あなたは何歳?
ある時、母親の頭の上に数字が現れた。エロ漫画でよくある経験人数かなと一瞬思ったが、49なので普通に年齢だ。
父親も49。やっぱり歳だ。人の歳が分かったところでなぁ⋯⋯
とりあえず外に出てみる。
誰もいない。まぁそうか、俺の家の前に人がいることなんて基本ないからな。近所のジョニーが犬の散歩してるか、遠所のマイケルが隣家に里帰りしてるか、中所のデスマイケルがサイクリングしてるかぐらいだもんな。
大通りに出ると、バス停におじいさんがいた。頭の上に数字があるが、向こうの歩道なのでよく見えない。概念系のやつなのに視力必要なのなんなんだよ。
渡って確認してみると、89だった。
「こんにちは」
声をかけてみる。
「おやおや、こんにちは」
「暑いですね」
「ほんとにねぇ⋯⋯」
さすがにいきなり89歳ですかなんて聞けるわけないからな。
「ところで、89歳ですか?」
違うんだ。フリとして言ったわけじゃないんだ。
バスが来ちまったんだ。
「そうじゃよ」
やっぱり!
「で、何?」
「えっ」
「で何なの? いかんの? 89歳」
「いやそんなことは⋯⋯」
「89歳いかんのか? ったく最近の若者は⋯⋯」
おじいさんはそう言ってめちゃくちゃ俺を睨みながらバスに乗り込んだ。
なんなんだあのジジイ、ヤバすぎるだろ。ダメなんてひと言も言ってないのに、ヤバ⋯⋯
「あ、乗りません」
バスがずっと待ってたもんで。
さて、どうしようか。特に行くとこもないからなぁ。学生でもないし、仕事もしてないし。ニートってわけでもないけど。まぁ、簡単に言うと泥棒だな。親には表向きにはニートで通してるけど、親が仕事行ってる間にバリバリ空き巣やって金目のもの売ってめっちゃ豪遊してる。
なんでこんなにベラベラ喋るのかって? それは俺がこうして1人で脳内で自慢するのが好きだからだ。だって、捕まったこともないし、めっちゃ儲けてるんだぜ? 自慢したくもなるよ。でも現実世界で自慢したらすぐお縄だ。だからこうして⋯⋯あ!
やば、あのおばさん1446じゃん。1446歳なわけないよな? 百歩譲って1446歳がこの世にいたとして、それはおばあさんの見た目してないとおかしいもんな。
1446⋯⋯気になるなぁ。
「こんにちは〜」
えっ、向こうからいきなり!? このご時世で知らない相手である俺に挨拶を!?
「こ、こんにちは」
どういうつもりだ⋯⋯? もしかして俺が空き巣だってことがバレてるのか? 前に入った家の人が、俺が空き巣だと分かった上で話しかけて反応を探ってるのか⋯⋯?
「私、いくつに見える?」
いきなり!? こいつヤバ!
時代が時代なら口裂け女みたいに都市伝説になってるぞ。
あ、ちょっと都市伝説思いついた。
マスクの女っていうのは口裂け女と同じなんだけど、「私いくつに見える?」って聞いてくるの。
で、マスクしてると人って若く見えるから、若めに答えちゃうのね。でも実際はもっと行ってるから、マスクを外して「これでもぉ!?」ってシワシワの口元を見せて相手の口をハサミで切るんだコレやってることほぼ口裂け女じゃん!!!!!
「いくつに見える? って聞いてるんだけど」
しまった、完全に自分の世界に入ってた。その上創作までしてた。
それにしても、いきなりこんなこと言われたの初めてなんだよな。もしかしたら普通に見た目の感じから予想して答えても絶対当たらないような年齢なのか? だから道で会う人に答えさせてるのか?
「1446歳? ⋯⋯なんちゃって」
「!?」
おばさんは明らかに動揺していた。ふざけた数字を言われて調子が狂ったとかそんなレベルではなく、1446歳なのをビタ当てされた驚き方をしていた。
「⋯⋯どういうことなの」
「いや、これはその⋯⋯」
「あんた、まさか組織の⋯⋯」
「組織?」
「いえ、なんでもないわ⋯⋯それじゃ」
なにこれ? 映画の冒頭?
にしても、どう見ても1446歳には見えなかったけどな⋯⋯いや、1446歳の見た目知ってるわけじゃないけども。
組織、か⋯⋯。この後その組織に狙われたり、スカウトされたりするんだろうか。
あ、向こうから男の人が来てる。めっちゃ黒ずくめなんだけど。怪しっ。さっきの人が言ってた組織ってこんな感じの奴らがいたりするのかな⋯⋯
ん?
(目ごしごし)
⋯⋯ん?
(目ごしごし)
!?
頭の上に「組織」って書いてあるんだが。数字置き場じゃなかったのかよ。
いやちょっと待てよ⋯⋯? もしかしたら⋯⋯
「あの、すみません」
「なんですか?」
「ご年齢って⋯⋯」
「あー、いくつに見えます?」
黒ずくめだけど普通に会話できる人でよかった。
「⋯⋯組織歳?」
「!?」
男は明らかに動揺していた。ふざけたことを言われて調子が狂ったとかそんなレベルではなく、組織歳なのをビタ当てされた驚き方をしていた。
いや組織歳ってなんだよ。
「⋯⋯⋯⋯」
男は無言のまま、口から何かを取り出した。
で、それを俺の口に⋯⋯って何してんの!?!?!? こいつヤバいじゃん!!!!
なにこれガム???? キモっ!!
んでウンコくさっ!
あれ、なんだか眠気が⋯⋯Zzz⋯⋯
⋯⋯ん? ここどこだ⋯⋯?
「フン、やっと目を覚ましたか」
誰だ? どこから声が⋯⋯
あ、なんか右隣のベッドで今起きたらしき人と黒ずくめの男が喋ってる。俺の番まだっぽいからもうちょっと目閉じとこ。
「お前は組織に選ばれたのだ」
「そ、そんな⋯⋯」
俺も選ばれたのかな。
「これからお前は組織の一員となり、悪と戦うのだ」
「そ、そんな⋯⋯!」
俺も組織の一員となり、悪と戦うのかな。
ていうか、黒ずくめなのに正義側なんだ。コナンのせいで先入観がありましたわ。んで隣の人「そんな⋯⋯」しか言ってないやん。
「それでは歓迎する。俺についてこい」
「分かった」
俺も後でどっか移動するんだな。んで「そんな⋯⋯!」の次が「分かった」なことあるんだ。
2人の足音が遠くなっていく。どこへ行ったんだろうか。
2人とも心配するだろうな⋯⋯
あ、この場合の2人っていうのは両親のことね。
正義の組織とは言ってるけど、うんこ味のガムで眠らせて拉致するような奴らだからな。
2人の足音が戻ってきた。
あ、この場合の2人っていうのはさっき隣で話してた2人⋯⋯なんで2人!?
ていうか寝てるフリしないと!
⋯⋯なんで?
なんとなく、か?
なんとなく今は寝といた方がいい気がするんだろうな、多分。さっきから起きてたって思われるとなんか恥ずかしいし。「え? 起きてたの? 寝てるフリして聞いてたってこと? じゃあ説明いらないね、さっき隣の人に言った通りです」ってなったらなんかヤだもんね。
「⋯⋯寝てるな」
足音が左隣のベッドのほうへ行くのがわかる。
止まった。
「ようやく目が覚めたか」
あ、左の人も起きてんだ。
「お前を組織に引き入れることにした」
「やっぱりか」
もしかしてこの人もさっきから起きてた?
「お前はこれから我々の仲間となり、使命を果たすのだ」
「だよな」
何こいつ!? さっきから起きてたことにバツの悪さを感じてないってのか? なんで恥ずかしげもなくそんな返答が出来るんだ⋯⋯!
「お前面白いな」
右隣の人の声じゃないか!? もしかしてもう組織の一員になったから、そっち側の人間として左隣の人のところに一緒に来たの!? もうそんな馴染んでるの!?
ていうか、面白いって言われてんじゃん。俺なんてなんとなく寝たフリしちゃったのに。俺どうすりゃいいの⋯⋯右の人は普通に済んで、左の人は起きてたことバラしながらも一目置かれてて、俺は⋯⋯
「おい、そろそろ起きてるだろ。さすがに」
これ多分俺に言ってるよな。声の近さ的にそうだよな。どうしよう、今目開けたら寝たフリしてたのバレるよな。どうするのが正解?
「ていうか、俺が起きた時にはもう起きてたんじゃね? 寝たフリしてるんじゃ」
左のヤツめ、余計なことを⋯⋯!
「いや、それどころか俺より先に起きてたりして」
右のヤツまで!
「まあまあ2人とも、本人の前で言ってやるな。起きてるんだとしたら聞こえてるんだから。⋯⋯プッ(笑)」
3人でバカにしやがって!
もういい、二度と起きん! 俺抜きで悪と戦えばいいわこんなヤツら!
「なぁ、起きてるんならもう目開けてくれよ〜。そろそろ薬が切れる頃だっていうのは2人のやつで分かってんだからさ〜」
マジかよ。
「寝たフリしちゃった手前、起きるに起きれないんじゃない?」
その通りだよ。クソ!
「あと今の会話も聞いてるだろうから怒っちゃってるよ。『もう二度と起きん!』とか心の中で言ってるかもよ(笑)」
コイツら、マジで嫌い!
「多分もう溝に入っちゃってるんだと思う。小学生の頃に居たじゃん、閉じたら二度と開かない貝みたいな子」
「いたわ〜(笑)」
もう⋯⋯!(´;ω;`)もう!
「まぁ、お前らの言う通りだな。埒が明かないから俺たちだけでやろう。よし、お前は宇宙戦艦に乗って奴を砲撃、お前はガンダムに乗ってコイツを援護してやってくれ。お前らの体には後で防御力最強のバフをかけてもらえるから、死ぬ心配どころか痛みすら感じることはない。存分に戦いを楽しんでこい!」
「「ラジャ!」」
どういうことだよ!
こっちに都合が良すぎるだろ! 俺もやりてーよ! 俺にやりたくさせるために嘘ついてるとしか思えねーぐらい好都合な戦いじゃん!
ていうか、相手ってあの1446歳のおばさん⋯⋯? あのおばさんに、宇宙戦艦とガンダム⋯⋯? そんなに強いのか? そんなに悪いことをしたのか⋯⋯?
「ところで、ターゲットはどんな奴なんだ?」
「1446歳の女だ」
「1446歳! やべーな!」
この組織には組織歳の奴がいるぞ。
「で、悪というのは? 何をやったんだ? その女は」
「生きすぎた」
え?
「生きすぎた?」
「ああ、生きすぎは罪なのだ」
「そうなの?」
「生命のバランスが崩壊してしまうからな」
「そんなもんかぁ」
組織歳の奴は生きすぎじゃないのか? 人間で言うところの何歳なんだ?
ていうか、あのおばさん何もしてないのかよ。ただ生きすぎてるってだけでめっちゃ硬そうな巨大な2つに殺されるのか。
んなこと、許せるわけねぇよな⋯⋯
いざ! 開☆眼!
イヌ サル キジ
( 'ω') ( 'ω') ( 'ω')
なにこれ?
こいつらイヌ歳とサル歳とキジ歳なの? そんなことある? 1人は元々組織にいたヤツで、2人は俺と同じようにうんこガムで連れてこられたはずだろ? なんでこんな桃太郎チックな3人なんだ? どのみち俺の入る余地なかったじゃん。
いやちょっと待てよ? 俺の頭の上にモモタロウって書いてある可能性もあるのか? でも俺絶対モモタロウ歳じゃないんだよな。
「目を覚ましたようだな」
今目覚めた体でやってくれるんだ。
「自分の顔を見てみろ」
そう言って男は手鏡を差し出してきた。俺の心の中見えてんの?
でもま、これで分かるからいいか。俺が何タロウなのか⋯⋯
鮭
( 'ω')
基準を教えてくれよ!!!!
それとも俺が知らないだけで俺は鮭歳なのか? 俺の生きてきた35年は夢だったってのか? 空き巣歴27年は妄想だったってのか!?
「お前は竹馬に乗れ」
キジが阿部寛の「お前は東大に行け」のポーズで言ってきた。なんで俺だけ竹馬なんだよ。2人に比べて弱すぎるし乗るのに練習がいるだろ。
いやそもそも! 俺はおばさんとは戦わん!
「俺は竹馬に乗らん!」
「え、なに? おたく天邪鬼?」
「お前らの仲間にはならねーって言ってんだよ」
「なんで? 木村が噛んでたガム口に入れたから?」
「⋯⋯そうだよ!」
おばさんの話するまでもなくガムだけで事足りたわ、逆志望動機。んでアイツ木村って言うんだな。覚えたぞ。
「うんこ味のガム食わせやがって⋯⋯」
マジで許せん。余計に燃える。おばさんを守ることよりも。
「うんこ味? なに言ってんのお前」
「お前ら組織が考えたことなんだろ? うんこ味のガムで気絶させて拉致するって」
「いや、俺たちは超即効睡眠薬入りガムを柔らかくして口に入れてるだけだが」
「じゃああのうんこ味はなんだったんだ!」
「木村の口臭⋯⋯?」
「木村の口臭!?」
「うんこかは知らんけど、けっこう臭いって有名」
「嫌だな、自分の口臭が有名な組織。木村かわいそう」
「木村かわいそう」
「木村かわいそう」
イヌとサルがそう言いながら黒ずくめの衣装を脱ぎ捨てた。もしや⋯⋯!
「2人とも、俺の気持ちが届いたのか!?」
「いや、暑くて」
「うん、これけっこう暑いんだよ」
「なんだよ! 木村かわいそうって共感したから組織辞めようとしたんじゃないのかよ!」
「木村はかわいそうだけど、木村も全く悪くないわけじゃないじゃん?」
「そうそう、歯磨いたりケアしたり、やれることはたくさんあるだろ」
「ぐうの音も出ねぇ⋯⋯」
そもそも俺はなんであんなキモいことしてきたヤツを庇ってたんだ。
「まぁ、とりあえずついてこい。ボスに会わせてやる」
キジが俺の手を引いて言った。3人相手じゃ分が悪い。ここは大人しく言うことを聞くしかないか⋯⋯
「分かった。でも手繋がなくても大丈夫なんで、離してもらっていい?」
「あ、はい」
一瞬、空気がピリッとしたような気がした。
「やっぱ繋ごっか」
俺は空気が悪くなるのが1番嫌なので、キジに手を差し出した。
「いや、いい」
あ、怒ってるっぽい。
「今度はお前が溝に入ってんじゃ〜ん(笑)」
「手繋いでもらえなかったぐらいで拗ねんなよ〜(笑)」
「こら2人とも、先輩をバカにするんじゃない」
俺は何を言ってるんだ。敵の組織なのに。
でも、やっぱりこういう雰囲気になるのが1番嫌だから、だから俺は⋯⋯
「いや、拗ねてるとかじゃなくて。べつに最初から手繋ごうとしてたわけじゃないしマジで」
ああ、これは拗れるやつだ⋯⋯
「ちょっと『こっち行くんだよ』って教えてあげようと思っただけで、ボスのとこまで手繋いで行こうとか全く思ってなくて」
「ごめんな⋯⋯」
「いやマジでなにが? 本当にそうだからそう言ってるんであって、手繋ごうとはしてないんだって」
必死に誤魔化そうとして⋯⋯心臓がギュってなる。
「手、繋ご? な?」
「いらんいらんいらん、マジでいいって」
ここまでとは!(´;ω;`)保育園の頃の俺を見てるようだ! ううう!
「俺が繋ぎたいんだって。な、いいだろ?」
「気遣ってくれてるのかもしれんけど、本当に、マジで、神に誓って手繋ごうとしたわけじゃないから」
神に⋯⋯!? てことは、本当に⋯⋯
「そうだったのか⋯⋯」
「ずっと言ってんじゃん」
「ごめん」
「いいよ、過ぎたことだ。ボスが待ってる、行こう」
「ああ」
結局手を繋いでボスのところまで行った。イヌとサルはヒソヒソなんか言いながら笑ってた。知らん知らん、勝手に笑っとけ犬畜生と猿畜生め。
と思ったけど、イヌサルであることをバカにしだしたら俺はどうなる? 鮭じゃん。もうやめよ。
ボスはめっちゃ高いところでめっちゃカッコイイ椅子に座ってた。
「あれがボスだ。かっこいいだろ」
「ごめん、遠くてよく見えん。椅子がカッコイイのは分かる」
「おまっ、ボスになんてことを!」
いや実際遠いんだから仕方ないだろ。頭の上もなんて書いてあるか見えないし⋯⋯
「苦しゅうない。近こう寄れ」
あ、ボスこういうタイプなのね。にしては声けっこう若そうだけどな。
「では、失礼して」
階段を上っていく。
徐々に鮮明になる頭上の文字⋯⋯いや、数字だ!
さて、気になるその数字は⋯⋯
25
( 'ω')
歳下かよ!!!
いや鮭歳が25より上なのかは分からんけどさ。
んで組織歳とかキジ歳とかいる組織のボスなのに頭上は普通年齢(なんだよこの言葉)なのね。
「⋯⋯近こう寄れ」
見えたからもういいんだけどな。
「はい」
せっかくだからカッコイイと評判のお顔を近くで見てやろうじゃないか。
鮭
( 'ω')フ、フツ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
普通すぎワロタ。俺と変わらんやん。じゃあ俺もカッコイイってことでいい?
「もっと近こう寄れ」
これ以上!?
見れば見るほどフツ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
てか近すぎない!?
「近こう寄れ」
マジで言ってんの!?
「んでワシの膝に座れ」
え⋯⋯
トコ⋯⋯トコ⋯⋯
ちょこん
イヌ、サル、キジが驚いたような顔で見ている。
「ボス、何やってるんですか⋯⋯?」
「わからん」
分からんのかい。
「あの、俺はいつまでこうしてれば⋯⋯?」
「いつまで⋯⋯?」
???
え?
「我が組織は自主性が大事なのだが」
んなこと言われてもなぁ。
「もっと自主性見せてくれないと最終面接厳しいかもよ?」
え? さっきのベッドのところで一旦一員にさせられたんじゃないのか? 最終面接って、全部で何個やるつもりなんだ!?
「それとも、仲間になるつもりがないのかなあ?」
さっきまで殿様みたいな喋り方だったのに、どんどん嫌な上司みたいになってきてるな。まぁ泥棒しかしたことないから実際の上司は見たことないけど。
「つもりがないなら、命は要らないよねぇ」
「えっ」
マジ? こんなヤバい奴なの?
「要らないよねぇ⋯⋯?」
「い、いるっす⋯⋯」
「あ、要るんやね。おけおけ」
え? もしかして命要るかどうか聞いただけ? そんな質問されることあるの?
と思った0.3秒後、壁がドゴャァン!と崩れ、1446歳のおばさんが現れた。
「助けに来たわよ」
「どうしてここが!?」
「あの時お尻に発信機を仕込ませてもらったの」
「なんてことしてくれてんだよ!」
「で、財布を拝借して受信機に改造したの」
「スリじゃねーか!」
財布盗られてたの全然気づかなかったわ。
にしても、敵が来てるのにみんな⋯⋯あ、イヌサルキジが瓦礫に埋もれてる⋯⋯
「ボス、正々堂々とやるわよ」
「よかろう。そやつら3人を倒した女とあれば、このワシの敵として不足はない」
3人のうち2人は今入ったばっかだけど強さとか分かるのかな。んでおばさんもコイツのことボスって呼ぶんだ。
「はぁ〜〜〜〜〜〜」
おばさんがなにやらパワーを溜め始めた(っぽい)。
「小畑式除霊術奥義・陰行殺!」
なんかカッコイイ!!!!! 波みたいなのが!!! 波みたいなのが!!!! んでおばさんの名前小畑なんだ。おばさんじゃなくておばたさんって呼ばなきゃ。
あれ、ボス笑ってるぞ!? 波みたいなのが来てるのに!?
「フフ⋯⋯効かぬわ!」
波みたいなのを食らってもノーダメージっぽいボス。
「そんな⋯⋯私の奥義が⋯⋯」
「フフフ、なぜ効かぬのか教えてやろう」
「教えて教えて!」
なんか緊張感ないなぁ。
「それはな」
「うんうん!」
おばさんのリアクション、すごいなぁ。
「ワシがオバケじゃないからだ!」
「(゜ロ゜)ナン!」
確かに、除霊がなんちゃらとか言ってたもんな。よく考えたらなんでおばたさんはコイツに除霊の技撃ったんだ?
ていうか、「ナン!」て。インド屋でナンのおかわり頼む常連かて。
「降伏するがよい。こちらには宇宙戦艦とガンダムと竹馬があるのだぞ」
あれで全部なんだ。ていうか本当にあるんだ。1番に目覚めてたら宇宙戦艦乗れたのかな。
いや、3個ってやっぱおかしいよな。全然人数分なさそうじゃん。少なくとも木村も何かに乗るはずだろうし。木村はいつもなにに乗ってるんだ⋯⋯
「ボス」
「なんじゃ?」
「木村はいつも何に乗ってるんです?」
もうなんか、普通に聞くわ。
「木村は臭いから基本外回りだ」
「え、木村かわいそ」
「木村かわいそう」
「木村かわいそう」
瓦礫の中から立ち上がったイヌとサルが服を着ながら言った。着脱の合図なのかね? でもコイツらあんまり木村かわいそうって思ってないんだよな。自業自得みたいな言い方してたし、嫌いだわコイツら。
いやいや、よく考えたら木村は俺にうんこガム食わせてここに連れてきたヤツじゃないか。何回このくだりやるんだよ。
「おいそこの2人、宇宙戦艦とガンダムに乗れ。ワシは竹馬に乗る」
「「はっ!」」
ボス竹馬でいいんだ。弘法筆を選ばずってこと?
ってちょっと待って!? 竹馬金ピカなんだけど!? 見た感じメッキじゃなさそうだし、そもそも音からして重量感あるし、マジの金かも! やべー! これ億行くやつじゃん! どんだけ儲けてんだようんこガム団!
「ボス、ちょっとその竹馬見せてもらってもいいですか?」
「お、乗りたいのか?」
「はい、まぁ⋯⋯」
ボスは快く渡してくれた。俺がやる気になったのが嬉しかったのだろう。親みたいだな。
親⋯⋯
父ちゃん⋯⋯母ちゃん⋯⋯
ホームシックになりかけてるわ俺。はやく帰んねーとな!
余裕で億は行きそうな竹馬を手にした俺は韋駄天のように走った。手にしたものの価値によって逃げ足が速くなるのは泥棒の性なもんでね。
とか脳内で独り言いいながら1秒で800メートルぐらい走ったところで行き止まってしまった。門番が5人いるのだ。
ツナマヨ
( 'ω')逃げられると思うてか
フン、逃げ果せてやるぜ!
日高昆布
( 'ω')ここで灰にしてくれるわ
え? ほのおタイプってこと?
紀州南高梅
( 'ω')ちんこかゆい
黙ってかけよ。ていうか、もしかしておにぎり軍団? 俺の本来の仲間たちってこと⋯⋯?
紅鮭
( 'ω')おれも南高梅のちんこかゆい
紅鮭おるんかい。俺の入る余地ねーじゃん。んで隣のヤツのちんこかゆいのは病気だろ。何病か分からんけど。
ブルーハワイ
( 'ω')ぺっちゃんこにしたる!
きみ居づらくない?
「あ、午後ティーおいしい無糖!」
「「「「えっどこどこ!?」」」」
俺が適当なほうを指さすと、おにぎり4人は何もないところを探り始めた。
「これで1VS1だ」
「おにぎりの奴らめ⋯⋯!」
悔しがるブルーハワイを竹馬でボコボコにして、俺はアジトを後にした。
で、帰り道ですれ違った人全員の頭に矢印があって、その通りに進んだら家に着きました。いやぁ〜、たまたま↘歳とか←歳とかの人が多い地域で助かったなぁ。
テレビをつけると、宇宙戦争のニュースがやっていた。1446歳のおばたさんVS宇宙戦艦&ガンダムは、おばたさんの勝利で幕を閉じたらしい。
なんでも、全ての国家権力がおばたさんに味方してくれたのだとか。やっぱり組織は悪の組織だったんだな。悪の組織ほど自分たちのこと正義正義言うからな。まぁ本人たちにとったら本当にそうなのかもしれないけどな。
「ただいま〜」
母ちゃんだ。
「おかえり」
「おっ、なにそれ」
「これね、金の竹馬」
「ほぇ〜、すごいね」
「すごいよ。ところでさ、母ちゃん」
「なんじゃね」
「俺を産んだのっていつなの?」
「あー、懐かしいね〜」
鮭歳はいったい何歳相当なのか⋯⋯
「忘れもしない。あれは鮭年前のよく晴れた日だったわ」
鮭年前ってあるんだ。
「49-鮭歳だった私はブルーハワイマタニティクリニックの分娩室で⋯⋯」
49-鮭歳。
もしかして俺、門番の親戚のとこで生まれたの?
でも頭の上の字は名前じゃなくて歳だもんな。俺の名前鮭じゃないし、木村は組織歳だしな。俺が便宜上呼んでただけか。
だとしたらブルーハワイマタニティクリニックって名前なに? ブルーハワイが好きな院長だったのか? その院長の頭の上なんて書いてあるんだろ。
「これがその時の院長よ」
ハイパーグッドタイミングで院長の写真が出てきた。頭上には「マルハン新守山駅前店」と書いてあった。
今マルハン新守山駅前店歳なのか、それとも今はマルハン新守山駅前店+鮭歳なのか、どっちなんだろね。




