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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
98/317

98話

 ところ変わってドイツ、ベルリン。テンペルホーフ=シェーネベルク区。二人の老年の男性が、カフェにて密談中。『森』をテーマにしたカフェであるため、間接照明のみで多少薄暗い。中央付近の個別のテーブル席に相対して座り、なにやらよからぬことを企む。


「ふむ」


 悩ましい声を出したその男性、フランスでは有名な調香師ギャスパー・タルマ。仕事がこちらであった、ということもあり、カッチリとしたフォーマルなスーツ姿。少し、このコンセプトのカフェには浮いてしまう。他はゆったりした服装の客が大半だ。


 ニコルから届いたメッセージのヘルプ。考えてみたが、よくわからない。自分だけでは。そんなときにちょうどよく、近くにこの男がいた。


「どうしたの? なんか悩みかな? ほっほ」


 その対面に座っている老人、ギャスパーよりは一〇ほど年齢は上だろうか、セーターにスラックスといういで立ちで、特徴的な笑いをしながら、コーヒーを啜り問いかける。


 実はこの店は彼の店。だった。今は他の人に権利を移している。実際に他に持っている喫茶店では、店に立つこともあるため、みなからは『マスター』、もしくは『オーナー』と呼ばれている。


 実はさっさと聞いてほしかったのをひた隠しにし、さりげなくギャスパーはマスターと会話を成立させる。


「『角砂糖にショコラを染み込ませる』。さて、誰をイメージしたショコラでしょーうか?」


 あえてクイズ形式で問うてみる。そして、問い方も変えてみる。これだけでわかればすごい。ここの代金は全て出そう。


 しかし、マスターは頷き、違うことを頭に浮かべる。


「ショコラか。やはりヴァイナハテンには、ラム酒入りショコラーデだね。うん」


 ヴァイナハテンとは、ドイツでクリスマスのこと。ドイツでも、いやむしろ、フランスよりもドイツのほうがクリスマスマーケットの祝いは盛大。一一月後半から各地の広場や通りなどで、お酒を飲んで温まりながら盛り上がる。それを回顧した。


 なにやら逸れてしまった軌道を、ギャスパーは修正する。


「いや、そういう話じゃなくて。じいさんの好みは知らないよ。問いに答えてよ」


 マスターは変わり者だ。長年の付き合いでそれはわかっている。だが、頭がいい。この人ならなにかわかるかもしれない。淡い期待を寄せる。


 だが、それでもマスターのペースは変わらない。


「うーん。そういう食べ方もありなのかな。染み込ませるなんて、ツヴィーバックみたいだね。久々に食べたいね」


「あーあれ。美味しいよね。って、そんなことはどうでもよくて。私はわかんないなぁ、この問題。なにかわかったことある?」


 ツヴィーバックとはラスクのようなもの。またもマスターの波にギャスパーは飲み込まれる。話が進まない。

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