出します。
「次はスコップで『薬草の周りの土を取り除きながら』ゆっくりと引き抜いてみましょう」
薬草の周りを円を描くように、スコップで耕していきます。
根が千切れないように注意して抜きます。
根っこに付いている土は軽く払い落としました。
【薬草】丁寧に採取されたので傷みがない。根っこにも高い薬効成分が含まれている。 HP+7 ランクE+ レア ★☆
「こうやると上質な状態で採取出来るのですか……」
最後の一株は”葉っぱ”だけを千切ってみました。
【薬草の葉】 癒しの効果は無くなったが、苦みは消え清涼感がある。 ランクE レア ★
「葉っぱだけを採ると、他の部分が無くなってしまいましたね」
この場所にある薬草は採ってしまったので、次を探して移動します。
薬草以外にも毒消し草やしびれ草などが採取できました。
結果分かったのは、採取方法による『効果』の違いです。
茎をナイフで切る→店販売と同じ基準値になりました。
葉っぱだけを千切る→本来の効能は消えますが、別の性質を持つことになります。
丁寧に根っこから抜く→本来の効能の『1.4~1.5倍』くらい高い効能になります。
このことは一部を除き掲示板に出ていることでした。
──主に知られているのは、上の二つらしいですが……
ボクは「葉っぱだけで『ミントティー』っぽいものが作れないでしょうか?」と考えていました。
一人で森の中を探索して思ったのは『危険がいっぱい』ということです。
薬草を探しての探索中、昨日見たラビット以外にお馴染みのスライムとゴブリンを見かけました。
なんとか気付かれる前に、発見できたので事なきを得ました。
「さっきから回収している『石』は何に使うのでしょう?」
気まぐれでアイテムボックスに入るか試したら、収納されたのはいいのですが……説明がそのままでした。
【石】 そこら辺に転がっている。スキル<投擲>があれば、ダメージが与えられる。 ランクEー レア ☆
ボクは本能が『集めておけ!』と訴えかける気がし、結構な数を収集、アイテムボックスの枠5つ分(5×99)回収してしまいました。
その間にも目的の薬草も2枠、さらに毒消し草としびれ草を1枠回収しました。
群生地破壊に繋がりそうですね……
「これだけあれば、問題なく生産活動を出来ますね!」
今回採取した数は、他の方がいないので異常な量を集めていた事に最後まで気付かないままでした。
本来なら、それほども集めませんし、集められません。
「この森の中には、『水場』はないのでしょうか?」
そう思ったボクは周囲の安全を確認すると、目を閉じ深呼吸をします。
ゆっくりと吸って……吐いて……数回繰り返し、精神を落ち着かせます。
次第に今まで聞こえてこなかった音が、ミミに届いてきます。
カサカサ……チチチ……サァァー
周囲の音が大きくなったように感じますが、実際に変わっているわけではありません。
ボクが幼い頃、お父様から教えていただいたことです。
ここ数年キャンプとかに行けなかったので、こうしているとちょっと思い出します。
「こちらの方から──水音が聞こえますね」
右手方向から、水音が聞こえました。
モンスターと遭遇しては危険なので、周囲を警戒しながらの移動です。
十分ほど歩いたでしょうか? 対岸が辛うじて肉眼で見られるので、大体100mくらいの距離でしょうか?
泉に落ちないように気を付けながら、水面を覗き込みます。
「わぁ~♪ とてもキレイな水ですね! 底の方まで見えそうです!」
出掛けに寄った道具屋で、木製のバケツ(桶?)を購入したので、それに泉の水を汲みます。「ちゃぷ」っと小さな音をたて、水面に波紋を生み出します。水が入り重くなったバケツに引っ張られないよう、足腰に力を入れます。
【清水】 とてもキレイな森の水。そのまま飲んでも問題はない。 HP+1 MP+1 ランクD レア ★★
「あれ?MPが回復するアイテムは……ユウキから聞いたこと無かった気がします」
ユウキの説明で聞いた範囲を思い出そうとしますが、思い当たらず『ボクが聞いていない可能性が高いですよね? きっとそうですよね──』と無理矢理納得します。
そんなとき何気なく、チラリと目についた水辺に生える草を調べてみます。
【魔力草】 魔力の潤沢な土地にしか生えない、魔力を癒やす効能を持つ。 MP+5 ランクD レア ★☆
「何故、こんな所にこのような草が?」
MP回復アイテムは『第二の街』からの販売と聞いています。
これはチャンスなので採取します。
薬草の時に試した方法で根っこから優しく抜きました。
やはり魔力草も同じで、丸ごと採取する方が効果が高くなります。
【魔力草】 丁寧に採取されたので、効能が高くなった。 MP+8 ランクD+ レア ★★
「う~ん、敵の気配は感じないですね」
先ほど採取した『魔力草』を泉の水で洗います。
綺麗にするときに、根や葉っぱに傷を入れないようにゆっくり丁寧に洗いました。
水をきちんと切ったら、アーツ『乾燥』を使い乾かします。
わずかに残っていた水気も飛び、魔力草自体もカサカサのパリパリになりました。
「これを…………」
ダガァァァン!!!!
静かだった森の中に、大きな音が響き渡りました。この大音の原因はアーツ『粉砕』を使ったからです。
粉砕した魔力草を、乳鉢で丁寧に擦り潰します。
ゴリゴリと擦り潰す音が響きます。
粉々になっているので乳鉢から溢れないように、注意して作業をします。
「長閑ですね~」
静かな泉の側で座り込んだボクは、周囲にモンスターがいない事を疑問に感じる事もなく『”調合”に集中できて良いですね』と暢気に作業を続けました。
「ビーカーに泉の水を入れて、魔力を注ぎ──最後に汁をゆっくりと注ぎ、丁寧に混ぜる……完成です」
ピカッと光って薬の完成です。
【魔力回復薬】 素材を厳選し、とても丁寧に作り上げた一品。通常のモノより高い効能を持つに至った。 MP+50 ランクC レア ★★★☆
とても素晴らしいモノが出来ました。
満足で顔が緩んでいる事を感じながらも、このまま時間の許す限りポーション系の調合を続けました。
ボクにとって"この泉"を発見できたことは、大変大きくプラスに働きました。
調合したものは以上になります。
【回復薬】 HP+50 ランクC レア ★★★
【毒消し】 毒を消す。 ランクC レア ★★
【毒消し丸】 毒を消し、少し体力を回復させる。 HP+5 解毒 ランクC レア ★★☆
しびれ草を使った薬品は、まだ調合のスキルLVが低いようで作れませんでした。
町に帰ったらユウキたちに連絡し、サキにMPポーションを渡しましょう。
サキからは「こんなのありえない!!」と混乱して文句を言われてしまいました。
ボクは「でも作れたのだから仕方がありませんよね?」と言うと、何故か睨まれました。
ちなみに、泉のことは秘密にしています。
六話でのステータス
マオ
<木工>LV6 1↑
<調合>LV7 3↑
<鍛冶>LV2
<細工>LV1
<魔法才能>LV8 3↑