第二十三話 腹ペコ娘?が仲間になった
6月24日 誤字の修正をしました。
7月20日 誤字の修正をしました。
ボクとミイは急いで少女を、ベンチの下から引っ張り出します。
「ねぇ───マオ、このゲームって……『空腹度』はなかったよね?」
「はい。今の時点では、機能が付いていません。
ユウキの話では、近日中に行われる初イベントで 付け加えられるそうですけど───」
ボクもミイも困ってしまいました。目の前の少女が『こうなって』いる理由がわかりません。ここは……経験者のユウキに聞いてみましょう。
『──プルルルルル──ガチャ
おう! マオか……どうしたんだ?』
「今、大丈夫ですか?」
『皆! しばらく休憩だ!!──』
皆!と呼びかけています。新メンバーでも加わったのでしょうか?
『待たせたな! 相談事か?』
「はい……実は、目の前におn『きゅる~ぅぅ』──というようなプレイヤーがいてどうすればいいのかわからなくて……」
先ほどの音が聞こえていたようで、笑って原因を教えてくれました。
『それは『ステータスに合っていない装備』が原因だ!!
おそらくマオなら、みれるんじゃないか?』
えらくあっさりと断言されてしまいました。
「ユウキは、岩山には行ったのですか?」
『──いや、まだだ。モブのロックスが堅くてな……』
「では、御返しに倒し方をお話ししましょうか?」
ユウキが息を飲んでいます。
『まさか──岩山から響いていた破壊音は……』
「ああ──噂になっていたのですか……犯人はボクたちです。
岩山のゴーレムって『ボス的な何か』だったりします?」
ノオォォォォォォォォ──
叫び声が聞こえてきました。モンスターに襲われたのでしょうか?
『──お前なあ! 数ある攻略組が『現状の装備じゃあ無理だ』って諦めた堅いボスなんだぞ!!』
「そうなんですか? 近くにあったモノを投げていたから、わかりませんでした」
あっ、今度は絶句していますね。
「ロックスの対処は、『ロックスをぶん投げ、ぶつけること』です。付与術の使える方がいれば、幾分楽です。
回収した鉱石を持ってきたら、装備を作りますよ?」
──チャットを切り、目の前の少女を視ます。
【鉄のプレートメイル】 鉄製の鎧。それなりの重さがあるので、相応の体力が必要。 DEF+25 ランクC レア ★★★
一般的な鎧の性能なのでしょうか?低い気がします。
少女の天辺から、爪先までザッと確認します。一つ頷いたボクにミイは聞いてきます。
「この子はどうして、こうなったの?」
「ハッキリ言って、装備の選択ミスですね……」
そう──この少女は、自身のスキル構成も含めた、ステータスと合っていない装備である可能性が高いです。
そのとき、ボクの目に止まったものがありました。インフォメーションメールです。開けてみると───。
【空腹度システムの開始につきまして──
リアルワールドをご利用いただきありがとうございます。
この度は、二体目のフィールドボスが倒されましたので、『空腹度』が解放されます。
空腹度は、料理を食べることで回復します。『0』になるとステータスダウンなどのバッドステータスが発生します。】
内容を見て、「犯人はボクたちですね」とミイと見つめ合ってしまいました。
そうとわかれば、何かを食べさせるだけです。
ボクたちが先程買ってきたスープを飲ませてみます。
口に入ったら、勢いよく飲み込みます。一気飲みして……熱くはないのでしょうか?
「────プハ! 私は…………?」
少女は意識がハッキリしてきたようです。
「君は倒れていたのです……空腹で──」
少女は驚き、ボクたちに問いかけます。説明をする前に、今着ている装備を外して貰いました。
「──そう言うことだったの……迷惑をかけたわ」
説明を聞いて、少女は立ち上がりボクらに頭を下げました。
少女の姿に関しては、身長はボクより高く、その髪の色は薄い青色になります。長さはショートカットです。
種族的な特徴は見当たりません。
「気にしないでください」
だってボクたちがゴーレム撃破を考えると、そうとしか云えません。
「貴女はなぜ、先程のように倒れたか……理由はわかっていますか?」
ボクの言葉に頷きました。そんな少女に答えました。
「一番問題になるのは、貴女が装備していた『防具たち』です。
貴女のスキル構成には、〈金属鎧装備〉や〈軽装備〉などのスキルを持ってないのではないですか?」
「──はい。持ってないです。ですが、ないからって装備が出来ない訳じゃない──ですよね?」
彼女の言う通り『現実と同じ』なので勘違いしますが、〈防具装備系〉のスキルは〈武器スキル〉と同じモノではないのでしょうか?
「その通りなのですが多分、〈防具スキル〉はレベルアップすることでスキル保持者に装備するために必要な『体力』を高め、動きの阻害をしないようにしてくれるのだと、思います」
後日ユウキに聞いたところ、間違いないことがわかりました。
「貴女は『スキルスロット解放ミッション』はクリアしたのでしょうか?」
「え~っと、『戦闘初勝利』と『スキルレベルを上げよう』をクリアしているわ♪」
「簡単なのをクリアさせるので、『パーティー加入申請』を送ってもらえますか? 許可しますので──」
少女は、ボクの指示に従い『パーティー加入申請』を送りました。
「──これで、『パートナーを組もう』がクリアされたはずです」
「──はい! クリアしてます!!」
「それではパーティー解除をしますね──」
彼女をパーティーから外します。彼女は感心したようにこう言いました。
「小さいのに、しっかりしているわね♪」
ミイが笑っています。彼女の方が年下なのが目に見えてわかっているからです。
「お姉さんは、中学生じゃないかな?──」
ミイはそう問いかけます。彼女は胸を張って言いました。
「そうよ! 今年で一年生になるわ」
「そうなんだ~。お姉さんの方がマオより──年下だよ?」
ミイが爆弾を投げます。盛大に爆発した爆弾に、彼女の目は大きく見開いています。
「──そうなの?──」
「信じられないでしょうが……歴とした『高校男児』です!」
ボクの顔を見回して、彼女は「──ありえない……私よりキレイだ──」と呟いていました。本人は呟いただけでしょうが、ボクたちは種族特性により、丸聞こえです。
「──あの~だったら……お願いがあるのだけど──」
「もしかして『パーティーにいれて欲しい』ですか?」
ボクの問いかけに彼女は頷きました。ミイの方を見ると、頷いていたので加わって貰うことにしました。
あ、先に条件を言わないと……。
「貴女は一時的で入るのですか? それとも、固定で組みたいのですか? この子、ミイは固定です」
「出来たら──固定で組んでくれると……嬉しいな♪」
「──構いませんが、ボクの方針で『スキル構成を共有』を行っています。このパーティーでの獲得素材はボクの一括管理で、また装備品の購入を禁止しています──」
彼女は少し考えて、確認してきました。
「一つ目はいいけど……二つ目はどうして──?」
「ボクが『生産特化』だからです。ボクたちのこの装備も、ボクの作品です」
そう言って、ウサミミフードを被ります。
「問題ないわ! ──で、一つお願いがあるのだけど……」
「──わかってます。スキル構成を確認したら、防具の作成にかかります」
彼女が手を出してきます。
「私はエリシア、シアと呼んで♪」
「ボクはマオです。敬称は不要ですので……」
「私はミイだよ♪ よろしくね~シアお姉さん」
ボクたちのパーティーに『エリシア』が加入しました。




