第四十七話 マオの10日間・後編
土日が恐ろしく忙しくて、更新が出来ませんでした。
今話で、閑話は終了です。次章から、生産と竜域の予定です。
7月27日 誤字の修正をしました。
1話との矛盾を直すように、追加しました。
H29年5月25日 誤字の修正をしました。
ちょっとしたハプニングがありましたが、マオはリュオと共に更なる奥地に向かいます。
「ふん~ふ~~ふ~。ふふ~ん」
相変わらず、音程のズレた歌?ですが、楽しそうな顔が印象的です。太陽の傾き具合からして、そろそろ15時くらいでしょうか?
「珍しくベア一匹出ないですね……」
ミイたちと前に来たときは、かなりの数のベアとエンカウントしました。以前と比べても、不気味なくらい静かな森の中に、少々怖さを感じてしまうでしょう──本来なら。
「く~まくまま、くまクマ~」
そんな歌で来るモンスターは、いないでしょう。そんなことは「気にしない」的なマオは歌い続けます。
遠くからガサガサっと小さかった音が、時と共に大きくなってきました。
ガサガサ……バリバリ!!!!
『グルアアアァァァァァ!!!!』
驚くしかないのでしょうか? クマが現れました。
「──そんなことも、あるのでしょうかね?」
マオは暢気なことを言ってますが、目の前にいるクマは何処か違います! パッと見で分かることは『四本腕』と、遠目で見ても分かるくらい『大きい』ことです。
マオは間合いを測りながらも、ユウキから教わったことを思い出そうとしています。
「この森であんなモンスターが、出るとは聞いていません。
──となると、『レアモンスター』でしょうか?」
マオがユウキに聞いた話しと、掲示板からの情報では、モンスターには三つの分類があります。
①数が多くて弱く、湧きやすい『モブモンスター』です。
②数は①の二割程度ですが、強いので『強モンスター』と呼ばれます。その区分には『エリアボス』も含まれています。
③もっとも数が少なく、全体の一割(一~九%)に満たない、エリアボスを超えた『レアモンスター』がいます。
通常のモンスターとは、格が違い・恐ろしく強い! とユウキが教えてくれました。
脳裏に浮かんでいるのは、③の『レアモンスター』一択です。理由は簡単で、そのクマの口には『ビッグボア』がぶら下がっているからです。
そんなモンスターが普通のわけがないです!
「もしかして……この森で起こっていたモブモンスターの減少は、コイツのせいなのでしょうか?」
マオは油断無く、臨戦態勢でクマ?との間合いを慎重に測ります。間合いは、クマ?の攻撃が簡単に届き、マオの攻撃も届く感じです。しかし──
「(向こうは四本も腕がありますから、単純に手数では負けてしまいますね)」
目の前にいるクマ?には、両肩に当たる部分から、もう一つの腕が生えています。
しかし、このクマ?の目は血走り、口からはダラダラとヨダレが垂れています。
「(これって確実にボクを『エサ』として、見ていますよね……)」
正解! 間違いないでしょう!
『キュルア!』
リュオは警戒しています。当のクマ?も先程から『グルルルルル……』と唸り、頭の上にいるリュオを警戒しているみたいです。
一分……二分……三分……お互いに睨み合ったまま、時間だけが過ぎていきます。
『グルアアアァァァァァ!!!!』
ボトっとビッグボアが、地面に落ちたのが引き金となり、戦闘になりました。
猛牛をイメージさせるくらいの速度で、マオに向かい突進してきます。
「──『トラップA発動!』」
マオは手にしていたしな竹を地面に立て、キーワードを言います。下から木の杭が『ニョキイ!』と生えてきて、クマ?の進路の妨害を行います。
悲しいかな──木の杭がベキバキィ!と音を立て、へし折られます。見た目以上に体が重く、毛皮の柔軟性も通常のベアの何倍も高そうです。
「これなら──どうですか!? アーツ『弩流砲』!!」
ガオオオン!!と木の杭を撃ち出しました。クマ?は木の杭が邪魔で、簡単には回避出来ないハズでしたが、その太い腕を二本を一緒に振るい、木の杭を力ずくで砕きました。
流石にマオも驚いて跳びのき、回避行動に集中します。
「ちょっと……嘘ですよね」
マオの表情は陰り、夕闇のように暗くなります。
『キュルア!!』
リュオも連続で石の刺を生み出し、攻撃します。撃ち出した石の刺は、クマ?の体表にわずかなキズを付けますが、刺の大半は『分厚い毛皮』に阻まれてしまいます。
流れた血もほんのわずか──普通のプレイヤーなら、諦めたでしょう。しかし、マオの瞳には諦めはなく、『喰らい尽くす!!』という感情が見えています。
「地上で勝ち目がないなら、空中戦で行くだけです。まあ──空中戦といっても、空を飛んだりするわけではないですけど」
マオは準備をしようとしますが、整う前に襲いかかってきます!
「──っ!? 『しなれ!!』」
とっさにしな竹を地面に立て、大きくしならせます。グン!っと上空に向かって引っ張られます。
「──っ!!──」
マオは手を離してしまわないように、棒をしっかりと掴みます。
強力な遠心力で、内臓まで引っ張られるように感じているでしょう。
「──ん……とっ!」
マオは、バランスを崩しそうにがならも、太めの枝の上に着地しました。
着地した枝は、地上から10mくらいの高さにあります。幅は30cm近くありそうです。
「──リュオ、大きめの岩をお願いします」
『キュルオォ!!』
任せろ!と言うように元気よく鳴き、空中に50cmくらいの岩を生み出します。
最初の一発は、そのまま投げつけます。
バガン!!
『グルアァァ!!』
【10のダメージを与えました】
ログを見たマオは、ダメージを与えられるけど、予想より低いことに少しだけ眉を動かしました。
投げる力は、バランスを崩さない限界ギリギリで、これ以上込めようとしたら落っこちてしまいそうです。
「こうなったら一か八か……賭けをするしかないですね──」
マオは、木の幹と枝の境目……節に、しな竹の先端を当て魔力を流します。ピタッと木にくっついたのを確認したマオは、小さく溜め息をつきます。
此処からが──賭けの部分……手を離す前に背中側に紐で固定します。
「(上手く、行ってくださいね──)」
マオの祈りが通じたのか、手を離しても接着力は失われませんでした。
それを確認し、口元は「ニヤリ!」と言わんばかりに、上がっています。
「──反撃開始です!!」
そう口に出して、自分を鼓舞します。それにしてもこのクマ?は、自身の身長くらい跳んでいるように見えます。
「──すう……セイ!!」
今度は腕に魔力を流し、肉体を強化するイメージを行いながら、岩を投げます。
【30のダメージを与えました】
これでは、まだまだのようです。次の一発は、岩にも流すようにイメージし、跳び上がってきたクマ?の頭に、カウンターでぶつけます。
ガキョン!!
【クリティカルヒット! 100のダメージを与えました】
「よし!!」
体力バーは見える範囲で、『十分の一』くらい減っています。
賭けに勝ったマオは、怒濤のラッシュをかけます。
【50……60……40────】
可能な限り頭を狙い投げますが、その太い腕に防がれてしまい、思った以上にダメージを与えられません。
クマ?を倒したのは、遭遇から一時間──岩を投げてから四十分経ってからでした。
「──ハァハァ……」
『キュエ……』
ケガはないものの、二人とも疲労困憊です。マオは幹に寄りかかり、呼吸を整えています。
しばらくは体力の回復に時間をかけ、落ち着いてから地面に降ります。
「これって、間違いなくレアモンスターですよね……」
ログを確認すると、【マーダーベアを倒した】と出ていました。クマ?改め、マーダーベアに触れると、光の粒子が周囲に溢れ体は消え去りました。
【200CPを入手しました。クマの手・B クマの肝・B+ クマの毛皮(大)C を入手しました】
まだ続きがあります。
【〈罠士〉4UP 〈道具士〉4UP しました。特殊戦闘条件のクリアにより、スキル〈とび職〉が解放されました】
マオが頭を傾げ、解放された職業系スキル〈とび職〉を確認します。
〈とび職〉 高所や狭い足場での、移動及び戦闘中のバランスが取り易くなる。アーツは無いが、高所から攻撃するなら、是非持ちたいスキルである。
獲得条件:高く、狭い足場で戦い、勝利する。
「──わぁおぅ! ある意味『チートなスキル』ですね」
当然買い!と速攻で修得するマオです。
「明日から──探してみますか?」
顎に手を当て、マオは予定を立てます。もしかすると、見つけ次第狩り続けるのかも知れません。
街に帰る道中、またもマーダーベアに出会いました。「一日二戦はキツイです~」とか言いながらも、実質10分ちょっとで倒します。
残りの九日間をマーダーベア狩りに勤しみ、ホクホク顔のマオと、それを聞いて驚きや呆れを通り越して、ユウキに「ありえないぞ!!」とキレられてしまいます。
「理不尽な……」とマオは思いますが、どちらの方が理不尽なのでしょうか?
追伸:ユウキの話しでは、十人以上のレイドを組んで戦うらしいです。安全に勝つには、それくらいしないといけないようです。
※マオは〈マーダーベアの天敵〉の称号を入手しました。




