ただ君のために
私はアーサー・ブレイバー。騎士だ。
私は今とある少女の身辺警護をしている。
その少女は美しくひっきりなしに縁談が誘い込んでいる。
そういう私も彼女にほれ込んで身辺警護をしているっていう不純な動機だ。
彼女はとても優しい。
彼女にやさしくされて勘違いした男たちが彼女の家を訪れるということがままある。
なので私はそういう男たちが行き過ぎたことをしないように見張っているのだ。
おっと今日も勘違い男がまた一人。
ではちゃっちゃと成敗してくるよ。
ふう、今日は時間がかかってしまった。
勘違い男はなんと無断で彼女の家に上がりこもうとしたのだ。
なので私が成敗しようとしたのだが、そいつは勘違い男の分際で武芸に結構秀でていたのだ。
まあ私にはかなわなかったがな。
だが今日はそれなりに時間がかかったし音も結構してしまった。
彼女に見つかる前にさっさと引き上げよう。
ん?なんで見つからないようにしているかだって。
それはね、私は彼女から感謝されたくて身辺警護をしているんじゃなくて彼女を守るために身辺警護をしているからだよ。
だから彼女の前に出る必要はないんだよ。
それに彼女の前に出ると緊張してあんまり言葉がうまく出ないからね。
無様なまねはしたくないからさっさと退散するんだよ。
この頃不埒物が増えてきた。
しかも結構な集団だ。
それにその不埒物集団はおそらくこの国の兵だろう。
国の支給の鎧こそ来てはいないが、何人か見たことのある顔がある。
そいつたちはなんと庭に入ってうろうろと徘徊しているのだ。
これは成敗しなくては。
ふう、やはり時間が結構かかるな。
物陰から一人ずつ襲っていたのだが、それには限界がある。
途中で気づかれかけたためあわてて逃げだしたのだ。
これでは不埒物が彼女の館に残ってしまうが、
さすがに大人数を相手に素早く倒せるほどの技量はない。
しかしあんなに大量の人数の侵入を許すなど彼女の親は何をしているのだろうか?
はっ、もしかして脅されているのかも。
それなら今日いた兵たちの実家から攻撃していった方がいいかもしれないな。
うむ、そうしよう。
幸いあそこにいた兵たちはすぐに彼女に危害を加えるようなそぶりは見せなかったから大丈夫だろう。
それからいくつかの家をつぶして回った。
兵たちの中には貴族の息子である者も結構いたが貴族なんかはどこかに後ろ暗いところがあるものだ。
そこをついてやればつぶすのは結構容易だった。
ただ後ろ暗いところを隠すのがうまいやつらもいた。
証拠が見つからないときは仕方がないので証拠を偽造した。
悔しいことに彼女の家を脅していたという証拠は得られなかった。
今回いくつかの貴族のわいろなどを公表したことで何か勲章がもらえたが私にはそんなものはいらないのだ。
私は彼女の笑顔だけが欲しいのだ。
最近彼女の様子が変だ。
いつもきょろきょろしているし、気分も悪そうだ。
あれから何度か兵が家に侵入していたからそのたびにちゃんと追い払っていたというのになぜだろうか。
そうだ今日の夜にでも彼女に理由を聞きに行こう。
夜になった私は彼女の屋敷に訪れている。
彼女の部屋は二回だ。
普通には外からいくのは無理だ。
だが彼女の部屋には窓の外に少しのスペースがある。
そこに縄をかければ上ることはできる。
私はあらかじめ用意していたロープの片方に石を結んでその上から布で包んだものを窓の外のスペースから落ちないようにする手すりにひっかけた。
石を結んだだけでもひっかけることはできるがその場合は結構な音がしてしまう。
そうするとほかの人が集まってきてしまうかもしれないから布で結んでいたのだ。
彼女の話がほかの人には聞かれたくないようなことかもしれないからね。
そこら辺の配慮はちゃんとしているよ。
そして窓の外のスペースにやってきたのだが、彼女の部屋の窓には当然窓ガラスがある。
あいてないか確認してみたが開いてはいないようだ。
まあ開いていたら防犯上危ないから当然だけどね。
まあ、問題はない。
彼女に外から声をかけてあけてもらうという選択肢はない。
彼女にわざわざ動いてもらうなんてもってのほかだし先ほどの理由と同じく人を集めてしまうかもしれないから却下だ。
じゃあどうやって開けるのかって?
それぐらい考えてあるよ。
窓を熱してから急激に冷やすとわれることを利用するんだよ。
だから油と水と火をちゃんと持ってきたんだよ。
火は黒い布の中に隠して明かりがもれないようにしてきたし。
さて私はいま彼女の部屋の中にいます。
窓?そんなのちゃちゃっと割って入ってきましたよ。
では彼女に何を悩んでいるのかを聞いて・・・・・・・・・
その後私は何者かに殴られて意識を失った。
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「おい、例の通り魔捕まったらしいぜ。なんでも騎士様だったらしいぞ。」
「何っ、本当か?
こりゃあこれからは騎士だからって信用はできないな。」
「ほんとだな。ったくいやな世の中になったもんだ。」
町では通り魔が捕まった話で満ち溢れていた。
何しろ品行方正で堅苦しいところはあるが犯罪などはしないと無条件で信じていた騎士が通り魔という犯罪を犯したのだ。
これからは騎士だからと言っても人から無条件で信じられることはないだろう。
そして影響はそれだけではおさまらない。
「しかもな、その騎士様ちょっと前に勲章をもらってたらしいんだが罪のない貴族に罪をきせてその勲章 をもらってたらしいぞ。」
「うわー、なんてやつだ。
罪をきせたってことは証拠を偽造したんだろ。国の奴らも気づかないもんなんだなあ。」
「ああ、国も結構無能だな。」
国に対して民衆が不信感を持ったのだ。
こうして国に対しての不満はたまっていく。
話がそれて近頃の国に対しての不満を話していると遠くの方に騎士が見えたので男たちはあわてて散って行った。
後にこの国では民衆によるクーデターが起きた
この騎士のことがすべての原因ではないだろう。
しかし、この騎士のことが民衆たちが国に対しての不満を持ち始めたきっかけである。
そのおかげでと言うのはおかしいが、
この国は民衆により統治されまわりの国から一歩ぬきんでて栄えたのであった。
甘い恋愛ものだと思っていた人はすいません。
ストーカーの話でした。
一応ストーカーをするほど彼女のことを愛していたということで恋愛のタグをつけさせていただきました。
さてでは作中のことについていろいろ補足説明をしていきます。
騎士が片思いしている彼女
彼女は騎士に付きまとわれかなり怖い思いをしてました。
一人目の男は騎士に付きまとわれていることをどうしたらいいか相談しようと呼んだ人です。
庭にいた兵たちは彼女の家で一人目の男が切り殺されたので、
その調査と屋敷に不審者が現れないかと見張っていた人たちです。
つまりこの人たちは身辺警護をしていたのです。
騎士のストーカーもどきの身辺警護ではなく
貴族の後ろ暗いところですが、
証拠を見つけたところは実際に罪を犯しています。
証拠を見つけられなかったところはどうせ悪いことをしているだろうと勝手に騎士が決めつけて証拠をねつ造したものです。
割合で言うと前者が七割、後者が三割ぐらいです。
まあ、貴族というのはそんなものです。
さていくつかの家をつぶした後ですが、彼女の家からは身辺警護の人がいなくなっています。
それは彼女の家に派遣すると殺されるか罪をあばく(ねつ造も含む)ということをされるため行きたくないという理由で兵たちが辞退したからです。
まあ兵たちは雇われるがわですので次の日には派遣する予定でしたが、
その日に限って騎士が家に侵入したのです。
さてではだれが騎士を気絶させたのかというと騎士の愛しの彼女です。
彼女は誰かが侵入しようとしていることに気付き、
布団から出て窓の近くで木の杖を持って隠れていたのです。
そして騎士が部屋に入ったところでブオンと杖を振って頭を強打したのです。
なんで木の杖があるのかというと護身術として杖術を習っていたからです。
それと騎士様が彼女が布団から出たのに気付かなかったのは部屋の中に明かりはついてなく、騎士は明りを持っていたため中の様子がよく見えなかったからです。