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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
87/317

87話

 それを見越して、ワンディは例を出して説得にかかる。


「もしかしたら、明日全世界のカカオが死滅する病気が、蔓延するかもしれない。ということは今日が最後の一日。ならやるでしょ」


「……なんの話です?」


 ぶっ飛びすぎてて頭に入ってこないが、それならやるかもしれない、とジェイドは不思議と前向きになる。しかし、もし本当にそうなったら全世界のショコラトリーは廃業だろう。そうしたらやる気は完全に喪失する。


「とはいえ学生だからね。夜の仕込みとかもできる範囲で。ただ、これからは接客もだけど、製造のほうにシフトチェンジして。カカオの選別とかも」


 よろしくねー、とさらりと重要な役割をワンディはジェイドに押し付けた。


 やりたいとは思っていたが、いざやっていいとなると、ジェイドは足が止まる。


「……」


 煮え切らない彼女の姿を目の当たりにして、ワンディはひとつ提案した。


「……なら、ひとつ賭けをしてみない? それに勝つことができたら、キッチンで働く。負けたら今のまま接客を続ける。これなら納得するんじゃない?」


 自分に厳しいというのは、裏を返せば自信がないとも言える。さて、どちらの面が上を向くか。


「賭け、ですか?」


 大事なことをそんな軽く決めてしまっていいのか、と訝しみつつもジェイドは気になる。一体、なにをどうするつもりなのか。


 ただ、ワンディにとっては大真面目。本店や一区の支店などと比べて少し、売上の面で劣るという部分もあって、このまま平行線を辿るよりも、色々と挑戦してみたいのもある。博打は好き。ハナ差でいいので一区に勝ちたい。


「そ。まぁ、今日のシフトが終わったら、少し残れる? 色々と試してみたいショコラの試作も兼ねて」


「はぁ……」


 完全に乗り気、というわけではないが、店長と話せる機会も今までなかったので、ジェイドはありがたく承諾する。彼女の本心が見えないことも一因だ。


 †


 その後、二〇時の閉店を迎え、掃除や仕込みなどをハリエットなどに任せ、カフェスペースにて二人で席につく。磨かれたガラスの向こうには、帰宅しているのであろうか、足早に人々が闊歩している。そんな様子を見ながら、営業時間中にワンディが作ってみたショコラをいただくことに。


「じゃあまずは『ショコラダコワーズ』」


 そう名前を呼んでワンディが差し出したのは、ビターショコラでデコレーションされたクッキーのような生地。それがクリームをサンドした手のひらサイズの小さな焼き菓子。

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