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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
69/318

69話

「なら来る? 調律の現場」


 ささっと行ってささっと終えて帰る、という予定だったが、サロメはジェイドを誘ってみる。気まぐれは彼女の真骨頂だ。特に深い意味はない。なんとなく。


 驚きながらも、ジェイドは内側からジワッと、滲み出すものを感じた。おそらく喜び。なにかが変わる気がする。


「いいのかい? 私はなにもできないよ」


「なにも期待してないわよ。でも、そういう滅茶苦茶なの、嫌いじゃない」


 はたして、調律がどんな風にショコラに影響を与えるのか。サロメも若干気になるっちゃなる。それに荷物持ちがいるほうが楽。


 ふふ、っとジェイドは笑みをうかべた。


「どうも。そっちにはメリットないよ。それでもいい?」


 ただ、調律の現場を見るだけ。道具の名前もわからない。手順も。音も。だが、この子についていく許可。


「ショコラがあればいいわよ。別にメリットとか気にしないし」


 そういえばエスプレッソ、と思い出したところで、ドアが開き奥の台所から、ロジェがトレーに乗せてエスプレッソを持ってくる。


「よかった。じゃあ今日はこれ。よろしくね」


 と、二人の前にそれぞれエスプレッソを置きながら、サロメにだけ今日の調律の資料を渡す。


「ありがとうございます。いただきます」


 カップの上部に泡、いわゆるクレマがかなりできている。いいエスプレッソマシンを使っているな、とジェイドは察した。九気圧以上かつ、豆もいいものを使っているのかもしれない。いい店長さん? だな、という考察。


「ありがと……げっ」


 感謝しつつ、エスプレッソに口をつけたサロメが、なにかバツが悪そうな顔をする。


「? どうしたんだい? 合わなかった?」


 その声にジェイドはすぐ反応した。自分のほうはよくできていて、お店で出してもいいんじゃないかと思うほどに、ダークショコラのコクと苦味を感じられる。ダブルのポルタフィルターなら、味は変わらないはず。


 コロコロと表情を変えるサロメだが、どれも艱難辛苦のそれぞれを体現したようなもの。呼吸を整え、邪気をなんとか払拭しようとする。


「……あんたってさ、運いいほう?」


 そんなことを、この世の終わりのような顔で言い放つ。


 それを見て少しジェイドは緊張したが、普通じゃないなにかに出会えた、という気配を感じた。当たりかもしれない。


「……そうだね、なんとか乗り切ってるところはあるかなと。いいほうなんじゃないかな。で、どういうこと?」


「店長、これマジで? 聞いてないんだけど」


 これ、というのは調律の中身。再度読みながら、サロメはロジェに確認する。

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