表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/101

第四十五話 マオの10日間・前編

 夏休みが始まりました。学生のときは楽しかった記憶がありますが、成人して働く以上とてもキツイ季節になりました。

 この夏休み中は、2~3日毎の更新+出来次第という流れになりそうです。


 皆様も熱中症・脱水症状にはお気をつけ下さい。


 7月20日 誤字の修正をしました。

 翌日、朝日が登り皆に計画を話したマオは皆と別れ、リュオと共に西の森に来ました。この森の奥には、あの時に戦ったベアの生息地帯があります。

 マオにとっては久しぶりの一人行動になります。


「~~ん~ふふん ふ~~ふん~ん~ふ~ん」


 音程のズレたメロディーが聞こえてきます。頭の上に寝ているのでしょうか?リュオは大人しくしています。



【称号〈音痴な歌い手〉を入手しました】


 メロディーを歌い始めて、10分くらい経ったころマオの脳内に聞こえてきました。


「──へぇ! こんな称号もあったのですね!」


 怒るどころか感心しています。音痴なのを理解しているのでしょうか?


 藪の方からガサガサ!!と音が聞こえてきます。


『ガァァァァァ!!』


 飛び出してきたのはウルフでした。マオを襲おうと、藪の中から飛び出したのでした。


『キュルア!!』


 リュオが種族スキルで、10cmくらいの小さな石柱を生み出し、ウルフの頭に向けて打ち出しました。

 打ち出した石柱は『キュイン!』と音を立てて、ウルフの頭を撃ち抜きました。


「リュオ、ナイスです!」


 マオはリュオの倒したウルフを、ポーチの中にしまいます。細かい作業は後で行うのでしょう。

 ウルフをポーチにしまうとマオは、すぐに行動を開始しました。


「ふん~ふ~~」


 また歌い出し、ゆっくりと歩きます。近くに生えていた、丁度よい太さの枝をペキっと折り、指揮棒のように振り回しています。

 振り回された枝は『ヒュン! ヒュン!』と、鋭く風を切っています。

 マオは枝を振りながら歩きます。その動作を繰り返している内に、某騎士のラ○トセ○バーが思い浮かんできました。


「枝を魔力で覆うと、どうなるのでしょうか?」


『キュルア?』


 リュオは恐らく『何を考えてるの?』とでも、聞いたのでしょうか?

 そんなリュオを一撫でしたマオは、早速試してみます。


 パキッ


 乾いた音を立て、枝は粉々になってしまいました。


「──もしかして……強度の問題でしょうか?

 もしくは、素材の問題なのか──」


 マオはリュオに周囲の警戒を頼み、身近にある素材を集めます。森の中の探索で意外にも、このリアルワールド内に『竹』が有りました。


「へ~……これは使えますよね?」


 マオは目につく竹を刈っていきます。数が十分に揃ったら竹の枝を切り落とし、幹の部分を軸とします。


「──たしか、魔導具の『制御装置』があったと思うのですが……」


 ポーチの中をガサガサと探し、目的のモノを見つけました。細々したモノも取り出し、準備が出来ると作業を開始します。


 ①竹同士を〈合成〉で掛け合わせ強度を、〈錬金術〉で純度を上げます。こうすることで、竹の性質がより際立ちます。


 ②純度を上げた竹の両端に、石突きするために接鉱石を純化錬成し、接練石にします。


【接鉱石】 生き物以外に対して、高い吸着性を持つ。

 ↓

【接練石】 接鉱石を純化錬成により、吸着性をより高めた。加工次第では、様々な利用方法がありそうだ。


 ③竹の節の仕切りを、棒で打ち抜きます。そこに魔鋼糸を網目状に広げます。竹筒の片方を接練石で塞ぎます。


 ④竹の空洞を埋めるのに、街で購入した普通の魔石をアーツ『粉砕』で粉々に砕き、錬成水に混ぜ筒内に流し込みます。


 ⑤もう片方も接練石で塞ぎます。中身が混ざるように、よく振ります。


 ⑥制御装置を竹の中央部分に当て、錬成で制御装置の埋め込みと、中身の固定化を行います。


 ⑦魔力がキチンと流れるか確認して完成です。



【しな(ちく)】 名前と裏腹に優れた柔剛性を持ち、普通に棍としても使える。特筆すべきは、その柔性を用いた『バネ』としての利用方法にある。

 接練石を両端に仕込むことにより、魔力を流せば簡単に吸着する。穂先があれば、槍や薙刀のような利用も出来る。 ランクC レア ★★★★ ※所有者の意思で、1m~3mまで伸縮する。



「久しぶりに予想していない装備(モノ)が出来ましたね……」


 そう言い、マオはしな竹を振り回します。マオの振る速度が速いのか、柔性が恐ろしく高いからか──弧を描くように、本体がしなります。


「魔力は込められるでしょうか?」


 ゆっくりと魔力を注ぎ込みます。魔力を拒絶することもなく、竹の内部に張り巡らした魔鋼糸網が、魔力をしな竹全体に行き渡らせます。


『キュルオ!!』


 魔力を込めるのに集中していたマオは、リュオの鳴き声でモンスターの接近に気付きます。


「!!?」


 マオは気配のあった方向に、しな竹を振りかぶります。


 ガコオン!!


『グアァァァ!!』


 たまたましな竹の先で、モンスターの頭を弾きます。重い音を響かせ、モンスターは5mほど吹き飛びます。

 吹き飛んだのは『グレウルブ』というモンスターで、地球に生息するハイエナがピッタリな表現になります。


 吹き飛ばされ、木の幹にぶつかったグレウルブはヨロヨロと立ち上がります。先ほどの一撃が頭部に当たり、軽い脳震盪を起こしているようです。


「リュ──『キュルア!!』」


 マオが指示を出す前に、リュオは小さな石柱を撃ち出しました。その石柱は、キレイにグレウルブの頭部を撃ち抜きます。

 ハイエナっぽい外見だからこそ、マオは即座に周囲を警戒します。基本的にグレウルブは群れで行動するからです。


「──どうやら単独だったようですね。今のところ、似通った気配は……感じません…………」


 険しい瞳で森の中を見回し、何の変化もなかったので、頭の上にいるリュオを撫でました。マオに撫でられるリュオの目は気持ち良さそうに、細められています。

 マオはさらに奥地を目指し、歩いて行きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ