表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
57/317

57話

「ふふ」


 笑いを堪えるジェイドの視線に気付き、オードは目配せをする。


「あん? なに? あたしのなんでしょ?」


 全てを見透かしたようなジェイドが、いちいち癪に障る。なにをどれだけ食べようが、あたしの自由でしょ?


 悪い悪い、と微笑の理由をジェイドが解説する。


「オードは濃いコーヒーが好きだね。エスプレッソとか」


 使った豆はインドネシアのトラジャコーヒー。強い苦味とスモーキーな香りが特徴の高級豆だ。それをふんだんに使ったコーヒーガナッシュ。それをオードはすぐ二粒目にいった。


「まぁそうだけど、なに? なにか文句あんの?」


 それが見透かされたからなんだというのだ。なのでもうひとつ。悔しいが美味い。


「違う違う。こういった実験結果もあってね。明るいところでは、濃いコーヒーを好む者はその量が増えるんだ。逆に薄いコーヒーを好む者は、薄暗い場所で量が増える。不思議だね」


 味覚には『明るさ』という要素もあるという結果。視覚に含まれるか微妙なところだが、ジェイドは使える要素は全て使いたい。味というものを、文字通り様々な視点から研究していく。美味しい、と感じることができるならば、手段は問わない。


 しかし、その頭でっかちな思想に、オードは引け目を感じる。


「……もっと気楽に美味しい、でよくない? 究極とか、そういうのなしで」


 最終的には、フォークの材質とか、座るイスの高さとかまで、コイツといるとこだわりそう。いや、一緒にいるつもりはないけど。


「で、どういった用件で呼び出したわけ? あたしも忙しいんだけど」


 ゴロゴロと、頬でショコラを転がしながら、舌足らずにオードは問い詰める。まぁだいたい予想はできる。そしてそれに対する返答も。


「それはもちろん、またカルトナージュをおね——」


「断る」


 ジェイドが言い終わる前に、被せ気味にオードは拒否する。やはりね、と想像通り。


「今日は天気がいいね。天気予報が大当たりだ、少し暑いくらい。カルトナ——」


「断る」


 諦めずもう一度、少し余計な前置きを入れてから、ジェイドが不意打ち気味になにか言ってきたが、とりあえずオードは断る。最後まで言わせない。


 はぁ、とため息をついて、ジェイドはベンチの背もたれに深く寄りかかる。頑なだ。


「心外だねぇ。オードの実力を高く評価してるからこそなのに」


 カルトナージュというものの知識などは皆無だが、素人目に見てもオードの作品は心が震える。丁寧さ、質感、色合い。見るべきポイントがそこなのかはわからないけど。


 そのオードの不機嫌の正体。それを説明する。


「WXYから依頼がいくって言ってたのに、なにもこないんだけど?」


 ジェイドに言われた通りにこなせば、自分に依頼がくるという約束。それも老舗ショコラトリーから。が、今のところ音沙汰なし。どうなってる?


 うーん、と晴れ渡る空を見上げながら、ジェイドは考えをまとめる。

 

「それはそれ。これはこ——」


「他あたって。あたしはもっと名前を広めたいの。そっちのオーナーからの依頼以外、受けないことにした」


 自分にメリットがないなら断る、とオードはシャットアウトする。視界にも入れない。徹底して拒否。でも。


「これはもらう」


 自分用に作ってきたショコラはもらっておく。食べ物は粗末にしてはいけない。少し味の違うのもあるようで、若干甘いやつに当たった。これも美味い。


「やれやれ。お姫様は強情だ」


 とりつく島がないことを確認したジェイドだが、心の中で「さて次は……」と、作戦を次に移行させていく。

ブックマーク、星などいつもありがとうございます!またぜひ読みに来ていただけると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ