EP1:始まりの邂逅
前回書いた奴のリメイクを書きました
結構意味不明な点が多々あるかもしれませんので、苦手な方は御了承下さい
――旧西暦100年、当初1つしか無かった人類は、突然"2つ"の分類に分かれた。繁殖力・技術力に長けた"人間"と、身体能力・精神力に長けた"獣人"。2つの人類は分かれた当初から仲が悪く、互いに"ザル"・"ケモノ"と差別用語を使って呼ぶ程だ
――2つの人類は、幾度もの対立を行った結果、「これ以上無駄な争いをするなら2度と干渉しない方が互いの為に良い」という結論が互いに合致し、"他人類不可侵略条例"を発行。それ以来2つの人類は決して交わる事無く、それぞれ独自の文明を切り開いた。勿論、獣人は人間には劣るが繁殖力と技術力を、人間は獣人には劣るが身体能力と精神力を、それぞれ独自に発展させる。その結果、100年後の旧西暦200年の頃には、両人種の文明はほぼ対等になったも同然
――けれども旧西暦554年魚の刻4日、人間は一方的に"他人類不可侵略条例"を破り、人間軍総司令官"レーヴァテイン"を筆頭に、獣人の領土に侵入しては次々と獣人を捕縛する"獣人狩り"を始めた
――何故人間は条例を一方的に破って獣人狩りを始めたのかって?人間はどう頑張っても、獣人のように頑丈な体を手に入れる事は出来ない。だがある日、1人の獣人が誤って人間の領土に迷い込んできたんだ。その獣人は真っ先に処刑されたのだが、残った獣人の血と肉を興味本位で体内に摂取した人間がいたんだ
――するとその人間の肉体は、なんと獣人を遥かに超える頑丈な肉体になった。そう、獣人の血肉は人間の体にとって、君達の世界で言う"ドーピング剤"と同じ働きを持つ事が判明したんだ。つまり人間は、遥かに強い肉体を手に入れるという欲望の為に、獣人達を"エサ"と認識したのさ。エサが欲しければ手に入れようとするのは、生物としては当たり前だからね
――当然獣人達は抗うも、獣人の血肉を摂取して得た力と本来持つ高度な技術力、そしてとんでもない狂気に駆り立てられた人間の前では、獣人は赤子も同然だった。こうして彼等は戦意喪失し、欲望の犬となった人間から逃げる日々を送るようになり、獣人達の領土は瞬く間に人間達に塗り替えられた…
――そして、旧西暦555年牡羊の刻15日…
――――――――――――
―街【獣人領】―
「ヒャハハハハハハハハ!ケモノ共、人間様に平伏せ!」
「そして、貴様等の血肉を俺達に寄越しやがれ!」
「グアアアアアアアッ!」
「クソッ、ザル共め…!」
人間達は狂気に取り憑かれたかのように声を荒げ、無抵抗な獣人達に襲いかかり、トドメを刺した獣人の身体にかぶりつく
本来なら身体面・精神面共に人間より遥かに勝る筈の獣人達だが、自分達の仲間の血肉を喰らい、自分達を超える力と狂気に満ち溢れた彼等にすっかり恐怖心を抱き、人間に悪態を付けるばかりで立ち向かう事無く、何時も何時も怯えているばかりだ
獣人の街は瞬く間に人間に蹂躙されつつあり、崩壊は時間の問題と思われた。だったのだが、突然街中に銃声か響いた。しかしその銃声は、人間達の持っている長銃からではない
「…おい、今の銃声」
「おお、どうやらおっ始めているみたいだな」
「いや違う、この銃声は俺達の奴じゃない!」
「何だって!?じゃあ、一体何処から…!?」
「――此処からだ、クソザル共」
その瞬間、「バキュン!」という銃声と共に、1人の人間が突然倒れる。彼の額には、銃弾で開けられたような穴があり、そこからは血が流れている
「何事だ!?」と皆が振り向くと、そこに居たのは1人の"獣人"…いや、獣人の中でも現在は絶滅危惧種でもある種族"竜人"だ。ボロ布を身に纏い、蒼い鱗をしたその竜人に、人間達は釘付けになる
「ケモノ!しかも希少価値の高い"竜"じゃねぇか!!」
「ヒャッハアアアアアア!良いエサが自ら喰われに来たぜぇ!」
「俺だ、俺が先に喰うんだぁぁぁぁ!」
「ヒャーッハッハッ!」
人間達は狂気に駆られたような声で、その竜人に襲いかかる。それはまるで、"エサを求める野獣"のような姿だった
しかし竜人は、相手が人間だというのに全く動じず、静かに冷静に、力強く言い放つ
「…"獣"共が…!」
竜人はそう言うと、身を翻しながら後退し、右手に持つ片手銃の引き金を引く。銃口から4発もの銃弾が放たれ、銃弾は人間達の頭部を貫く
頬に付着した人間の返り血に目もくれず、彼は地に落ちた人間の屍を踏み締め、蹴り飛ばす
「おい!あそこにケモノが居るぞ!」
「捕まえろ!」
「俺が、俺が喰うんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
竜人が声のした方向に目を向けると、何人もの人間達がやって来る。反対方向を向くと、そこからも人間達が。皆、狂気に駆り立てられたような目をしている
しかし竜人は一切怯まず、背部にあるホルスターから片手銃をもう一丁手に取り、構える
「……相手にしてやるよ」
そう言い放つと竜人は、2方向からやって来る人間達を同時に撃ち抜く
西側からやって来る人間達は、放たれる銃弾の嵐をなんとかかいくぐって竜人に近付く。対称的に東側からやって来る人間達は、ある程度近付いた所で長銃を構えて銃弾を放つ
「ハッ!」
「「「ギャッ!」」」
竜人は近くにいた人間の頭に手をかけ、身を翻すように跳躍する。その為、竜人目掛けて放たれた筈の銃弾は、直線上の人間達に当たってしまう
「ハッ!ハアッ!」
「グッ!」
「ガッ!」
竜人が着地したのは人間達の中。このままでは格好の的…と思いきや、彼は格闘技で凪払う。銃身で殴るといった、荒々しい物なのだが
「なめやがって…!」
「死ねっ!」
「ッ!」
「「「ギャッ!」」」
東側から再び銃弾が放たれる。竜人は近くに居た人間を盾にし、自身も銃弾を放つ。その際、盾にしている人間のポーチから、手榴弾を数個スリ取る
「ッ!」
「「「なっ!?」」」
「…吹き飛べ!」
「「「ギャアアアッ!」」」
竜人は手榴弾のピンを抜き、人間達に向けて投げる。人間達は投げられた手榴弾に驚くも、逃げる事が出来ずに吹き飛んだ。何故なら、逃げる前に竜人の放った銃弾が手榴弾に当たり、誘爆したからだ
――――――――――――
―街 人間軍ベースキャンプ―
人間達が拠点としてる場所では、屈強な体格をした男が、自らの肉体に磨きをかけるべく訓練していた
「――ファイス大佐!"ケモノ"が街で反旗を翻しています!」
「ほう、特徴は?」
「種族は蒼い鱗をした"竜人"!身なりからして、この街の住人ではありません!」
そう聞いた途端、ファイスは持っていたバーベルの棒部分を折る。態度からしてやる気満々のようだ
「竜人…未だ喰った事の無いエサじゃねぇか!何としても連れてこい!」
――――――――――――
―街 某地点―
街のある地点にある建物の屋根に、黒髪に白のメッシュが入った人間が立っていた。彼の右手には、特殊な仕様の通信機が
「――此方"蛇使い"。各員、状況はどうだ?」
『此方"天秤"。"人馬"と共に戦闘に突入』
『此方"処女"。現在"金牛"が軽傷を負い、戦場にて治癒中』
『此方"双魚"。現在"白羊"が単身で戦闘中』
『此方"巨蟹"。現在戦闘に入った…ほら、行くわよ!』
『ちょちょちょ、待ってよ〜!』
『此方…"双児"…。現在、"磨羯"とはぐれてしまいました…!』
「…おい"磨羯"、"双児"の迎えに行け」
『…断る。足手纏いは必要無い』
「ったく…。続けろ」
『此方"天蠍"〜。現在街を探索中〜』
「もっと詳細に頼む」
『…此方"宝瓶"。現在"天蠍"と行動、街を探索してる。特に異常は見られない』
「了解。各自行動を続けて敵の本拠地に向かい、確実に叩け」
『あっ、此方"双魚"。少し気になる事があります』
「…どうした?」
『点々とですが、人間の死骸を見つけました。彼等の周囲や体内からは"銃弾"が確認されています。この銃弾は、人間達の銃弾とは全く違う物です』
「"俺達"以外にも奴等に対抗する奴が居るのか…。"処女"、占えるか?」
『ええ。…あら、イレギュラーが2人もいる』
「2人…?」
『1人は…あら珍しい、"竜人"じゃないの。まだ絶滅してなかったのね、同じ爬虫類族として嬉しいわ』
『なあ、竜って爬虫類だっけ?』
「さあ…まあ、トカゲっぽいから別に良いんじゃないか?」
『ウフフ…、貴方って可愛い。そして、もう1人は…』
――――――――――――
「ハアッ、ハアッ…」
竜人は息を切らしながら、街の中を走っている。集中力と警戒心を研ぎ澄まし、銃の構えを解く事無く辺りを見回す
そんな彼を狙って物陰に隠れている、1人の人間が居た
「へっへっへっ…!幾ら戦い慣れていても、死角から狙われたらたまったもんじゃないだろ…!大人しく喰われていれば、こんな目には会わなかっただろうに…馬鹿なケモノだぜ…!」
人間はそう言って、竜人に銃口を向ける。竜人は神経を研ぎ澄ませているというのに、人間には気付いていない
しかし、その人間も気付いていなかった。彼の背後から、ロングソードを構えた人物が近付いているのを…。そして気付いた頃には、人間は刺された
「ガッ!」
「ッ!?」
声を聞いた竜人が振り向くと、ロングソードが刺さった人間は地面に倒れ、人間の背後から1人の少女が現れる
ボロボロの布切れを身に纏い、朱色のショートヘアーをしたその少女は、無表情で竜人を見る。その姿からは、何らかの物悲しさを感じられる
「……」
「…お前が殺ったのか?同族同士で殺り合うだなんて、お前等も随分堕ちたものだな」
竜人はそう言い、少女に銃口を向ける。しかし少女は、銃口を向けられているというのに怖がらず、悲しげな声で言う
「…分かるよ」
「…は?」
「…私達人間は、貴方達獣人に酷い事をした。今更謝ったって、許してもらえないのも分かるよ…」
「…何が言いたい?」
「でも、だからって人間がみんな同じだなんて、何も知らないのに決め付けないでよ…!」
「…確かにそうだな。ソイツ等みたいな馬鹿な奴も居れば、お前みたいな人間も居るのは分かる。だがな、俺は人間も獣人も嫌いなんだよ」
竜人はそう言うと、引き金を引く。少女は瞬時に死体からロングソードを引き抜き、銃弾を弾き飛ばす
すぐさま竜人は少女に近付き、彼女の首を掴み身体を壁に叩き付け、銃口を突き付ける。少女は反撃しようとせず、苦しみ紛れに竜人に言う
「…私を殺したいなら、殺せば良いわ…。私なんかが生きていたって、誰も興味を示さないもの…」
「…興ざめだな。自虐的な奴を殺した所で、誰も得をしない」
竜人は冷めたような表情でそう言い、少女に向けている銃口を下ろし、少女の首から手を離す。少女は力無く座り込み、「ゲホッ!」とむせる
「…お前、名前は?」
「…"ノエル"、"ノエル・ルナティネス"。貴方は…?」
「"ジュリウス"、"ジュリウス・ソーレスト"。ノエル、お前は此処に居ろ。じきに人間共が救助に来るだろ」
竜人"ジュリウス"は弾倉に銃弾を詰めながらそう言い、その場を去ろうとする。その彼に、少女"ノエル"は叫ぶように彼を止める
「…待って、私も連れてって!」
「…何を言うかと思えば、なんだそれ?お前馬鹿か?獣人と共に行動するなんて、はっきり言って馬鹿の極みだぞ」
「そんなの、一番分かってる…。でも、私もアイツ等は嫌いだから…」
「嫌い?」
ノエルの発言にジュリウスは気になり、尋ねようとする。しかし、突如として彼を"頭痛"が襲いかかる
「…グッ!?あああああああああああああああああ!?」
「!?何…何なの一体…!?」
頭を抑え、叫びながら悶え苦しむジュリウスを見て、ノエルは突然起こった事に混乱してしまう
間もなくして、「ガチャッ、ガチャッ」と足具で歩く音が聞こえてくる。ノエルが音の聞こえる方を向くと、そこに居たのは白い鎧を身に纏った人物。右手をジュリウスに向けて開いている事から、恐らく犯人は彼だ
『薄汚いケモノが…、随分と手こずらせてくれる…』
「…その言い草、人間共の仲間か…グアッ!」
『邪魔だ』
「グッ!」
鎧の人物はジュリウスを殴り倒し、彼の背中を踏みつける
ジュリウスを踏みつけたまま、鎧の人物はノエルに向かって言い放つ
『探したぞ、"実験体"』
「……」
「…実験体…だと…!?」
『そうだ。彼女はレーヴァテイン司令官のお気に入りでな、易々と逃がしておく訳にはいかないんだ』
「…成る程な。だったら、テメェ等なんかに返すものかよ…!」
『…何を言うかと思えば、小賢しい事を!』
「ガッ!」
鎧の人物はジュリウスを蹴り、ジュリウスは地面を転がる
続け様に鎧の人物はノエルの首元を掴み、彼女の身体を浮かす
「グ…ウ…!」
『帰るぞ実験体、司令官がお待ちだ』
「…嫌…」
『…何?』
「…嫌!私はもう、あんた達の所には帰らない!」
『!?…正気か、貴様…!?』
「……!」
ノエルの発言にたじろぐ鎧の人物だったが、追い討ちをかけられるように背後から銃弾を浴び、ノエルを掴んでいた手を離してしまう。銃弾を放った人物はジュリウスだ
『ガッ!?』
「…返すものかって、言っただろうが…!」
「ジュリウス…!」
「行くぞノエル!」
「うん!」
なんとか立ち上がっているジュリウスの身体をノエルが支え、2人は立ち去ろうとする。しかし、鎧の人物が逃がす訳が無い
『待ちやがれ…ハアッ!』
「グアッ!」
「キャッ!」
鎧の人物はジュリウス達に向けて右手を開きく。すると爆発が起こり、2人は吹き飛ぶ
しかし誤算だったのか、爆発によって近くの建物も破壊され、その瓦礫が鎧の人物の目の前に崩れ落ちる
鎧の人物は『クソッ!』と吐き捨てながら瓦礫を退かそうとするが、その前に通信が入る
【――戻りなさい。貴方の役割はそこまで、後はこの街の進撃軍に任せても問題無いわ】
『…了解…ッ!』
鎧の人物は不満そうに承諾、舌打ちしながら瞬時にその場を去る
――――――――――――
ジュリウスとノエルは近くの建物の中に逃れ、息を潜めながら話す
「ジュリウス、大丈夫?」
「ああ…ったく、余計な物を引き受けちまった…!」
「…やっぱり、私なんかが居たら迷惑だよね…」
「ああ、そうだよ!…だが、今はそんな事を言ってる場合じゃ無いな…」
「…じゃあ」
ジュリウスは銃を構えながら、ノエルの質問に答える
「この街から出るまでの間だけだ、後は好きなように何処かに行け」
「…うん!」
「よし、じゃあ行くぞ」
そう言うと2人は建物から飛び出し、街を駆け出す