表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
95/317

95話

「——ということなんだ。誰かなにかわかる人はいるかい?」


 パリ三区。ピアノ専門店、アトリエ・ルピアノ。その店の奥にある、パーテーションで仕切られた応対用の対面ソファーには、サロメとジェイド、そして同僚のランベールと社長のルノー。


 ジェイドが持ち込んだのは、ワンディから出されたクイズ。なぜ、ショコラを染み込ませた角砂糖が、マリー・アントワネットを意味するか。それをちょうど、時間の空いた男性陣も加え、議論する。

 

「そもそも、マカロナージュってなんだ?」


 なんとなくマカロンに関すること、というのは察しがついているランベールだが、そもそも作業工程も知らない。手がかりを手繰り寄せようとする。ちなみに、次の調律の時間まで暇なので付き合っている。ジェイドとは初対面。いい意味でお互い遠慮がない。


 それに関して、持ち込み主のジェイドがジェスチャーも交えて解説する。


「マカロナージュというのは、マカロンの生地の固さを調整するため、メレンゲと混ぜ合わせる作業のことなんだ。これがないとダコワーズに一歩近づくね」


 と、持参したダコワーズを、ガラス製のローテーブルに広げる。中身はキャラメルクリーム。自宅でも簡単にできる。


 それを一枚とってランベールは口に運ぶ。食べることでなにか閃くかもしれない。


「ふーん、今のところなんもおりてこねぇな」


 が、ダメ。噛み締めると、甘さ控えめな生地と、濃いめの甘さのクリーム。ちょうどいいな、とひとりごちる。苦めのエスプレッソが欲しい。


「少し、見方を変えてみたらいいんじゃないか。なぜマリー・アントワネットなのか」


 今日の調律の資料を読み込みながら、片手間気味に社長のルノーが提案する。意識は資料。仕事が第一。


「なにかわかったんですか?」


 なにも浮かんでこないランベールは、達観したような物言いのルノーに、早くも助け舟を要請する。


 しかし、ルノーはとぼけたように肩をすくめた。 


「いや? ただ、角砂糖というのが引っかかる。これをそのまま食べるのか、それともなにか違う使い方をするのか」


 砂糖には他にも色々種類がある。その中で角砂糖を選んだ意味。もしくはなんでもいいのか。


「……角砂糖って、コーヒーとか紅茶に入れる以外に、使い道ありますっけ?」


 相当限られる方法に、ランベールは疑問を抱く。頭の隅まで、今までに食した角砂糖の記憶を呼び戻すが、全くヒットしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ