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トーテキから夢のメッセージ

 ジャンク屋から帰宅した俺は、ベッドへ横になりながら制作手順をあれこれ考えていた。色々なパターンを思い描き、最善の組み合わせを模索して……。





 その日、自宅で「妹は未熟なメロン(心配性の兄の悩み)」というアニメを観て共感していると、俺の元へ一通のメールが届いた。


「ケンタールさん。今すぐ来て下さい」


 悲痛な叫び声のようなメッセージが書かれていた。

 差出人を確認すると惑星調査団からであった。「何事ぞ?」と思い、慌てて連絡をすると「早急に来られたし」だった。


 普通は要件を的確に明記し、それに対して返信を待つのが筋だろう。何の説明もなく、突然「来い」のメールを送りつけるのはどうかと思う。

 しかも早急って……。

 まあ、平日の昼間からアニメ鑑賞をしている俺は、さしてやる事がある訳じゃない。来いと言われればいつでも飛んで行ける状態ではある。

 アニメの途中で出かけるのは不本意だったが、渋々調査本部に出向いた。



 待ち受けていたのは、メガネが良く似合う知的博士だった。


「ケンタールさん。翻訳機って作れます?」

「唐突ですね」

「緊急な用件なの。もう切羽詰まっている状況なのよ」

「オシッコを我慢している感じですか?」

「……もうちょっと違う例えない?」


 博士の話によると……。


 第3銀河からさらに40万光年離れた場所に第4銀河が存在する。そこの惑星調査団が何の予告もなしに突然トーテキへやって来た。やって来たというよりは、迷い込んで来た。という表現が正しい。


「迷い込んで来たとは?」

「分かりやすく言うと迷子よ」

「迷子って……調査団が?」

「トラブルに巻き込まれたらしいの」

「トラブル?」


 第4銀河の端で調査を行っていた彼らの前に突如時空の歪みが出現した。

 歪み自体は宇宙空間のどこにでも発生する自然現象で珍しい物ではない。宇宙を探索していれば高確率で出会う日常的な現象である。

 ただ厄介なのは、何の前触れもなく突然姿を現し、予告もなく消える事である。いつどこで発生するかは不明で、前もって予測する事は不可能だった。各惑星が出現原因の特定をしているが、未だその謎は解明されていない。

 そんな代物が調査中のど真ん中にいきなり姿を現したんだとか。これに巻き込まれると宇宙船のコントロールは利かなくなる。それどころか、歪みが消えたら最後。どこへ飛ばされるか分からない状態になるという。


「で、気が付いたら第3銀河にいたと」

「まさにその通りよ」

「それは大変ですね」

「問題はここからなの」


 現在、調査団は行き場所を失ってトーテキに滞在している。トーテキ側としては、同じ調査団同士、結果報告を共有すれば今後の展開が明るくなる。惑星としても新たな発見があるだろう。何より宇宙全体として互いに切磋琢磨するキッカケにもなる。是が非でも交流を深めたいと思っていた。

 ところが、我が惑星の中で誰一人として第4銀河の言葉をしゃべれる者がいなかった。

 当然と言えば当然である。交流のある惑星なら誰かしらは言語を理解する者がいる。通訳も多少は何とかなる。しかし、まったく交流のない異星人がやって来たのでは、もはや対処のしようがない。


「要するに言葉が通じないから翻訳機が必要って事ですか?」

「そう。しかも早急に対処しなきゃいけない案件なのよ」

「早急とは?」


 予想外のアクシデントで飛ばされた彼らは、突然の出来事に困惑しており、対処法を見出せずにいた。しかも40万光年という距離に成す術もなく、故郷へ帰れない状態なのだという。

 幸い我が星にはユニット航法というのがあり、ワープより速い速度で飛行する技術を持っている。それを使えば両惑星の中間地点までなら送り届ける事も可能だ。しかし意思疎通が困難なため、その情報を教えたくても伝えられない状況らしい。


「彼らも困惑している状態なの」

「突然、別世界に飛ばされたらパニックになるでしょうね」

「言葉さえ通じれば互いに安心するでしょ」

「なるほど」

「どう? 作れる?」

「大丈夫です」

「制作にかかる日数は?」

「そうですねぇ~。1時間もあれば何とか」

「そんなに早く完成するの?」

「翻訳機自体は難しくないですから」

「ふ~ん。あなたって、思った以上に役に立つのね」

「それ、褒めてます?」

「貶してはいないわよ?」

「……」


 話を聞く限り、未知なる言語をトーテキ語に訳そうと思うから難しいだけ。初めから訳そうと思わなければ制作は簡単である。


 という事で、翻訳機を作った。



「いかがでしょうか」

「使い方は?」

「イヤホンを耳に入れるだけです」

「仕組みは?」

「言語ではなく、骨の振動によって翻訳する仕組みです」

「……なるほど」

「要はテレパシーと一緒です」

「試してみていい?」


 そう言うと、博士はイヤホンを耳に入れた。俺も片方を耳に入れた。


「どうですか?」

「うわっ、本当に聞こえてるみたい」

「でしょ?」

「これって画期的な発明じゃないの!」

「でしょ?」

「雑音もなく透明感のあるキレイな音ね」

「博士の透明感には劣りますが」

「……それ、褒めてる?」

「貶してはいませんが?」

「……」


 なんか、博士とは気が合いそうですね。





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