両親 (京視点)
生まれた時から人と違った。
環境も、立場も、容姿も。
歪な環境。
御曹司という立場。
人とは思えない、整いすぎた容姿。
そのどれもが、京を孤独にさせてった。
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京の家は、昔から続く有名菓子メーカーを代々経営していた。
そしてその菓子メーカーの現社長である人の唯一の子供が京だ。
だが京には母親も、父親もいない。
自分を産んだ人、つまり血縁上母にあたる人と父親にあたる人はいるが、その人達を母親、父親と思うのは8歳の時に辞めた。
そのきっかけは、今から書く出来事だ。
父にあたる人と母にあたる人は政略結婚らしい。
いわば、両家との関係を深めるための結婚。
それが結構強引なもので、親同士で詳しいことを全て決めたあと、決定事項として本人達に話をしたらしい。
その話を聞いた時、母は今更辞めることはできないと悟ったのか、承諾した。だが、父にあたる人はすでに結婚を約束した人がおり、猛反対したそうだ。
だが、それでなしにはできない。
先代社長はその声を無視し、結婚させた。
(そんな状態で結婚し、上手く結婚生活を送れるわけがないだろうに)
結果、跡継ぎ(けい)が生まれると、父は愛人の元に通い、屋敷へ帰ってこなくなってしまった。
一応少しは愛していたのだろうか。
母はそのことを受け自暴自棄になり、泣き叫んで物を壊しすということを繰り返し、しばらくした後、別荘へと追いやられた。
ちなみに、このことがあったのは京が3歳までの時。
この時は、まだ何もわからず、あまり記憶がない。
一応残っている記憶は、母が破れた着物を着ながら、割れた花瓶や置物の中、ひたすら泣いてる記憶だ。
(あの時だけ、やけに鮮明に覚えている。)
きっと使用人らが、荒れた母と京を会わせないように配慮していたんだろう。だから、偶然見た母の姿は今でも記憶に残る程、衝撃的だった。
(あの時はその泣いてる人が誰なのか分からず、幽霊かと思ってたな)
ずっと母の顔を見たことがなかったから、分からなかった。
(あれがきっかけで、別荘に追いやられたんだろうな)
追いやったのは先代社長と、その奥方。
この二人は両親とは違い、常識的な人で、冷たく見えるが愛情深い人だ。
だが、二人共別宅に住んでいる上、先代社長はまだ未熟な父の補佐、奥方は社交界の行事で忙しく、会えるのは数ヶ月に一回の頻度。
だから京は4歳頃の時から、普通の家が2、30こ入るほどの豪邸で使用人に囲まれて過ごしてきた。
使用人は大勢いて、みんな自分に優しかった。
だけどやはり京にとっては他人、使用人にとっては仕える主人で、打ち解けた関係になれなかったのは事実だ。
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そして8歳の誕生日、先代当主とずっと前から居る古参使用人に、両親にあたる人の話を教えてもらった。
その時、ずっと謎だった両親はどこにいるのか、あの泣いてる女性は誰だったのか全て繋がった。
それと同時に、両親だった人達への、少しの期待と愛情が一瞬にして消えた。