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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
84/318

84話

 水曜日の午後。この日は学校も短いため、半日で終えたジェイドはアルバイトに励むことになる。


 あいにくの雨模様ということもあり、普段よりも若干の余裕を感じたエディットが、ここぞとばかりに話しかけてくる。


 それに対してジェイドも、隙を見つけて返答をする。商品が並んだショーケース。そのレジのところに横に並び、少し声のトーンを下げる。

 

「アメリさん……ですか?」


「うん、一区にあるサン・トレノ通りの店で、社員が辞めちゃったんだって。で、少しの間、副店長がヘルプで行くらしくて。てことで、ジェイド。これはチャンスよ」


 力強くエディットは拳を握りしめ、ジェイドに合図する。そして頷く。


 話題は他店舗。高級ブティックや観光客の多くが集まる、一区にある支店。売り上げはここよりも上。その店舗で責任者がいなくなってしまったため、副店長であるアメリが駆り出されていること。横の繋がりで、こういったヘルプはたまにある。


「どういった意味で、ですか?」


 チャンス。一応ジェイドは推測してみたが、よくわからない。副店長がいないということは、むしろピンチでは? ベテランも何人かいるとはいえ、問題があったらどうするのだろう。


 なぜか先に情報を収集しているエディットが、その理由を耳打ちする。


「店長が出勤してくる。いつもは各地の若手ショコラティエ達のために、製菓学校やら講演会なんかで指導する立場。なもんで店に来ることはほとんどないんだけど。ジェイドも会ったことないんじゃない?」


 その内容にジェイドは過去を回想するが、たしかに言われてみれば、と納得。あまりにも見たことがなかったので、本当にいるかも疑わしかった。


「まぁ……そうですね。面接もアメリさんだったし、一応、自分の履歴書なんかは目を通したらしいですけど」


「だからチャンスなのよ」


 総合的に判断したエディットは、自分なりの理論をまかり通す。これは僥倖、と。


 しかし、当のジェイドは顔が曇る。


「話が噛み合ってませんけど。どうチャンスなんですか?」


 段階を省いて説明するエディットに、理解が追いつかない。まぁ、いつものことの気もするが。


 さらにジェイドを深く引き寄せ、誰にも聞かれないようにエディットは、ジェイドの内面を代弁する。


「ここだと試食用しか作らせてもらってないでしょ? でも早く商品用のショコラを作りたい。作りたくてしょうがない」


「……まぁ、それはありますけど」


 間違ってはいない。なのでとりあえずジェイドは同意する。少し嫌な予感はする。

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