第十四話 釣れたのは、ボアでなく……ビッグボア
6月17日 誤字の修正をしました。
スキル〈投擲〉に関して指摘がありましたので、スキルの説明文を加えました。
6月22日 誤字・脱字の修正をしました。
7月20日 誤字の修正をしました。
ミイが颯爽と放った矢は、ボアのお尻に当たったようです。
『ブオォォォォォォ!!!!』
「予想通りですが、怒っていますね……」
ドドドドドドドォォォ…………
徐々に足音が大きく、近くなってきます。それに伴い、ボアの体格がわかってきます。
「──ねえマオ。アレって──結構大きくない?」
「見間違いではないですね──。ボクの目には体長が六~七mくらいあるように感じます」
そう感じたボクは今一度、アーツ『罠作成』を使いました。
「ミイも悪いですがヤツが直進して来るように、ヘイトを稼いでください」
心の中では「そんな事せずとも、来そうですが──」と思うも口には出しません。
「──わかったよ♪ それ!」
『キュイ』
ミイはボアに矢を放ちます。ボクも負けじと、投擲します。スキルがなくても、リアルの性能次第では問題なく行えるそうです。
【投擲】 物を投げた際に、命中率・投擲距離・ダメージの増加の補正あり。 ※このスキルがなくてもダメージは発生するが、命中率は低く、当てるのは困難である。
段々とボア?が近づいてきます。
「距離──六・五・四──ミイ! 退避です!!」
ボクとミイは木の近くまで逃げます。きっとボアは「逃がしてなるものか!!」と思っているのでしょうが、こちらは誘っているだけです!
「──今です!! トラップA発動!」
ボアの五mくらい前に、深さ五十㎝くらいの溝が現れました。当然、突進してきていたボアは足を溝に引っかけて盛大に転びます。
「トラップB発動!」
ボアが転がって行く先に、丸太の壁が現れます。ドゴオォォ!!と音を立てて、ぶつかったボアはその壁で上に飛び上がり、弧を描いて落とし穴に落ちます。
「──なんかコントみたいだね♪」
「ここまで上手く決まると、逆に笑えないですね……」
『ブオォォォォ──……』
徐々に小さくなる雄叫びは、死へのカウントダウンでした。
【ビッグボアを倒しました。各二十CPを入手しました】
「────ボアでなく、ビッグボアだったようですね……」
【マオは以下のスキルがレベルアップしました。 <罠士>LV5 <道具士>LV4 <木工>LV8】
結構一気に上がりましたね……。
【スキル<罠士>が規定値に達しました。 アーツ『捕獲罠』を入手しました】
「このビッグボアはボアの群のボスだったのでしょうか? 結構スキルレベルがアップしました」
「私も一気に上がったよ?<弓>がLV6に上がったし、何故か<発見>も上がったよ?」
「きっと、ビッグボアを発見したのが効いているのでしょう……」
ボクの推測は遠からずだと思います。普通のボアなら、もっと簡単に狩れるかも知れません。
「(そういえば──ドロップを見ていなかったですね……)」
ボクは今更ながら、ドロップの確認をするのでした。獲得したドロップアイテムは次の通りでした。
【ビッグボアの毛皮・中】 ビックボアの毛皮。少々生臭い。 ランクD レア ★★
【ビッグボアの肉】 少々筋ばっていて固く、獣臭い。上手な調理法を探そう。 ランクD- レア ★☆
【ビッグボアの牙】 ビックボアが縄張り争いの時に武器として使う。 ランクD レア ★★
以上がビッグボアから得たドロップになります。ボクたちはあまり苦労せず(罠で即殺してしまったので)ビックボア自体がどれ程の力を持つか、全く想像がつきません。
ミイと話し合い、今日はここでレベル上げを行うことにしました。
「マオ~次は──ウルフがそっちに行くからね~」
「──トラップ発動!」
現在のボクはルーチンワークを行っています。
罠作成→モンスターを仕留める→罠の回収・地形の修復
こういう流れになっています。これは結構手間もかかるのですが、お互いのスキルレベル上げは楽に行えます。
「マオ~牛さんがいるけど──どうするの──?」
「牛肉を食べたくなったので、狩りましょう! 数はどれくらいになりますか?」
ミイはスキル<鷹の目>を使用しながら、モンスターの釣りを行っています。
今回の牛もそのお陰での簡単にモンスターを引っ張れるのですから──
「──数は大体、五頭になるよ」
「そのくらいなら問題なさそうですね。ミイ、その一団を、引っ張って貰えますか?」
「任せて~」
ミイの気合いは絶好調になります。ボクもミイに負けないように、気合いをいれます。
「──それ!!」
『キュイ』
ミイの弓矢が吸い込まれるように、獲物に飛んで行きます。
「──目標に当たったよ!」
ミイはそう言って、再び射つ構えを取ります。ボクたちはそうやって、猪・牛・豚・狼などを狩って行きました。
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ボクたちは街に戻ってきました。今回の狩りで、<罠士>のスキルのことが分かってきました。
第一に、『罠作成』で作れる罠は直径が最大十五mくらいまでしか作成できません。
第二に、深さも十mくらいになります。その制限内で、自由に変更できます。
第三に、材料を準備出来れば、落石トラップ・丸太落とし・吊り天井など色々と可能だと理解出来たのはうれしい誤算です。
『捕獲罠』に関しては、とりもちや、底なし沼っぽいモノとかでした。
とりもちは『ネバつく罠』で、身動きがとれにくくなります。この罠で使う粘液は色々な効果を与えられる──所謂、自由さがあります。
麻痺効果や毒効果などの状態異常を突き詰めるのも面白そうです。
底なし沼ぽいモノは、『広域型の落とし穴』と言えます。これも中に使うモノを、泥にして動きづらくしたり、細かい砂で飲み込まれるようにしてみたりと<罠士>という技能スキルに対して色々考えさせられます。
「──ねぇ、マオ──これからどうする?」
宿屋で部屋を取って、ゆっくりと考えているとミイが問いかけてきました。
「そうですね──寝るには早すぎるので、ギルドにクエストの達成報告をして、町を少し散歩しましょうか?」
「──!! 賛成! 賛成! あっちこっちのお店を見てみようよ!」
ミイもボクの考えに賛成してくれました。ギルドでクエストの達成報告をしても、素材の売却はしません。
素材はすべて、生産活動で使う予定です。




