表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/100

4話<傲慢な幽閉者>

「やはり上階ははずれか。」透明化を解除したシュバルツが部下に告げる。バレずに職員のカードーキーを盗み各部屋を見て回ったがそれらしき部屋は存在しなかった。


「秘密裏に研究を行うとしたら地下ですかね。」


「そうだろうな。」


部下の一人であるブランの推測に頷く。


「リーダーよろしいでしょうか。」


別の部下のノワールが手を上げた。


「なんだ。」


「ヴァイスさんがいれば円滑に捜査できたと思うんですがその件に関して教えて頂けないでしょうか。」


シュバルツは一瞬黙ったがいいだろうと頷き話し始める。


「以前の俺は任務は極力自分だけでこなせばよいと思っていた。だがあの事件で奴に出会ってから考えが変わったのだ。仲間を頼ってもいいのではないかとな。だからその一貫として今回は本命を奴に預けた。手柄を譲るのはやはり惜しいのだがな。」


言い終わると同時シュバルツは扉の鍵をかける。


「どうしましたか!?」


仲間の動揺にシュバルツは一言


「言っただろう本命を預けたと。」

その刹那扉が勢いよく破られるのだった。


私たちはヴァイスの指示に従い階段を降りて地下施設まできていた。ヴァイスの能力は建物の構造も把握できるようで大分複雑な通路の先の大扉の地下へと続く入り口を見つけることが出来た。大扉には電子ロックがかかっていてパスコードとカードキーがなければ入れなくなっていたがそんなものはヒカリの前には無いもの同然だった。そして薄暗い直線の通路を進み続けて5分程の事だった。私は感じていた違和感を口にする。


「護衛のような人物が見当たりませんね。余りにも無用心すぎるような。本当にこの先に秘密裏に進められていた研究の証拠が見つかるのでしょうか。」


「護衛に関してはリーダーが引き受けてくれています。ここの護衛を引き剥がす必要がありましたからね。」


ヴァイスは淡々と事実を口にする。


「二手に分かれたのはそのためだったと。」


「そうですね。粗方の戦力はあちら側にでばっていることでしょう。」


「ちっ」


とサングラスが舌打ちする。


「相変わらず気に食わねぇ奴だぜ。」


確かにヴァイスさんのリーダーは口下手なところがある。でも今は根はとても仲間思いの人物であることを知ってしまった。サングラスはそれが余計に気にくわなかった。


「つきました。」


ヴァイスが立ち止まると目の前には鉄の扉が複数見える。扉の横にはカードキーを認証するパネルがあり、それを使いあける仕組みのようだ。しかし当然カードキーなんて持ち合わせていないため


「ここは任せて。」


私はテレポートを発動しカードキーを使うことなく内側に侵入する。そして内側から扉を開けロックを解除した。


「さすがです。」


ヴァイスが軽く拍手をする。顔は真顔のままだったが。そしてとうとう全員で中へと踏みいる。視界に飛び込んできたのは無数のコンピューター達だった。コードが絡み合い足元がおぼつかなくなる程の数である。


「いかにもって感じね。」


明日香が端的に感想をのべる。ここでジャマーの突破についての研究が行われていたのだろうか。


「でもよぉ、第一俺達にそんな重大な任務を任せるか?」


サングラスがみんな同様に感じていただろう疑問を口にした。


「まぁ確かにね。でも任務はきっちり遂行するのが私達の務めでしょ。四の五の言ってる暇があったら今は任務に尽力して。」


明日香の返答にサングラスは言われてみればそうだなと頷いた。


「話はそこら辺にして見てください」


話を遮りヴァイスさんは前方を指で指す。そのさきには人一人入れるサイズの棺のような物が設置されていた。


「よく見てみましょう。」


ヴァイスさんは特に恐れることもなくコードだらけの道を進む。私たちも回りに注意を払いながらついていった。


「これ、中に人が入ってますね。」


ヴァイスは前で立ち止まり棺の上方に空いていた丸い穴から中を覗き込んだ。改めて中を凝視すると中には10代半ばぐらいの少女が入っていた。


「おそらく彼女からエネルギーの抽出を試みていたのだと思われます。」


「問題は既にこのエネルギーが運用可能な段階まできているかだな。」


サングラスがもっともな発言にヴァイスは


「はい、それに関してですがそこの方に聞いた方が早いと思いますよ。」


と口にする。


「そこの方?」


意味が分からなかった。それではまるでこの部屋に私たち以外の存在がいるみたいではないか。ヴァイスの呼び掛けと同時ガタンと音がする。その方向を見やるとスーツに白衣をきた灰色の髪をした女が現れた。


「!?」


今の今まで彼女の存在に気がつかなかった。女は相当気配を断つことに長けているようだった。


「気づかれちゃいましたか。」


女は頭を掻きながらこちらに躊躇なく向かってくる。まるで数の不利を恐れていない。私の額から嫌な汗が出てきた。


「別に不意打ちするつもりとかはありませんでしたよ?ただこの部屋にカードキーなしでいきなり現れたもんですから驚いてつい隠れてしまったんです。えーと察するにあなた達対異能力者組織の方たちですよね?」


女は一人でにベラベラと話続ける。


「自己紹介が遅れました。私はニヨ=マナーズ、ここで雇われ科学者をしております。どうかお見知りおきを」


ニヨは白衣をドレスのように持ち上げこちらに一礼した。


「そちら側に敵意がないのならこの研究について話して頂けませんか。」


ヴァイスがニヨに尋ねた。するとニヨは逡巡する様子もなく頷くと口を開いた。


「あなた達がある程度は知っての通り我々はこの研究所で能力者の莫大なエネルギーを抽出することを目的とし活動してきました。当初はこれが人の役に立てるものになればと研究を進めておりましたが、今から1週間前、あの組織がこの技術を譲り渡してくれないかと詰め寄ってきたのです。初めは拒否していましたが、彼らは私にあるものを提示したのです。それに感銘を受け私は協力することにしたんです。」


「てめぇの私利私欲のためだけにあんな奴らに手を貸すのかよ!アイツらの噂はお前も知ってるだろうが!」


激昂するサングラスにニヨは落ち着いてくださいと手を下に下げる動作をする。


「話は最後まで聞いてください私が手を貸すことを決断した理由はそれだけじゃないんです。私は能力において人々への還元を願っています。そして彼女らは教えてくれました。クレイドルが大きくなれば人類に幸福がもたらされるとね。」


「…」


サングラスはニヨの答えに黙り込んでしまう。それは私たちも同様だった。


「あり得ない…みたいな顔をしてらっしゃいますね。私としてもクレイドルのやろうとしていることについてお話したいのですが何でも極秘らしく私にも教えて頂けませんでした。」


ニヨは申し訳ありませんと頭を下げた。


「もういい!」


突如としてサングラスが拳銃をホルスターから抜き出すとニヨに突きつける。


「サングラス!」


流石に短気すぎると仲間が制止するがサングラスは


「ここで逃がしてたまるかよ!」


と冷静さを欠いたままだ。


「ぶっぱなされたくなかったら今すぐにクレイドルについて吐け。」


一方ニヨは銃を突きつけられたのにも関わらず顔色一つ変えずにむしろ笑って見せた。


「だから極秘だって言われてるんですって、聞いてなかったんですか。」


「くたばれ。」


取り合うつもりがないと判断したサングラスがニヨに発砲した。しかしそれは発砲しようとするという意志に留まる。


「な…」


サングラスは硬直し動けなくなってしまっている。ニヨはサングラスの眼前まで向かってくる。そして銃口がちょうど脳天に当たる位置まで立った。


「別に私は野蛮なことはしたくないんです。良ければその銃をおろして頂けませんか?」


ニヨは攻撃する意志がないことを告げる。そしてサングラスの腕をつかむと無理やり銃を下に下ろさせる。


「ありがとうございます。では私はクレイドルの方々と打ち合わせがありますので失礼します。」


ニヨは勝手に話を進めるとこの場を後にしようとする。私たちはニヨを逃がすまいとニヨを追おうとしたがサングラス同様体が硬直してしまいそれは叶わず、まんまとニヨは通路の奥へと消えていった。


「かはっ!!」


突然硬直がなくなりバランスを崩した私たちは地面に倒れ込む。通路の向こうへと目をやるが既にニヨはいなくなっていた。


「すぐに追わねぇと!」


サングラスは通路の奥へ今にも駆け出そうとした。しかし明日香がサングラスの服を掴み後ろに投げ飛ばした。


「何を…」


サングラスが明日香に対して悪態をつこうとしたがそれは明日香の声によってかきけされる。「サングラス!いい加減にしてよ。もしかしたら貴方死んでたかもしれないのよ!?」迫力に気圧されサングラスは黙ったままだ。しかし直ぐに自分の愚かさを痛感した。目先の利益に回りが見えなくなっていたのだ。そして直ぐに頭を下げて謝罪した。


「悪かった。クレイドルと直に関わってる野郎なんてまたとないチャンスだと思ったんだ。仮に虚言だったとしても絶対に逃がしたくなかった。でもそれでお前らまで巻きこんじまったら意味ねぇよな。」


「次からはもうしないこと。」


謝罪を受けとると明日香はサングラスの元に近づき仲直りの握手を求める。


「おう。」


それにサングラスが少し恥ずかしげに応えた瞬間だった。背後から何かモーターの駆動音のようなものが鳴り響く。そして皆の視線は一様に背後の棺に釘付けになる。


「まさか…ニヨの奴が!」


明日香が叫んだと同時棺が開くとそのまま支えを失った少女が前に倒れ込む。しかしぐったりしていて動く気配がなかった。体の至るところに変なコードが取り付けられていて体の自由を一切奪われていたようだった。そして服はサイズのあってないぶかぶかの白衣を一枚着せられているだけだけであった。


「なっ///」


サングラスは少女の姿を見た途端頬を赤らめ顔を背ける。


「サングラスって案外そういうの気にするタイプなんだ。」


明日香がサングラスの意外な一面に笑みを浮かべる。


「とりあえず服を着させろ!それだけじゃその…外に出れねぇだろ!」


確かにサングラスの言ってることはもっともなのでこの部屋の横にあった倉庫部屋のような所を見つけるとそこから着られそうな服を見繕ってきた。


「もういいか?」


サングラスの問いかけにいいよと私が言うとサングラスはこちらを振り向く。すると、


「おい?お前らふざけてんのか?」


サングラスは先程よりも頬を赤くして怒る。


「しょうがないですよ。これしかなかったんですから。」


ヴァイスは表情を一切崩さずに告げる。


「でもよ…」


サングラスは両手で覆った顔から目だけをそっと覗かせるとまた隠してしまう。


「いい加減にしろ。」


明日香はサングラスの背後に回り込むと手を無理やり引き剥がす。


「やめろ!」


サングラスは抵抗するが明日香の力に勝てずに少女を見てしまう。少女は服と言うより完全に水着をきていた。ちなみに何故かスクール水着で。そして申し訳程度の白衣を着せられていただけだった。


「まぁ何かあっただけ良かったよ。」


「研究所に水着があるのは謎ですがね。」


ヴァイスは私の言葉に返答した後しゃがみ少女の顔を見る。現状少女は気絶しており椅子を二つ並べてそこに寝かせている状態だった。


「問題はこの少女が何者かということですが、私達に意図的に発見させるために棺が開いたのを鑑みるとニヨと言う女が自発的この棺を開けたのではないでしょうか?」


ヴァイスは立ち上がるとこちらに向き直り


「彼女は私達とこの少女を引き合わせたかったと考えるのが筋でしょう。」


と結論付けた。


「いったいなんのために…」


「もしかしたら目覚めた瞬間俺達を殺すように改造されてるかもしれねぇぜ?」サングラスが恐ろしい事を言うがヴァイスは冷静に待ったをかけコートから一つの手錠を取り出し装着し始める。


「これで仮に敵対してきたとしても能力は使えないはずです。」


「ではヒカリさん。この少女は本部に貴重な保護対象です。テレポートを行使できる貴方が本部まで送り届けるのが一番かと。お願いできますか。」


「今さらニヨとかいうのを追うのは不可能ぼいっしね。」


ヴァイスの質問に明日香が答えた所でヴァイスは続けて


「我々はリーダーと合流してから向かいます。かなりてこずっていられるご様子なので。」


と告げヴァイスは少女を優しくお姫様抱っこの要領で抱えると私にバトンタッチする。


「了解。くれぐれも気をつけてください。」


私は少女を抱えると激励の言葉を送りすぐさまテレポートを使って移動を開始したのだった。


水着に白衣のなんとも珍妙な姿の少女を背中に背負って飛び続ける。誰かを連れてテレポートすることは少なくないのだが今回に関しては見た目が見た目だ嫌でも悪目立ちしてしまう。


「あんま近道ルート使うとしくった時リカバリーきかないしなぁ。」


そして変に無茶なルートを通るわけにも行かなかったので仕方なく安全な移動を心がける。そして本部まであと2km当たりのところだった。私の背後から耳になにやら呻き声が聞こえてきた。


「もしかして…起きちゃう感じ?」


できれば本部で目覚めてほしかった。変に暴走されても困るのはこちら側だ。しかし少女は私の願いに反して目を開けてしまう。


「…?」


最初は辺りをぼんやりとした眼差しで見つめていたが、やがて自分が何者かに背負われている事実に気づくその途端


「なにしてるんだ!おまえ!誘拐か!」


と大声を上げてきた。どうやら私は誘拐犯と勘違いされているらしい


「落ち着いて!」


と声をかけるも体をブンブンと降って私から逃れようとしてくる。このままではバランスを崩してどこかに激突しかねない私は近場のマンションの屋上におりた。ようやく私から解放された少女は一気に距離をとると指を突きつけてくる。


「私は施設にいたハズなのに気づいたら背負われてるし…色々と説明しやがれ!」


なにやら一人でわーわー言っているがとりあえず私が怪しい人物ではないと信じさせるため今までの出来事を説明する。


「…」


「納得できた?」


事情を説明後少女はいまだに距離をとり続けているが一応は頷いてくれた。そして立ち上がると三回ほど咳払いをしてから室外機の上に乗ると両手を腰に当てて高らかにいいはなった。


「私は皆から尊敬の念を込められ続けた絶対的な存在なのだ!謹んで敬うが良い!」


目覚めて早々尊大な態度を取った少女は自己紹介を終えると室外機の上から飛び降りる。そしてこちらに近づいてくると手を出してくる。


「?」


私が相手の行動の意味を汲み取れないでいるとじれったいといわんばかりに


「というわけで、私これだけだと寒いから上着ないと困るんだよね。」


と少女は手をこちらにブンブンと降って催促してくる。


「えーとそれはつまり私の服を寄越せってことかな?」


「当たり前じゃんお前以外にだれがいんだよ。」


ずいぶん生意気な事をいう少女だ。というかさっきの自己紹介染みたものはなんだったのか。


「いや、あんた何様よさっき説明したでしょ?これから本部に連れていくんだからそれまで我慢して。」


私が催促してみるが少女は一歩も引かない。まるで一国のお姫様だ。


「私は今寒いっていってるの第一なんで水着な訳?もっとマシなものあったんじゃないのか?」


それに関しては尽力したがそれしかなかったのだから仕方がないとしかいいようがなかった。


「…仕方ないな」


私はこれ以上いっても意味がないと判断してブレザーを渋々渡す。少女はそれを受け取ると早速ブレザーを身に付ける。これで一旦落ち着けるかと思ったのもつかの間次は足が寒いとか言い出して私の下半身のスカートを指差す。さすがにこれを渡してしまったら私が回りから痴女の烙印を押されてしまう。それはなんとしても避けなければいけなかった。なので私は無理やり少女を持ち上げるとテレポートを発動する。


「なにすんだ?!」


少女は暴れるが私は少女を睨み付けると


「暴れると落とすから。」


と脅迫する。さすがに生殺与奪の権利を握られていては少女もおとなしくするしかないのだった。

どうも上条さとりです。前回お話しした通り今後の展開の鍵を握るキャラが登場しました。性格は少し傲慢で世間知らずですが少女の運命は如何に…?

ということで今回はペンを置かせて頂いてまた次回お逢い出来ることを願っております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ