5話<一難去って>
相手の掌底打ちがこちらめがけて飛んでくる。攻撃をかわしたシュバルツだったが展開は防戦一方で相手にこれといった攻撃を打ち込めていない。というか打ち込むことができないというのが正しい表現か。
「逃げ回っても無駄だおとなしくここで潰されろ。」
男は一切の隙を見せずに打撃を打ち込んでくる。回避できずに手で拳をガードするがそもそもの威力が強すぎてガードなんてできない。シュバルツは必死に透明化を駆使しながら戦っているがやはり激しく動き回ると狭い通路で戦っているために壁などに当たってしまいそこから動きを読まれ攻撃される。当たらずに攻撃しようにも相手の天性の才能なのかどこが自分の隙になるかを的確に分析し気配を遮断しているシュバルツを狙ってきているのだ。シュバルツの能力の強さは見えないところからのヒット&アウェイであったがこいつにはまるで効果がない。同じ人間のはずなのに、まるで子供が力士に精一杯張り手で押し出そうとしているような感覚をシュバルツは覚えた。そしてとうとう
「ガッ!」
思い切り拳を胸にもらってしまう。その瞬間意識が明滅して今にも倒れそうになる。しかしそれを許す相手ではなかった。俺を相手は手探りに持ち上げるとそのまま床に叩きつけた。肺から空気が一揆に絞り出され呼吸がうまくできない。
「ノワール…ブラン」
今にも閉じてしまいそうな目の先には俺を守ろうと戦ってくれた二人がいる。実は護衛は複数人いたのだ。その内のこの男以外は撃破できたのだが、圧倒的な強さを持つこの男に能力を発動したもののとてつもない早さでノックアウトされてしまったのだ。幸い今は死んでいないがこの男が俺を気絶させたあと命を奪わない保証はなかった。しかし、こいつも雇われている身であろう。そのため上の指示次第では生かされる可能性はある。それにかけるしかないぐらいにこの戦闘は絶望的なものだった。
「悪いな俺も仕事だからよ。」
男は謝罪すると俺に馬乗りになると顔面に狙いを定めて拳を握りしめる。そのときだった。突然の発砲音が鳴り響き男が振り替える。
「お前ら…」
向こうにはヒカリを除いたメンバーが立っていた。そして先頭には拳銃を構えるサングラスの姿があった。
「借りはかえすぞ…!」
そういったサングラスは連続で発砲する。しかしその弾はすべて命中したにも関わらず背中付近にあたり貫通することなく床に薬莢が落ちる音が響く。
「気を付けろ…そいつは筋肉のリミッターを外せるんだ…」
シュバルツは最後に力を振り絞って情報を残すとそのまま気絶する。それと同時能力も解除され血まみれのシュバルツの姿が露になる。
「こいつらだけじゃなかったのか。ニヨの奴はいったいなにやってやがる…」
ぶつぶつと独り言をしゃべったあと男は立ち上がりこちらに向き直った。そして拳を握りしめると足にものすごい力をこめて突撃してきた。ここは一本道の通路で横に回避は不可能。サングラスはとっさに明日香と位置を変える。
「すまねぇ任せた!」
「今回はサングラスの能力は役立たなそうだしね、でも今度買い物付き合ってもらうから!」
そして明日香は腕を前に振りかざし
「クォーツ!」
と叫ぶ。その瞬間全面に白い鉱物のようなものが展開され相手の拳をガードすることに成功する。そして明日香はさらにもう一度
「クォーツ!」
と唱えると明日香の体を鉱石が覆う。
「これは?」
初めて能力を見るヴァイスがサングラスに視線を向ける。
「アイツは指につけている指輪の宝石を消費することによって自在に鉱石を出せるんだ。鉱石には一から十までのランクがあって指輪の宝石の消費量もランクが高くなるほど当然多くなる。基本的にはランクが高い方が硬くて効果を発揮しやすいが物は使いようとはいうからな。まぁ見てろって。」
サングラスは顎で明日香の姿を見るように指示する。反撃を開始した明日香は地面に片手だけおくと勢いをつけ足蹴りを放つ。足にも纏っていた鉱石事相手に直撃し相手が後ろに転倒する。しかし相手も相手ですぐに立ち上がるとこちらにむきなおる。
「思ったよりタフみたいね。」
「そちらこそやるではないか。」
二人は両者共にぶつかり合いお互いの指と指を交差させ押し合いのような状態になる。両者の足元にはものすごい力がかかっているため床にひび割れが見えた。明日香は馬鹿力の相手に対処するため足と背中などに鉱石の支えを作り押し負けないようにしていた。
「これは私達では太刀打ちできませんね」
「…」
1人は巨漢の男に対してもう片方は小柄なゴスロリ服をきた少女なのだから一見すると大人が子供と遊んで上げているように見えなくもない。実際は殺伐とした戦いではあるだが。サングラスたちは向こう側に寝転んでいる。シュバルツの安否を確認したかったがまったくもってこの二人に近づくことができずに様子見に徹するしかなかった。
「この押し合いでは押し負けるわね…だったら!」
少女の体に纏っていた白い鉱物が突如として色を帯びて黄色になる。しかし押し合いには一見なんの変化もない。しかも徐々に明日香の方が押されている。明日香の支えになっている鉱石がいやな音をたて始めている。
「まずいのでは?」
ヴァイスは焦るが自分の能力ではどうすることもできない。このままではジリ貧だ。サングラスの方も悠々と解説していたものの若干冷や汗をかいていた。すると明日香は突然足の力を抜いた。当然明日香は男に押し倒され馬乗りにされてしまう。そしてそのまま男の拳が振り下ろされた。サングラス達は目を瞑ったがいつまでたっても明日香の悲鳴は聞こえない。寧ろいたがっているのは男の方だった。男の手の甲には鉱物が突き刺さっており出血していた。明日香は相手に笑いかけながら
「これ以上やってもそいつがめり込むだけよ。」
と告げ逆に明日香は男の顔面にめがけて黄色い一撃をぶちこんだ。すると男の顔面にも鉱石が突き刺さり男が後ろによろける。そこを見逃さず明日香は馬乗りの状態から抜け出す。
「筋肉は鍛えられても柔肌は鍛えられない。特に顔なんかはね。」
明日香は悠然と口にするが男はまだたおれる気配はないようだった。
「どうしようもないタフ野郎ね…でもこれで終わり!」
少女は小柄さを生かし男の真下に潜り込むと黄色い一撃を顎にしたから上へとぶちこんだ。
「おぉ…!」
どんなに屈強になったとしても人間の急所は変わらない。明日香は男がよろめいた一瞬の隙をついた。そしてその重すぎる一撃を貰い男は頭をガクガクと震わせたあと後ろに倒れ込んでしまったのだった。
「…」
「なにしてんの?シュバルツさん達を助けなきゃ」
あまりの光景にみいってしまったサングラス達は明日香にいわれ現実に引き戻される。そしてシュバルツのもとへとヴァイスが真っ先に駆け寄る。シュバルツは顔を首に指を当てると脈を計りそして、息を吐いた。
「大丈夫でした。二人はそちらに倒れているノワールさんとブランさんをお願いします。」
俺たちが同様に脈を計るとどちらとも息はあり安堵する。俺たちは1人ずつ負傷者を抱えながら研究所をあとにする。こうしてこの研究所絡みの任務は一旦決着するのだった。
「どうぞこちらへ。」
執事の服装をした女性に一室へ通される。そこは広い会議室といった感じで椅子が横に並べられておりそして壇上の上にスクリーンが設置されていた。私はここに来るのは初めてだったのでいったい内装はどんなものかと構えていたが蓋を開けて見れば、一般の企業が用いるようなものだった。ちなみにここに来るまで案内人に目隠しをされて通されたためいったいここがどこにあるのかさっぱり分からない。窓も存在しておらず地下なのか地上なのか上空なのかすらもだ。部屋を見回してみても誰もいる気配はなく自分だけがここにいるという状態だ。普通は客人をもてなすなら予め準備しておくものではないだろうかとも思ったが下手に口出ししてめんどくさいことになるのはごめんだったので黙ってとりあえず先頭の列の椅子に腰かけておく。しかし、しばらくしても誰も来ない。もしかして騙されたのではないかとすら思えてきた。さすがの私もここは一つ文句をいいたくなってきた。私は誰もいない部屋に対して呼び掛け始める。
「いい加減出てきて貰えないでしょうか?そちらとしても情報がほしいのは間違いないと思いますが。帰りますよ。」
しかし誰一人として反応はない。とうとう痺れを切らした私は扉の方へと向かっていき通路の方を確かめようとした。そのときだった。ドタドタと誰かがこちらに駆けてくる音が響き渡る。私は扉を開き相手の姿を確認しようとする。するとそこには息を切らした二人組の少女が立っていた。そしてその内の一人である白い髪の女が私を発見するや否や
「なんでかえっちゃうの!?」
とあわただしくこちらに駆け寄ってきた。女はこっちの手首を掴んでくると椅子に引き戻す。
「あのですね、人をまたしておいてそれはないと思うんですけど」
双方に契約を結ぶ関係ではあるが、その不自然な態度には謝罪して貰わなければ気が済まない。それを聞くと白髪の少女はもう片方のピンク髪の女を睨み付ける。
「マシロあんたまさか?」
ギクッと肩を跳ねさせるマシロと呼ばれた少女は腰を落として膝をつき額を地面にこ擦り合わせた。そして
「すいません…私の時計ずれてました…昨日壊しちゃって変えようとしたは良いもののその後の雑務ですっかり忘れて…その…すいません…」
と根暗な声で謝罪する。
「まぁマシロのドジはいつも通りのことですから、仕方ないでしょう。」
勝手に仕方ないで許されてたまるかといいそうになるが早く本題に入った方がこいつら相手には良さそうであるのと同時に送れたのは悪意によるものではないと分かったため、私は
「そろそろ本題に入りませんか?」
と呼び掛ける。それに気づいた白髪の少女はマシロを引っ張り上げてたたせると
「そうですね、あまりに遅いとアン様からいびられるし…」
白髪の少女は上司に怒られる事を連想し、急いで壇上にたった。
「ということで、本題を始めさせていただきます。例の件の進捗に関してお伺いしたいと思います。」
少女の質問に対しニヨは冷静さを取り戻すと
「被験体は6人の中から06を選抜いたしました。」
と白衣を整えながら言う。それを聞いた相手は驚いた顔になって
「一番期待値の低いアイツを?いったいなんで」
と司会口調をやめ壇上から飛び降り詰め寄ってくる。この少女はどうも感情の起伏が激しいようだった。
「落ち着いてください。」
私はジェスチャーで白髪の少女を落ち着かせると
「確かに他の被験者の方がエネルギー総量は大きかった。しかし、私の計算の結果あの本部の装甲を破壊することは不可能だと算出されました。なので私は現在の能力の高さではなく今後の成長見込みが高い彼女を選ばせていただいた次第です。」
ご理解いただけましたか、と
相手の顔を見る私に相手は頷き納得した仕草を見せる。
「でもさ…」
今まで黙っていた根暗にも関わらずピンク髪の少女は反論言いたげな様子だった。
「どうぞ」
と私が許可をすると少女は吃りながら話し始める。
「か、可能性があるってだけでさ…あの…ほら…異能力者の能力は1人一つなわけで…急激に能力の変化をもたらすのなんて本当に可能なのかなって…まぁ確かにこれはアン様の指示だから間違いないんだろうけどさ…私、バカだから…そ…そういうの気になっちゃって…あの…すいません…」
そしてそのままうつむいてしまった。すると女は納得したかのように頷いてから
「確かに良い質問ですね。その件に関して演算した結果、私の技術では不可能だということが判明いたしました。」
と訳の分からない事を言ってきた。
「は?」
私の淡々とした答えに白髪の少女が先程よりも詰め寄ってくる。
「どういうこと?あなたは彼女の成長の問題をクリアできるから選抜したんじゃなかったの?これじゃあ彼女を選んだ意味なんてないも同義だよ!」
上司に詰められる事をよほど恐れているのか少女はフラフラと地面に崩れ落ちる。それをピンク髪のマシロが支えた。
「早とちりしすぎです。」
ニヨはマシロに支えられながら立とうとしている少女に立てた指を左右に揺らしながら
「成長の問題に関してですが、不可能だと判断したのはあくまで私が対処したという場合です。なにも成長事態が不可能とはいってないじゃないですか。」
と付け加える。
「でも…いったい…どうやって…」
マシロの当然の疑問に私は指をたてると
「それはですね。」
と自慢げに語るのだった。
部屋は薄暗く照明は無数のスクリーンの発光によるものだけだった。ここは許可がないと基本立ち入れない場所なのだが、そこに1人の女が義手と義足をぶら下げてやって来ていた。
「最近の調子はどうだ。」
スクリーンに視線を合わせたままの中性的な見た目をした人物に背後から質問する。その人物に本来タメ口を効くことなど許されない行為であるはずだが女は躊躇なく、まるで学校の同級生感覚であった。当然回りからの視線が突き刺さっているが女はそんなものは意に介さず返答を待ち続ける。この女の性分を知っていた黒髪の人物はめんどくさそうにしながらも応答する。
「用がないのならとっとと支部に戻れ。」
手で追い払うジェスチャーをとる相手に女はニヤリと口角を吊り上げた。
「私は別に用もなくきたりしませんよ。」
女は思わせ振りな態度をとって相手の前で前屈みになる。
「もちろん司令はご存じですよね私たちが頭を悩ませている件について。」
「それがどうしたんだ?」
「もしかしたら敵は一向に解決しない事への不安による民衆達の暴動を狙ってるのかもしれませんね。」
女は司令の淡白な回答に義手を片方の手でいじりながら感想を告げる。司令ははっきり言ってこの女と取り合いたくない。だから女が何を言いたいのかは理解していたがあえて遅延させる。すると女はわざとらし何か思い出したような顔になってから
「気になったんですけど対応すべきなのは2件じゃないんですか。」
と司令の発言について訂正を行った。
「…あれは現状対処できないのは理解しているはずだか?」
ため息と共に返された言葉に女は
「分かってますって。司令がちゃんとその件を眼中においてるのかなって確認したに過ぎませんよ。」
と逃げ腰な本部を暗に批判する。回りからの視線がさらに厳しくなったが女はむしろ注目を浴びるスターかのようにピースをとったりしている。そんな女に司令は意に介さず
「結局本題はなんだ。何もこれだけを言いに引きこもりのお前がここまで来るとは思えないからな。」
相手が引き下がらないことを知った司令は諦めて用件を聞く。それを聞いた女はまってましたと言わんばかりの顔になると
「その件私達に任せて頂けないでしょうか?必ずやお役にたって見せますよ。」
事件の解決を引き受けると申し出る。その囁きをいつもなら無視していたところだが先程の通り民衆の不安が爆発する未来が迫ってきているのは事実だった。女の手を借りるのは尺だったが背に腹はかえられない。実際過去にも数件事件を引き受けては解決している。しかしだ。
「自信があるのは結構だがたかが一支部の貴様らに敵の正体が掴めるのか。」
司令は了承する前に確認をとる。今回はケースがケースだ。特別区のメンバーでさえ調査が難航している存在。この女とはいえ簡単に解決できるとは思えなかった。
「何言ってるんですか司令?これが始めてじゃないことぐらい分かってますよね?」
女は余裕の笑みで言った。
「余り期待しないでうことにする。後ひとつ約束しろ。状況は逐一報告するように。あくまでも私が指令だからな」
司令は釘を刺しながら結局最後まで女の顔を見ずに話を切り上げようと背を向ける。
「ありがとうございます。それで折り入ってお話しが。」
しかし女は司令の事付き合わせたいらしく続けて喋り続ける。
「まだ何か用なのか?」
司令は不愉快そうに眉尻を下げながら威圧する。だが女には全く効いていない様子で
「えぇ。」と短く切ってから
「例の少女に関してです。」と話を切り出すのだった。
「…というわけで有り難うございます。」
女は礼をいうともうお前は用済みだといわんばかりに興味を失くし身を翻すと、すぐさまこの場を後にする。取り残された黒髪の人物は息をついた。そしてデスクに置いてあった女の資料を手に取ると片方の手でぐしゃぐしゃに握りしめるのだった。
「お疲れ様です。」
フロントで待機していたヒカリがリーダーの帰還に頭を下げる。ヒカリは少女についてリーダーに確認をとった後本部まで同行することになった。そしてたった今ルナが報告を終えヒカリに少女の今後についての報告をしようとしていた。
「単刀直入に言うがアイツは能力者こそすれ全くもって微弱で話にならない。よって本部に対する危害は加えることが出来ないと結論付けられた。」
ヒカリはその言葉に安堵する。傲慢な性格だったとはいえ幼い少女なのだ。もし危険性が高いと判断されれば本部に何をされるか分かったものではなかったからだ。
「しかし、あの研究所に御大層に封印されていたのには変わりない。よって観察処分が妥当だと言う事になった。」
「それってまさか…」
ヒカリは嫌な予感しかなかった。観察処分。一体何処で。勿論あの少女に身元引受人などいるわけがない。ということは流れ的にこちらで面倒をみることになる。ようやくサングラスの謹慎が解除されたのだ。またしても同じような展開になるのは御免だった。だから私は目をあからさまに反らしながら、こちらで面倒を見る展開にだけはなるなと祈った。しかし希望は儚くも打ち砕かれた。
「また会ったな!」
何処に隠れていたのかいきなり少女が飛び出してくると私の肩に手を置いてくる。そしてルナもこちらに向かってくると空いていた方の肩に手を置き告げる。
「面倒宜しくな。」
「何で私ばっかり!」
それにヒカリの泣き声が空に木霊した。
「おっ帰ってきたっ。」
部屋に戻るとサングラスが手のひらをこちらに見せる。本来はただいまといいたいところだが今はそんなところじゃなかった。私はソファーの上に身を投げて動かなくなる。
「完全に機能停止しちゃってるけど何があったの?」
明日香が訪ねてくるが今は答える気力がない。希望的なことを言えばこの少女はあの研究所にいたのだ。何かしらの情報を手に入れられる可能性もあるにはあると思いたい。
「私は特に何もしていないぞ、ただヒカリが私の指示通り動かないから説教してやってただけだ。」
腰に手を当てて誇らしげに語る少女に明日香は一歩後ろに引いた。
「何引いてんだよ。」
少女は逆にこちらに詰め寄ってくるので明日香もそれ似合わせて距離をとる。サングラスはニヤッと口角を吊り上げると明日香に向かって
「元気な妹ができたみたいじゃねぇか。」
と囃し立てた。
「誰が妹よ。」
明日香は相変わらず距離をとり続けている。どうやら明日香は白衣の少女の思っていた性格とのギャップについていけていないようだ。まぁそのうち慣れるだろうが。そんな事を思っていると…
パシャリとシャッター音が切られた。皆が視線を向けると、そこにはデジカメを構えたルナがいた。そもそも彼女は写真を撮るタイプじゃない。だから余りにも唐突でヒカリとしては驚きの方が多少勝った。
「何撮ってるの…」
明日香は不機嫌な顔つきでルナを見たが、もう遅い。彼女はニヤニヤしながら「サングラスの言葉は最もだと思ってな」と先程の妹発言を肯定する。
「リーダーまで…!」
その言葉に彼女は頭を抱えるしかないのだった。
しばらくして不貞腐れていた明日香も落ち着いた。そのタイミングを見計らって、この支部のリーダーことルナはいつものデスク前の椅子に腰かけ、パソコンを起動し画面を見ながら話を始める。
「雑談もそろそろに本題に入る。まずは、皆の衆ご苦労であった。今回の任務の報告は既に受けてあるが、どうやらジャマーについては分からず仕舞いということらしいな。まぁこちらのような弱小支部に回ってくる話だ。本部も差程期待はしていなかったのだろう。」
女は一度話を切ると立ち上がり水道から水を給湯器に汲むとお湯を沸かし始める。
「あれからヴァイスさんと探したがパソコンにそれらしいデータは残されていなかったし肝心の研究者のニヨって奴も取り逃がしちまった。結局ジャマーを突破するためのエネルギーの抽出って何だったんだよ。」
サングラスはヒカリにその後の話をしながら腕を組み思考してみるが答えは出てこないようだった。そして全員の視線が同じ方向を向く。そこには部屋にあったポテトチップスをむさぼり食らっているスク水少女がいた。
「あ?」
少女は自信に視線が集まっていることに気付きポテチを食べる手を止める。
「なにかよう?」
本当に理解力がない奴だなと思いながら私は立ち上がると説明を始める。
「あなたはあの研究所にいたでしょ。だったら組織の事とか何か知ってたりしない?」
しかし相手は無視しながらスナック菓子を食べ続けている。それを見かねた私は彼女のポテチを奪い取った。
「あぁ!」
それに少女は悲鳴を上げるが無視する。
「この話はとても重要なことなの。もしかしたら重要な手掛かりになるかもしれないの。何でもいいからお願い。思い出してみて。」
私の真剣な眼差しを受け取った少女はさすがに真面目な顔になると腕を組んで目を瞑り始めた。そして沈黙の時間が訪れて30秒後少女は目を見開き口を開いた。
「あれ?」
何故か少女はそこから口ごもってしまう。
「どうしたんだ?」
サングラスの問いかけに少女は首を横に振り
「何か頭が痛い…うまく思い出せない。」
と告げる。少女は時おり頭を押さえながら混濁している記憶と戦っているようだった。どうやら自己紹介の時のセリフも考えてというよりは無意識的なものだったのだろう。
「記憶に不備があるみたいね。生憎情報はあいつらの研究に使われていたくらいか。」
明日香がそう締めくくる。
「はぁ…」
結局大した手掛かりも得られずため息をついた私は奪い取ったポテチを少女に返す。するとさっきとはうって変わって表情を明るくさせた少女はポテチに食らいついた。
「まぁ無い物ねだりしても仕方ねぇ。」
サングラスは大きく伸びをする。
「でも被験者ってのは気になるワードだよね」
明日香の言葉に「確かにな」とコーヒーを作り終えたルナがコーヒーをかき混ぜながら話に混ざる。
「奴らは生体エネルギー研究所の抽出という観点に目をつけた。おそらくその対象がそこのお嬢ちゃん達被験者ってことかな」
熱いコーヒーに息を吹きかけながらルナは推測する。
「でも私、そんな能力使えた覚えもないし。」
少女はそんなはずはないとルナの話を否定する。
「いまいち分からねぇな。いったいどういうことだ?」
サングラスは頭を掻きながら思索に耽る。皆一様に考えを巡らせるが答えはでない。そこに水を指したのはコーヒーをのみ終えて二杯目を作ろうとしていたルナだった。
「お前ら、分からないことを考えても仕方がない。今は保留としよう。だがその代わりにとても面白い話を持ってきた。」
ルナは不適な笑みを浮かべるとパソコンから目を離しこちらを睥睨する。そしてルナは振り返った皆に向かってこう告げた。
「異能力者狩りの案件が回ってきた。」
上条さとりです。とうとうタイトルにある異能力者狩りという存在を出すことが出来ました。一体異能力者狩りとはどのような存在なのか。少女と17支部はうまくやっていけるのか…
そんなところで今回はペンを置かせて頂いてまた次回お逢い出来ることを願っております。