初めて見えた光
第一章1話
---俺が10歳になった日、両親は冒険者殺しの容疑をかけられ処刑された。
だが、冒険者が殺された時間には俺と3人で家にいた…。
冤罪だ。
殺された理由は分からない。
今はただ行き場のない憎しみだけが腹の底からこみ上げてくる。
……俺は誰を憎めばいい?冤罪をかけた冒険者か?それとも腐りきってるこの世界か?
いや両方だ
絶対殺す
13歳の誕生日いや、父と母の命日に俺はそう決意した。
「ハアァァァァァァ!!」
パキィィィン!!
剣が折れた音が辺り一面に広がった。
「あれ?スライムってこんなに強いのかよ!!俺の靴くらいのサイズのくせに!!」
スライムは俺を見つめながら、周囲の草木が風でなびいているようにゆらゆらと揺れ動きながら笑っている
友達になりたいのか?いや嘲笑ってる、耳の直ぐ側で鳴く蚊なんか比にならないくらい不快な声で。
「魔法なら瞬殺だろ!」
ここは平原で周りに木があったが、俺はお構い無しに炎の魔法を使った。だが、ロウソクからでる火よりも小さく1秒も持たなかった。
「ピィィィィィィィ!!」
いかにも弱そうな声を出しながら、俺の足めがけて突進してきやがった。俺は避けるどこらか動くことすらできず、こいつの憎たらしい顔面が俺の足に直撃した。
その衝撃で頭から倒れてしまった。
「動け……!」
全身に力を限界まで入れているはずなのに、指先すら動かすことができない。おまけに魔力はさっきの炎で全部使ってしまったみたいだ。
俺こんなところで…しかもスライムなんかに殺されるのか?
目を閉じかけたその瞬間
プチッ
何かが潰れた音がした
目を開けるよりも先に盛大な男の笑い声が聞こえた。
「ッッ………ハハハハ!!おいおい、こんなスライム剣で少し突けば簡単に討伐できるだろ?それともお前、親がクソ雑魚のスライムなんじゃねぇの?」
また笑い声が聞こえた。鼓膜が破裂するんじゃないかってくらい大きく、聞くに堪えない不快な笑い声が。
……俺冒険者向いてないんだな、スライムと戦ったのもこれが初めてじゃない。4回目だ、しかもそのうち2回は柄を持つことも魔法を使うこともなく逃げた。3回目は石を2回投げ逃げた。
もう、冒険者なんか目指すのやめて馬の餌やりでもして生きていこう………
「でも、お……」
どこからかどす黒い声が漏れかけたそのとき、『バキッッッッ』という大きな音がした、剣が折れたときと同じくらいの。
「あなた!そこで何をしているの!?」
力強くも優しい女性の声が聞こえた。
「痛っっ………………………何すんだクソ野郎!!」
「クソ野郎はどっち!?これ以上怪我したくなかったら早く消えな!!」
「チッ!!」
男は大きな舌打ちをした後、巨人のような大きな足音を鳴らしながらその場を去った。
「大丈夫?立てる?」
彼女はそう言いながら手を差し伸べてきた。俺にはその手が今まで期待したこともなかった希望に見えた。
俺は力を振り絞って、手を借り立ち上がった。
「ッ……」
やはりまだ頭が痛い、少し耳鳴りも聞こえる。
「大丈夫!?私が所属するギルドの家が近くにあるから、そこに行こう」
「あ、ありがとうございます」
普通の人なら、恥ずかしくて死にそうになことなのかもしれない。
でも、俺にとって今までで1番幸せを感じることができた瞬間だった。