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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
63/318

63話

 しかしオードは矛盾を突いていく。


「他の誰か、ってアンタは友達いないじゃん」


 一瞬、間を置き、ふぅ、と息を吐いたジェイドがオードの肩を叩く。


「キミがいるじゃないか」


「じゃあ送りなさいよ」


 温度の感じられない、尖ったひと言をオードは突き刺す。


 対するジェイドは、今度は数秒間を置き、少し考えると、


「……でね」


 と、場を改めて整理しだした。少し呼吸を深く。ゆっくり。


「本当はオードに返……送りたいんだけど、それを必死で我慢して、他の人に送るのさ。その相手を今探してる」


 自分でもおかしい気がしてきたが、ここまできたら「ええい、ままよ!」という気持ちで押し通す。そうしたら、勢いで抜けられるかもしれない。


 是が非でも娘を、友達に外に連れていってもらいたいリュドミラは、よくわからないがとりあえずジェイドに同調する。

 

「いい話ね。それがいいわ」


 ね? と、オードにも同意を求める。はて? なんの話だっけ? と、話の中身はよくわかっていない。


「いや、よくないって。自分の娘に利益を求めなさいよ」


 鋭く話を修正するオードだが、ジェイドに引っかかる部分がひとつ。

 

「それに、他の人達がショコラで勝負しようってのに、あんたはカルトナージュまで使って箱を装飾したら、卑怯とか反則とか思わないわけ?」


 繊細なショコラの世界。詳しいことはオードにはわからないが、日々ショコラティエ達は、研鑽を積んで、より美味しいものを、より新しい味を、食感を求めているはず。世界一を目指しているというのは前に聞いたことがあるが、なんかズレている気がする。


 ふふふ、とまたもジェイドは鼻で笑う。


「面白いことを言うね。戦いなんて勝てればいい。卑怯、反則という言葉は、準備不足の言い訳だ。例えばもしワールドチョコレートマスターズ三日目、その場に立って祝福を受けることができるなら、私は——」


 と言いかけたところで、ジェイドは言葉を詰まらせる。


 私は


 その時


 どうしようというのだろう?


「……ジェイド?」


 突然止まったジェイドを、心配そうな目でリュドミラが見つめる。なにごと? と、オードに意見を無言で求める。


 しん、と場が静まり返ったことで、話の停滞を感じたオードは、


「……まぁ、あんたがいいならいいんじゃない? 巻き込まないで。じゃ」


 と、ひとり自室に入っていく。なにがなにやら。


 言葉を失い、呆然としたまま立ち尽くすジェイド。私がなぜ世界一のショコラティエールになりたいのか、なぜルレ・デセールに入りたいのか。


 それだけはきっと、私が墓までひっそりと持っていくことなのだ。

ブックマーク、星などいつもありがとうございます!またぜひ読みに来ていただけると幸いです!

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