第五十三話 新兵器・魔導銃
訓練場の中央に立ったマオは、ミイとハルから10mほど離れた位置にいます。その距離はお互いにとって、直ぐに攻撃を与えられる間合いになります。
マオは、ハルに渡した武器の説明を始めました。
「ハルに渡した銃ですが、以前ミイに試験利用をお願いした『魔導器』になります。連射制・エネルギー効率・耐久性が上がった代わりに、『自然属性装填弾』の機能を廃止しました。
その為この魔導器の属性は『魔力属性』のみになります。魔力属性の強みは、『相手の属性に左右されない』ことになります」
マオの言葉を聞いたハルは、手を上げ質問します。
「そうなると、最強属性になりませんか?」
ハルの質問に、うんうんと頷いたマオは答えます。
「そう考えそうですが、魔力属性にも分かりやすい欠点があるのです。それは、『利便性が属性攻撃に比べ、かなり低い』というものです。
火属性を例にするなら、『火炎球』『火炎壁』『炎の矢』『火炎弾』『炎の鞭』『爆炎球』『連続火炎弾』など、複数の呪文に別れます。
それが魔力属性になると、『魔力弾』『魔力壁』『魔力の盾』と言うように有名なものだけでも、倍近い"差"が出てしまうわけです」
そう一気に説明すると、肩をすくめ「そう美味しい話しは、ないですよね」と態度で示します。実際に三つの呪文しか知られていません。
「そして、その魔導器ですが先程上げた『魔力弾』を組み込んであります。たった一つですが、単発射撃と一斉解放射撃の二種類が使えます。
弾は魔力なので〈魔法才能〉は必ずセットしてください。ミイの魔導弓も同様です」
二人がステータス画面を開け、自身のスキル構成を確認しています。マオはミイに、〈精霊魔法〉をセットするように言います。
「魔導器……いえ、魔導銃と魔導弓の一発辺りの魔力消費量は同じです。一発辺り総魔力量の1%──〈魔法才能〉のレベルが上がる度に数値上は増加しますが、MP量に比例して威力も上がります」
「『一斉解放射撃』とは、どのようにするのですか?」
ハルが小さく手を上げ、マオに質問します。
「銃口の近くに3cmくらいの水晶がありますよね? その水晶コアの発光色が、現在のモードになります。
『青色』は単発モード、『赤色』は一斉解放モードになります。現在は青色に光っていますよね?」
マオの言葉を聞き、ハルは銃口付近にある水晶を見ます。水晶は青く光輝いていました。
「はい。確かに『青色』になっています」
「では──コレを撃ち抜いてください。一発分の魔力を充填してありますので──」
マオはアイテムボックスから、1mくらいの高さがある机を取り出し、その上に直径20cm程の大きさの石を乗せました。
見つめてきたハルに頷き返し、射つように合図を送ります。
パン!
乾いた音が、訓練場に響き渡ります。標的となった岩には、30mmほどの穴と放射線状の罅が入っていました。
「(ボクの総魔力量では、コレが限界なのでしょうか?)」
マオは空いた穴を覗き込みます。本人は忘れていますが、この岩は以前〈錬金術〉の訓練の為に精練したモノなので、自然界に存在する岩の数倍くらいの強度があります。
「──思ったほどの威力がないので、牽制をメインにした方が良いのかもしれません……」
マオは自分が出した石が『何』なのかに、気付いていないようです。
「魔力の充填方法は簡単で、グリップに魔力を込めて頂くと、持ち手内部組み込まれた特殊魔石に貯まります。
最大で10%、10発分が充填出来ます。
モードの変更は『単発モード』『一斉解放モード』は、魔声を使って切り替えてください」
説明を聞いたハルは早速、切り替えを行ってみました。
「──『バースト』」
ハルの魔声を受け、先端の水晶の色が『青』から『赤』に変わりました。
「バーストモードにおける、注意事項が一点あります。それは、『充填した魔力を全て使う』と言うことです。
残弾数は、銃身の横に走る『黄色』のゲージで、視覚的に分かるようにしてあります。ゲージ"2"なら『ブリット2発分』の威力が、同様にゲージ”10”なら『ブリット10発分』となります。
ハルのことを信頼していますが、『残弾数=威力』であることを忘れないようにしてください!」
そう言いながらマオは、アイテムボックスから1m級の大岩を取り出し、縦に三つ並べました。特に深く考えずに、何となくの数です。
並べ終わると、ハルに目で合図を送ります。目を閉じ数回深呼吸して、精神を落ち着けると目標である大岩に銃口を向けます。
カッ──!!!!
ハルが引き金を引くと、訓練場の中を光が支配しました。一瞬のこととは言え、視界を完全に失ってしまうことになるとは、作製者であるマオにも予想できませんでした。
光により、無色に塗り潰された視界が、元に戻ったときに見た光景にマオは驚きを隠せませんでした。
三個並んでいた大岩は、『前二つが消え去り、最後の一つは全体に罅が入って』いました。そんな光景を目の辺りにしたマオは、こう呟くのがやっとでした。
「フルチャージのバーストは、『エリアボス』以外には使わないでください」
その言葉にハルは「──分かりました」とだけ、返事を返しました。




