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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
90/317

90話

「……これが賭け、ってことですか?」


 先ほどの言葉をジェイドは思い出す。さらに、特典までついてしまった。お得でしかない。気持ちは逸ってくる。しかし『なぜ?』という気持ちが消えないでいる。


 この経緯などをワンディが説き伏せる。


「『なぜ?』って顔をしてるね。面白い、というのは大事だ。美味しいものも、まずは面白い、楽しいという感情から。私はオーナーから、そう教わってきた。私もそろそろそういうのを、下の子達に伝える時なんだ」


 別に、ジェイドを贔屓しているわけではない。だが、上を目指そうとしているのなら、年齢や実績、技術などは関係なく育てていきたい。それがワンディの思想。


 まだ点と点が繋がらない。だが、少しずつジェイドには面として浮かび上がってくる。


「……この謎が解けたら、私のショコラ、本当に掛け合ってくれるんですね?」


 最大の利益。なによりも手っ取り早い階段の駆け上がり方。自身の作ったものが、売り出されること。もしかしたら、雑誌やSNSなんかにも取り上げられるかもしれない。そしたら儲け物だ。そうすれば、『彼女』にも顔向けができる。


 力強く頷いたワンディは、再度内容を確認する。


「約束する。『なぜショコラを染み込ませた角砂糖が、マリーを意味するのか』。期限はそうだね、一週間。わかる人はすぐにわかると思うし、誰かと相談するもよし。インターネットで調べるもよし。手段は問わない」


 どんな方法でも。ジェイドはまだ考えてもいないが、宣言する。


「先に言っておきます。『ありがとうございます』」


 答えることができれば、可能性が広がる。ここから始まる。かもしれない。


 そのハキハキした態度を、余裕を含んでワンディは観察する。


「自信、ありそうだね。だが、これも覚えておいて。美味しいものは、面白いという感情から、と言ったけど、悲しい顔が必要な時もあると。私にとってショコラはこうあってほしい、という想いが、今回のクイズの答えと繋がる」


 以上、と言葉を締め括った。


「……? わかりました」


 最後になにか難易度を追加されたような気もするジェイドだが、それは仕方ない。目の前にニンジンがぶら下がった馬は、走り続けるしかない。


「じゃ、遅くなってしまったし、このままあがってしまって大丈夫。気をつけて帰ってね」


 そのワンディの言葉に甘え、スタッフ全員に挨拶をし、ジェイドは先にあがらせてもらう。まだ作業は残っているので、後ろ髪を引かれる思いだが、助かった部分もある。少しでも、先ほどのクイズを考えたい。


「角砂糖……ショコラ……」


 頭の中を駆け巡るのは、四角い立方体。そこにクーベルチュールのショコラが一滴ずつ落ちていく。もしくは、ショコラの海にダイブする。しかし、それがどうしてマリー・アントワネットにつながるのか、アドレナリンが抑えられてきた今、全く予想できずにいる。

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