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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
66/317

66話

 不敵な笑みを崩さない女性は、応対用のガラスのローテーブルにショコラを置き、対面のソファーに座る。


「これは私の話を聞いてもらうのが条件。聞かないのなら、私が今、この場で食べる」


 どうする? と、睡眠を貪る少女に言葉を投げかけた。


 若干惜しいが、妙なことに巻き込まれるよりは、と冷静にサロメは諦めることにする。七区はそんなに遠くない。


「……別にあとで買いに行くからいいわ。はい、解散。店長、エスプレッソ淹れてー」


「ちなみに」


 まるで一度断られることは計算済みだったとでも言うように、用意していた次の手を、さらっと女性は披露する。


 不機嫌を詰め込んだような声で、サロメは「あん?」と荒ぶった。


「食べるだけで美味しいんだけど、エスプレッソ用にも改良したダークショコラでもある。三つデミタスカップに入れ、エスプレッソを抽出。すると——」


「……すると?」


 女性の新しいショコラの使い方に、寝ようとしていたサロメもゆっくり身を起こし、窺う。


 だが、もったいつけるように、女性はそこで話を打ち切った。


「ここから先は、話を聞いてもらってから。そしたら『すると——』のあとがわかるよ」


 包装を外し、箱を開ける。ミルクとダークが一〇個ずつ。女性は「どうする?」と口角を上げた。


 身を正し、ソファーの座り直したサロメは、だるさで頭を抱えながらも、会話を続ける。


「……で、話って? あー待って、あんた誰?」


 顔を上げて薄目で相手の全体像を確認する。見たことはない。が、年齢は同じくらいか。まさか、差し入れに来たファンというわけではなさそうだ。


 やっと対等な関係になれたことを、女性は喜ぶ。一応お土産も用意しておいてよかった、と胸を撫で下ろす。


「ジェイド・カスターニュ。キミと同じモンフェルナ学園の生徒だ」


 はじめまして、の握手を求める。


 しかし、警戒を怠らないサロメは、その手を凝視。したがとりあえずは握手。


「ふーん……ベルギー人か。てことはルカルトワイネ? いいなー、本場じゃん」


 欠伸をひとつし、ソファーに深くかけ直す。柔らかめのクッション。もう一度眠くなる。


「え? ベルギー?」


 ロジェが二人の顔を交互に見やる。ひとりは眠そうな半目、ひとりは笑顔を崩さない。崩れていないだけで、なにか思うところはあるのかもしれない。


 悩めるロジェに、サロメが答えを提示する。


「ワロン語。オランダ語のほうが得意そうね」


 ボーッと天井を見ながら、今日の夕飯はなににしようか考える。ピザでも買って帰るか。

ブックマーク、星などいつもありがとうございます!またぜひ読みに来ていただけると幸いです!

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