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ありえない生産職~あんたが生産職なワケがない!!~  作者: 四宮 皇季
第一章 マオはペットが欲しいです!
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第二十一話 初めての強敵!

 6月17日 誤字の修正をしました。


 7月15日 誤字の修正をしました。


 7月20日 誤字の修正をしました。

 ボクたちは岩山を黙々と登っていきます。途中休憩を挟んで移動したので、山頂付近に着いたのは、深夜遅くになりました。

 月の光が山頂を照らします。その光により、暗闇の中から現れたもの……それはボクが初めて出会った、リアルワールド内での強敵でした。


「──これを……リュオは感じ取っていたのでしょうか?」


 誰に聞くでもない、ただの呟きは闇夜に融けず、その存在に届いてしまいました。


『──人の子よ……何故にワレの眠りを妨げる?』


 頭に直接響いた重く暗い声は、聞くモノを恐怖させるに相応しいものでした。それに彼の大きさが、戦ったゴーレムの数倍は軽くある点です。

 体高はおそらく二十m以上、翼を広げれば二十五~三十mはあるでしょう。頭から尻尾までは下手をすれば五十mに近いかもしれません……。


「特に深い理由はありません。家のリュオ()が、頂上に用事があったそうなので、登ってきただけです──」


 月光で照らし出された、彼の存在の姿は……漆黒のごとき黒き鱗を持つ竜でした。


『──ブラックドラゴン──』


 ボクの脳裏に浮かんだのは、その言葉でした。細長い顔の頭頂部からは二本の角が天を貫かんと伸び、その顔から覗く瞳は漆黒の闇を見透すようです。


『──ほう。ロックリザードの子か……そうなると、奴は死んだのか──』


 何処か残念そうに語るその姿は、友の最期を送るように見えました。


『キュルオォォォ──キュウゥゥゥゥ……』


 リュオがブラックドラゴンに、何か話しているようです。


『──ほう、このものがそう(・ ・)なのか?』


 なにやら、不穏な空気を感じます。いきなり『闘え!!』とかはないと思いたいです。こちらは身動きが出来ない状態です……。


『お主は、風変わりな戦い方をするそうだな……』


 イヤな予感がしますが、黙ってるわけにはいきません。覚悟して答えることにします。


「風変わりかどうかは、わかりませんが……ボク自身は生産職なので、武器を使わない戦い方になります」


 実際その通りなので、これ以外の説明が出来ません……。

 その間もボクの身体の震えが……止まりません。これが、恐怖なのでしょうか?

 ──心臓もバクバクと激しく脈打っています。


『────なるほどの。─加護持ち─ そう言うわけか……』


『加護持ち』──それは初めて聞く言葉でした。ですが、ボクの心を捕らえるに足る何かがありました。


『──そうか、そなたらにはどういったものか、伝わっておらんのだな』


 そういって、溜め息をつきますがそれはブレスのようで、ボクとミイは直撃を受けました。その息には、大量の魔力が含まれていて、ボクとミイの身体は金縛りにあったように動かなくなりました。

 しかし、当のドラゴンは自身の行ったその行為が、ボクたちにどのようなことをもたらしたのか、理解していないでしょう。

 ミイは立っていることが出来ず、座り込んでいます。その腕に抱いたリュオに『逃げちゃイヤ』と言わんばかりに抱き締めています。

 ──そう言うボク自身も現状、いつ座り込んでも不思議ではない感じですが──。


『それではお主らに ─加護持ち─ について話そうかの……』


 その前に出会い頭から放っている〈威圧〉がかなり、精神と肉体にキています。その事を視線から読み取ったのでしょう──彼から放たれていた圧迫感が霧散しました。


『すまぬの……ワシら竜種は、生来〈威圧〉を持っており、常に周囲に放っておるのだ……』


 ミイの青かった顔色は、圧迫感がなくなることにより、元通りになりました。彼から感じる『存在感』自体は依然として残っています。


『──話の前に、主らの名を聞いてもよいか?』


「──はい。ボクがマオで彼女はミイです。貴方に名前はあるのでしょうか?」


 ボクは彼の存在に聞いてみました。


『ワシか……ふむ、遥か昔に主ら人形(ひとがた)に呼ばれた名があったな。──たしか”黒天竜”とか”八天竜”呼ばれた気がするぞ……』


「それは……二つ名でしょう。しかし─八天竜─ですか。そのままの意味で、貴方を除いた竜種があと『七竜』いるわけですか……」


『──そうだ。恥ずかしい話だが、ワシはまだ若く弱い。

 火・水・風・土・雷・氷そして──最強と言える─光─こやつがまた強い! 今の主らでは、出会い頭で死んでしまうであろう……』


 彼らがユウキからレクチャーを受けた『レイドボス』だとしたら……うん、無理ですね。最大人数の三十二人でも、勝てないでしょう。

 こんなモンスターを狩って、装備を作る気なら、無茶苦茶にスキルレベルを上げることになってしまいますね────。

 たとえ目の前の黒竜が最弱としてもそれは同種での話。ボクらと比べるということ自体が、おかしいのです。


『この話はここまでにして、加護持ちの話だが……マオと言ったか? お主のその装備は自作であろう?』


 ボクたちが着ている装備を見て、黒竜は確認してきたのでしょう……。


「はい、その通りです。この服はボクが作った自慢の作品です」


『──ほう。なかなか──でも、よくその程度の素材でこれほどの『逸品』を作りあげたものだ──』


 黒竜はボクの作った作品を誉めます。そうやって他人から褒められること自体が、少ないボクには嬉しかったです。


『マオはコレを誰でも作れると思うか?』


 黒竜の言葉に、嬉しかった気持ちは霧散しました。ボクの作った防具を真似ること(・ ・ ・ ・ ・)は誰でも出来るでしょう。あくまでも『形は』ですが……。


『──気付いたようだな……。マオ、お主の作った装備の形を真似できる者は、居よう──されど、同じ性能(・ ・ ・ ・)のモノは作れないであろう』


 もしかすると……加護とは──。


『ここまで言えばお主には分かるだろう──。

 加護とは─才能─決して誰も奪えない"天賦(てんぷ)の才"それこそが、世界が与えし加護。それ故に、唯一無二のモノとなる』


 僕自身の生まれ持った『リアルチート』は、この世界でも規格外らしいです。


『──しかし、お主ほどの天賦の才を持つものは、未だ出会ったことがなかった。生産職でありながらも、戦闘にも才あるとは……世界とは面白い!!』


 黒竜はその大きな口を開け笑っています。


『まだ朝まで時間はある。久方ぶりの時を楽しむか……』


 黒竜は楽しそうです。ただ、徹夜が決まった瞬間でした。

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