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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
83/317

83話

「もし、出せるようになったら、絶対に買いに行きますね。それではお気をつけて」


 そう、ディディエと最後の言葉を交わし、調律師とショコラティエールのコンビは、帰路につく。


 駅に向かう道。まだ少しジェイドの体は火照る。世界は広い。


「……なんか掴んだみたいじゃん」


 満足げなジェイドの表情を横目に見たサロメは、本人に確認をとる。ワクワクしている横顔。


 間違いではないジェイドも、それには同調する。


「まぁね。そこは感謝するよ。おかげであとなにをすればいいのか、わかった気がする。完成したら一番にサロメに食べてもらうよ」


 本当はまだあと少しなのだが、そこは伸び代でしかない。


 気の抜けた返事でサロメは返す。


「そりゃどーも。実験台でしょ、その感じだと」


 一番にと言えば聞こえはいいが、要はそういうこと。まぁ、タダならもらうけど。


 しかしジェイドには懸念点がひとつ。ショコラはショコラだけじゃ完成しない、それを入れる箱の存在。誰かの力を借りないとなにもできない自分と重なる。


「否定はしないけど。それとやはり彼女に頼むしか……」


 だが、なにを言っても聞いてくれやしない私の相棒。本人に言ったら怒られそうだけど。最悪、リュドミラに頼むしかないか、と切り替える。


「ま、いーわ。今日は解散。疲れたし、もー寝る。あ、勝手についてきたんだから、バイト代とか言わないでよ。じゃ、荷物はもらうわ」


 まだこれから電車もあるわけだが、サロメはもう、仕事スイッチはオフにする。家に帰るまでが仕事、とはならない。


 キャリーケースを手渡すと、ジェイドは手が空く。


「言わないよ。それ以上の、これからの私のショコラティエール人生を、変える日になるかもしれないんだから。でも今日はありがとう」


 最初からバイト代など期待していない。むしろ、勝手に仕事についてきてしまって、アトリエに申し訳なく思えてきた。今度、改めて挨拶に行こう。店長さんにもちゃんと話さなきゃ。


 ガラガラとケースを転がしながら、サロメは街に消えていく。アトリエに帰る前に、開いている店があればスイーツでも買って帰るつもりだ。


「さて、と」


 ジェイドは携帯で確認する。お目当ての場所、そして、お目当てのもの。


「ある。カルチェ・ラタンか……まぁ、行ってみるか」


 五区にある学生街。そこを目指す。まずは電車。駅に向けて歩き出す。


 もし、私の読みが正しければ。きっと、きっと。彼は。

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