第四十三話 訓練方法(レベルアップ)
7月15日 誤字の修正をしました。
パチパチと焚き火から小さな音が鳴り響き、辺りの闇に呑み込まれていきます。その焚き火を囲むように、五人+一匹は座っています。
マオはキキと戦い方について話しています。身振り手振りで、分かりやすく教えています。
「最初に〈刹那の魔眼〉のコントロールを、実際に使用しながら覚えていきましょうか」
そう言ってポケットから、白いボールを取り出しました。
「これを使って、肉体に刷り込んでいきます」
ポン!マオの手がボールを上に弾きます。それをキキは、目で追いかけてしまいます。
そんなキキの姿にマオは微笑み、指の先でボールを回したりして遊びます。
「ボールを使って、何をするの?」
キキは視線がボールから離れないまま、マオに理由を尋ねます。
マオはボールを弄りながら答えます。
「親友の話では、魔眼系のスキルは『見ること』それが一番の鍛練法らしいです。ボク自身には魔眼系のスキルはないので、確実なことは言えないですが、親友はヘビーゲーマーなので本当だと思います」
その親友について、人物像が浮かんだのはミイとハルだけです。マオはシアを呼び、キキと一緒に訓練するように指示します。
「していただく訓練は、『ジャンピングキャッチボール』です。
言葉だけでは簡単に聞こえますが、実際にしてみると大変だと思います」
マオの説明を聞いていくうちに、シアとキキは不可能なんじゃないのか……と気になりました。
そんな二人の気持ちを理解しているからこそ、キチンと説明を続けました。
「────と言うわけです。慣れるまでは大変ですが、戦闘以外で安全にスキルレベルを上げる、唯一の方法だと思います。
これは、〈刹那の魔眼〉の訓練だけではなく、〈物理系補助スキル〉の効率化も一緒に行えます」
意外と難しいのは、『必要な処に、必要な力を集めること』に熟達することでしょう。マオは二人がキャッチボールに習熟した後が、楽しみだと思いました。
─────────────────────
マオはシアとキキに訓練方法を指示してから、今度はミイとハルに訓練方法を教えます。
「二人には最初に『システム補正』を一段階弱めた状態から、現状の動きが出来るように、身体を馴らして行きましょう」
「ねぇ──私たちより、シアの方が必要なんじゃないかな?」
ミイの言葉を聞いたマオは頷き、楽しそうに話しました。
「キキの教育が無ければ、そうしようと考えていました。
でも、丁度良い機会なのですよね……シアが『強化スキルに馴れる』またとないチャンスです」
「お姉様、それではシアさんが『振り回されている』事になりませんか?」
マオはハルを指さし、「そこなのです」と言いました。
「シアはまだ振り回されている状態です。これで『システム補正』を弱めたら、歩くことも困難になります。
だから最初に、強化スキルに馴れる必要があるのです!」
ミイとハルは、ジャンピングキャッチボールをしている、二人を見ました。なかなかキャッチボールが成立していないようです。
お互いに投げたボールを取り損ね、頭や体に当たっています。
時々、「あう!」とか「あん!」とか聞こえてきています。マオは少し、『キャッチボールを理解しているのか』心配になりました。
「ハルにはミイの援護をしていただく予定です」
「わたくしはお姉様ほど──「戦えと言うのではなく、補助をしていただく予定です」──補助ですか?」
マオはハルの言おうとした事を、割り込む形で話しました。
「はい、補助です。ミイの矢が切れた時の補充や、近付いて来るモンスターへの牽制です」
ハルは包丁で牽制するほど近付かれては、満足に戦えないのでは?と疑問に思いました。
その疑問はマオの経験上、そこまで問題ではないと思っています。
「ハルもボクと似た事が出来るはずです。ある程度器用な人なら、目標の近くに当たるようになります。
〈投擲〉スキルがないと命中率が高くないので、『当たれば儲けもの』と思って欲しいです」
マオはポケットからナイフと銃っぽい何かを取り出し、テーブルの上に置きました。
コトンと音を立て、テーブルの上を照らすランプの光に、そのフォルムを浮かび上げました。
刀身が8cm・持ち手も8cmくらいの大きさのナイフと、デリンジャーっぽい単発銃モドキです。
「スローイングナイフと魔弾銃(仮)です。ナイフの方はハルに、銃の方はミイに渡します。
銃の方は、鈍器としては使わないでください。鉄の塊に見えても歴とした『魔導具』なので、脆いです」
ミイは魔弾銃(仮)に手を伸ばします。
「──軽い。弓と同じ、もしかすると軽いかも──」
鉄っぽい外観と、持ったときに感じた冷たさは鉄そのものです。
「手に持った状態で『開け』と念じたら、トリガーの近くで二つ折れで弾倉が開きます。そこにはコレを差し込みます」
カラフルな色の弾頭がズラリ、赤・青・黄色・緑・茶色……色々並んでいます。
「この弾頭の色が各属性を示します。
赤=火・青=水と言うように分けてあります。単発式なので、属性を替えたいときは、弾丸を替えてください」
手の平で弾丸を転がして、確認していたミイに質問されました。
「発射はトリガーだとして、何が動力になるの?」
マオはその質問に、自身の失敗を理解しました。
「すみません! 打つには〈魔法才能〉が必要になります。
火薬の代わりに魔力を使います。命中率は〈弓〉スキルに依存します」
マオはそう言いました。




