表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
74/317

74話

 ピアノの側板をコンコン、と軽く叩きながらサロメはため息をつく。


「基本的な部分が違うからに決まってんでしょ。まず、現代のピアノより弦が細くて弱い。それで同じ張り方したらどうなる?」


 視線を向けられたジェイドは、イメージした通りの感想を伝える。


「まぁ……耐えられない、かな」


 鋼鉄の弦二三〇本の張力は合計二〇トンにも及ぶ。真鍮などのチェンバロ弦を使うフォルテピアノでは、当たり前だがすぐ切れる。


「そう。本来であれば、毎日でも調律したほうがいいくらい。やり方は軽くは教えてくれたんでしょ? その調律師」

 

 ディディエは思い出しつつ、コクっと頷く。


「はい、弦の張力は現代ピアノの半分以下。それであればチューニングハンマーさえあれば、自分でもできると」


「間違ってないんじゃないのかな。どこがダメなんだ?」


 今までの話を頭の中でまとめたジェイドは、なにもおかしいところが見つからない。弦が耐えられないから、頻繁に調律する必要がある。特性上、張力が低いから自分で調律できる。これで合ってるはず。だがなぜ弦が切れる? 張り方に原因が?


「とんでもなくアホな調律師ね。両腕粉砕骨折して廃業してくれないかしら」


 なかなか怖い提案をしつつ、サロメは戸惑う二人にヒント。


「何度も断線してるってところでわかるはず。はい、これを見て」


 そう言って取り出したのは、チューナー。基音となる『ラ』の音の周波数を計測する機械。手のひらサイズだが、しっかりと働いてくれる相棒だ。


「ピッチ?」


 音の高さを測ってどうするんだろう、とジェイドは疑問をうかべた。


 『ラ』の音を叩き、そこに書かれた数字を、呆れ顔のサロメが読む。


「いい? 四四〇ヘルツ。わかる? 四四〇ヘルツだってこと」


 はぁ、と頭を抱えてこの国の調律師の腕を嘆く。


 だが、ジェイドはなにがなんだかわからない。自分の常識を疑ってしまう。


「普通じゃない? ピッチは四四〇か四四二が世界基準でしょ。問題はないんじゃ?」


 一般的にはアップライトピアノは四四〇、グランドピアノは四四二、など言われたりするが、これらは好みの部分はある。この二つは世界基準であり、どちらでもよかったりするのだ。ただ、季節や場所によって一から三くらい上下したりはするが、それでも四四〇はまさに基準通りの正しい数字だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ