第二十話 別れがあれば出会いがある
6月14日 誤字の修正をいたしました。
6月17日 杞憂は→心配が に変更しました。
6月22日 誤字・脱字の修正をしました。
日数の変更をしました。
7月20日 誤字の修正をしました。
H30年 3月16日 誤字の修正をしました。
共闘を果たしたロックリザード──彼女? の残した卵をボクは優しく抱きあげます。大きさは大体三十㎝くらいの卵形……エンチャントのかかっていない状態だと少し重たそうです。
「ロックリザードの卵でしょうか?」
「────ぉ──マオ? どうしたの……?」
ミイが後ろから尋ねてきました。
「先ほどのロックリザードが、卵を残して……消えてしまったのです」
ボクはミイにそう言いました。ミイはボクを見上げ、鑑定するのか確認してきました。
ミイに確認して貰うために、卵を手に取ったときに──卵がヒビ割れました。
『キュルオォォォ』
卵から生まれたトカゲ?のような生物はボクの肩まで登ってきました。その小さな口を大きく開き、舌でボクの顔をチロチロ舐めます。
「くすぐったいですよ──」
ボクは優しくトカゲ? を両手で抱き締めました。その時にシステムの声が聞こえました。
【マオはロックリザード・新種をテイムしました。名前をつけて下さい _ _ _】
名前なんかを簡単に考えられるはずもなく、少し悩んだ上で『リュオ』と名付けました。安易と言わないでください。
「~可愛いぃ~♪ ねえ! 抱いてもいい?」
ミイが「待ちきれない!」といった様子で、リュオを抱かせて欲しいと言ってきます。
ボクはリュオに確認すると、頷いたのでミイに抱かせます。
「ニュフフフ~♪ スベスベしてて、触り心地サイコ~♪」
自分の毛並みならぬ『鱗並み』? を誉められたリュオの顔は、どこか満足そうです。ミイは気持ち良さそうに、頬っぺたでリュオのスベスベを堪能しています。
リュオの体長は現時点で三cmほどで、体重はおそらく五~六〇〇gくらいだと推測します。皮膚は蛇っぽい鱗でも、ゴツゴツした感じでもない不思議な体皮です。
この子があの共闘した、ロックリザードの大きさになるのでしょうか?
【従魔リュオ のスキルを決めてください】
リュオ
〈〉〈〉〈〉
※自分で選ぶ
※オススメ
選択方法のオススメは、ボクのプレイスタイルに合わせて、随時行われるそうです。スキルスロットが三個と少なく感じますが、従魔の進化状況により、解放されるようです。
進化は各状態で、幼獣期・成長期・成熟期と大まかに三期あり、幼獣期・成長期はレベル上限五十で進化するそうです。
大まかに三期で分けられていますが、その進化はプレイヤーの接し方や、行動パターンにより千差万別だそうです。
「(僕自身が生産職なので……前衛をしてもらう方がいいのですが──」
僕自身の特異なプレイスタイルが、リュオにどのような影響を与えるか──とても興味深いです。
【リュオのスキルをオススメで決めますか? Y←/N】
【本当によろしいですか? Y←/N】
【確認いたしました。これより、プレイヤーマオの行動より、スキルの選定を行います。】
【只今チェックを行っています……】
完了するまで待つこと……数分、スキルが確定しました。
【従魔リュオのスキルを決定しました】
リュオ
マオの従魔
〈身体能力上昇・微〉
〈魔力増強・微〉
〈超常進化〉
【以上のスキルになりました。スキルの進化は、従魔の進化に伴い変化します】
「(なんか……かなり、異常ことが起きそうな気がします……)」
このときの、ボクの心配が現実のものとなるのは、リアル基準の一カ月後……リアルワールドでの、千四百四十日後でした。
「ミイ! 一度街に帰りませんか?」
「ねぇ──リューちゃんが、山頂に用事があるみたいなの……」
いつのまにか、ミイはリュオの言葉を理解するまでに至ったのでしょうか?
「……そうですか──。ですが、今日のところは帰りましょう。
明日の朝イチに山頂に向かう方がいいでしょう……」
あと一時間もせずに、夜になります。暗くなると、暗視能力をもつモンスターに見付かれば、ファーストアタックを受けてしまいます。
しかし、リュオは顔を横に降り拒否します。ボクは最新のAIに感心すると共に、山頂にある何かに興味が湧くと同時に、何かが訴えてきている感じがあるのに気付きました。
「なるほど……確かに、今に内に登る価値は──ありそうですね」
「──マオ?」
ミイがボクの変化に気付き、不思議そうに問いかけました。
「ミイは──この先から何かを感じませんか?」
ボクは山頂を見上げ、ミイに問いかけます。
ミイも見上げた時に、『ビクッ』と身体を震わせました。
そう……何かがいる、もしくはあるのです。
「気を付けて登ってみましょう。間違いなく……答えがあるはずです」
ボクはミイに注意を促し、先頭にたって移動します。
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登山を開始して、一時間が経ちました。辺りは少しずつ闇に覆われてきています。
「暗くなりきる前に、照明の準備をしましょうか」
ボクはアイテムボックスから、木材と安い布を取り出し、木材片に安い布を巻き付けました。そこに、『メーバの体液』を浸けました。
「即席の松明の完成です!」
「確かに松明っぽいものだけど、キチンと燃えるのかな?」
「メーバの体液自体は、高い可燃性を持っています。街で売っている松明も、これと同じ材料で作られています」
ボクは仲良くなったNPCから教わった、松明の作り方をミイに話します。たぶん……他の方で知っている人はいないと思います。
「──よく……そんな事を知っているね──」
ミイの言葉にボクは、胸を張って言いました。
「教えていただいたことです」
リュオの鳴き声が岩山に響きます。たぶんこのくらいのことは、キチンとNPCと仲良くなれば、教えてくれるはずです。
もし他のプレイヤーが知らないなら、人間関係が上手く出来ていないのでしょう。NPCといえども、皆さんには心があります。
「ミイ、この松明に火を灯してください」
ミイは精霊魔法で、松明の先に火を着けます。
パチパチとメーバの体液が火に燃やされて、弾けます。
「あと3分の1くらいで山頂に着きますので、周囲の警戒はもっと密にしていきましょう」
「わかった」
ボクたちは残りを、気を付けて登っていきます。




