第五十七話 マオの活動
今回はマオが四人に見せていない、生産者としての顔になります。
マオ(改め、魔王)の研究室
マオ:ここでは、ボクの作った武器に関しての報告を行いたいと思います。日記の方への返事が多すぎますので、この度、開設しました。基本的に武器・防具の質問は此方にしてください。
ちなみに、生産総合掲示板に未登録の方は書き込み出来ませんのであしからず。
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魔導師同盟(以降、ソサ):お久しぶりです! 魔王様は色々とヤバイものを作製している──と聞いたのですが、本当なのでしょうか?
マオ:ああ、前の日記で書いたものですね。あれって、呪いの固有装備と言っていいものなので、二度と産み出せないと思います。と言うか、作れません。
ソサ:そうなのですか? 過去話しですが、初期の作製の杖も結構スゴいって噂ですが、作製方法は教えてはいただけないですか?
弓弓志(以降、ケイ):アレってかなり規格外っすよね! 最近作った弓も、現行の何世代も先とか?
マオ:杖? 【魔法使いの杖】ですね。現行のものが、かなり強いので教えても構いませんよ?
ただ、「作製方法を知っている=作れる」ではないので、其処のところは理解してくださいね?
ソサ:魔王様からの直々に教えていただくのですから、少しでも近付けるように頑張ります!!
マオ:かなり簡略化した説明ですが、木材になる木を切ってきます。
森林組合(以降、トレ):そこは、普通だな。
マオ:丸太をスキル〈調合〉にあるアーツ『乾燥』で乾燥させたら、〈木工〉のアーツ『薪割り』を全力で使い、角材に加工します。間違っても、アーツ『加工』でショートカットしないでくださいね?
トレ:『加工』でショートカットした方が楽でないかい?
マオ:う~ん、簡単に言うと──生卵をそのまま食べるか、卵ご飯にして食べるか……でしょうか? リアルワールドでも現実であっても、手を抜いた商品が"最高級品"と呼ばれることがないのと同じです。
トレ:例えが分からんが、言いたいことは理解した。話しの腰を折ってすまん!
マオ:いえ、分からないことをきちんと聞くのは、良いことです。あとは杖の形に削り出し、スキル〈細工〉で使う〈細工初級セット〉のヤスリで、形と表面がツルツルになるように磨いて、〈木工初級セット〉のニスで表面の艶出しと、キズからの保護をします。
ソサ:結構時間がかかりそうですね。
マオ:当初は、色々と試しながらだったので、だいたい二時間くらいですか? 作製に一時間はかかると思って下さい。
ケイ:これって、リアル器用さに左右されない?
マオ:その通りですが、ゲームコンセプトに沿っていると思います。
ソサ:"もう一つの現実"ですね。器用なのはいないですが、うちはメンバーがちょうど三人いるので、一人づつ覚えます!
マオ:それがいいでしょう。ボクのように、生産特化にすると結構大変なので──。
トレ:魔王様は戦闘もいけるクチと聞いたが、違うのかい?
マオ:本来生産職は無力ですから〈錬金術〉で岩の密度を変えたり、〈罠士〉でトラップを張ったり──最近では、〈とび職〉で木の上からアタックをかけて、高所攻撃ボーナスを得たりと、戦闘スタイルを確立するまでは結構大変でした。
トレ:いや、そういうが生産スキルで戦うなんて、ありえんぐらいだからな? 魔王様は本当に、正式版からのプレイヤーなのかよ?
マオ:もちろん正式版からです。ボクは、望んでいる知識と関係なしに、βの方が作った掲示板をみて情報収集したりしていますから。
かなり有用な情報が眠っているのに、何故みなさんは読まないのですかね?
ケイ:俺を含め、みんなMMOとかの経験豊富だから、必要なこと以外で掲示板を見ないから、気付かない事があるのかもな──
マオ:ちなみに、ケイロンさんの使う弓にも、『乾燥』→『薪割り』のコンボは効果があると思います。皆さんが〈武器スキル〉が無いと戦えない!と言いますが、ボクにとってはスキルは"免許証"のような感じです。
ボクがそう考えるのは、誘ってくれた友人の教えが、『スキルってのは、証のようなもので、無くても一通りのことは出来る』という一言でしょう。
ソサ:それは、歩く・走る・座るなどの基本動作のことですね?
トレ:たしかに、スキルじゃないのに出来る動作だな。というか、スキルにはないからな。
ケイ:その話しに出てくる魔王様の友人って"トライピース"のユウキですよね? オープン三日目で「彼が土下座したところを見た!」って人がいたのですが──
マオ:事の発端は、幼子に変なことを吹き込だからです! だいたい毎年、夏休みをゲーム三昧で過ごし、最終日まで宿題は手付かずですよ? グチグチ……
ソサ:まあまあ──魔王様のお怒りは理解しますが、先程言っていた『乾燥』→『薪割り』のコンボを使えば、他の木材を使うモノにも効果が出そうですよね?
マオ:あぅ……個人的な愚痴をスミマセン。弓に関してなら、矢の方にも効果が期待できますが、量産には全く向かないのです。
ケイ:じゃあ、木の矢はATK+1から上げることは難しいってこと?
トレ:一から十までを、手製で作るとどうなるんだ?
マオ:作ったことはないですが、第一の街周辺だと素材を厳選しても+3が限界だと思います。
鍛治士連盟(以降、テレ):すまんの、遅れたわ! 魔坊に言われたことを、試していたら時間がかかっての。
マオ:お疲れ様です。どうでした? 効果は出ましたかね?
テレ:おう! インゴット化が全て手作業になるが、スキル〈鍛治〉のアーツ『精錬』の2~30%くらい上質になった!
マオ:おお! よかったです!!
テレ:最後まで手作業だと大変じゃが、完成品のATKが平均20%上昇する見込みじゃ!
ケイ:それじゃあ、そのインゴットを使って、矢の高品質化は出来ますかね?
テレ・マオ:それは無理じゃ!!(です!!)
ソサ:二人にハモられている……。
トレ:それもそうだろう。実際に手作業じゃ、不可能に近いからな──
マオ:普通に『切り札』としての準備ならまだしも……通常で使用する量の確保は、気が狂いそうです。ケイロンさんのところには、スキル〈錬金術〉を持っている人っています?
ケイ:俺が持っている。現状は死にスキル扱いだけど……。何故取ったのだろう?
マオ:だったら、木の矢に『そこら辺の石』を錬成してください。石の矢になりますから。ATK+2なので、それほど強力ではないですが、数の確保がしやすいです。
テレ:おい、魔坊がサラッと強化しおったぞ?
マオ:?? 歴史の授業をキチンと受けていれば、簡単に思い付くと思いますが?
ソサ:それって、石器時代のことですね? たしかに人類の歴史上のことですが、そう簡単に流用出来ないと思いますが──
テレ:おいおい、魔坊におめえさんの常識が通じるか!
マオ:あの──サラッと普通じゃないと、ボクを否定していませんか?
ケイ:いや、名前だけを知っている人がほとんどの複合狩弓を、簡単に作製する人が普通なわけないでしょう?
マオ:挟む順番と、形を会わせるだけですよね?
トレ:言うは簡単──それが当てはまる、いい例外だな。
ソサ:魔王様らしいですよね。
テレ:この話しはここまでだ。次は、金属と魔石の親和性についてだ。
マオ:そうですね。では────
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彼らの話しはまだ終わらない。




