出会い
始まりは塾だった。
〜〜〜
桜が咲き始める、4月。
高校1年生となった夜美は親と一緒に塾の説明を受けていた。
その塾は都内でも有名な進学塾で、偏差値60を超える高校生でも半分正解するかどうか、という入塾テストがあった。
そして今、ここにいる生徒はその入塾テストを合格した者たちだ。
夜美は周りにいる有名進学校の制服をまとった同い年の人た達を見渡し、その緊張感に気圧されそうになる。
だがこれからはこの人たちと勉強していくのだ、と思い気を引き締める。
そしてチャイムが鳴ったと同時に席を立つ。
これからは塾見学。小学、中学と先に入塾テストを受け、合格した人たちが授業を受けているところを見て回る。
それが終われば帰れる。そのことを希望にして夜美は高校生の校舎である第3校舎へと向かった。
〜〜〜〜
「ねぇねぇ、あの人めっちゃかっこよくない?」
「だよね!しかもあの制服、東葉高校の制服じゃない?」
「えっ、マジで!頭もいいとかヤバイじゃん!彼女いるのかなぁ?」
さっきまでの空気はどこへいったのか、塾見学をしている女子達が頬を染めながら一人の人物に釘付けになっている。
そんな視線の先には 漆黒の髪と瞳、高身長で細身、切れ長の目に鼻筋の通った鼻 というゲームの画面から出てきたような青年がいた。
(女子の理想を具現化したような人だな)
だが、そこには一つだけ欠けているものがある。 表情だ。その青年はさっきから見学している生徒達にキャーキャー言われても口も頬も全く動かなかった。
(その無表情さも、女子たちはクールだと言うのだろうか。)
夜美はそんなことを考えながらぼーっと見ているとふと、視線を感じた。
その視線の元はどこだろうと体を動かした時、チャイムが響き渡る。
その瞬間、視線のことなど頭から吹っ飛び、慌てて鞄を持って説明された教室へと急ぐ。
(チャイムがなるまでに戻れって言われてたんだった!最初っから失敗したなぁ〜)
そして次の日、夜美はその青年と話すことになる。